ザ・ロック
アリステラを物扱いされてかなり腹が立っていた俺だったのだが、出迎えてくれたメイド達の笑顔に心を癒されて機嫌をなおした。バトラーにソフィアとマチルダ、アンヌをリビングに呼ぶように頼み、メイドが淹れてくれた紅茶に舌鼓を打ちながらリビングで待っていた。
「お待たせしました、ユウヤ様」
最初に入ってきたのは屋敷に居たマチルダとアンヌだった。そして暫くして慌てて駆けて来たのか息を切らしながらソフィアもやって来た。
「よし、揃ったな。君達、今からジブラルタル観光に行くぞ」
その俺の言葉にアンヌは両手をあげながら跳んで喜び。マチルダとソフィアも胸の前で手を組んで嬉しそうに笑っていた。そんな彼女達にますます癒されて三人を連れてジブラルタルの宿屋へ転移した。
しかし、宿屋へ入って俺以外の三人は絶句した。
勿論、俺も少しは驚いた。
なんとまだ三人が裸でスヤスヤと寝室のベッドで眠っていたからだ。その状況は誤解を生む。いや、誤解ではないがとてもまずい。俺はコッソリとリビングのソファの陰に隠れた。
「な、これは何なのですか、ユウヤ様!」
「そうです。お母様達がなんで裸で寝てるのですか」
二人が叫ぶように俺を探す中、勇者アンヌはベッドに飛び込むように突撃した。
「ユキノ様、アンヌも一緒に寝るっ!」
雪乃の体にアンヌがポンと飛び乗って、横に寝ている二人の上をゴロゴロと転がって遊びはじめた。
それに目を覚ました三人は、ハッとした表情で取り繕いはじめる。雪乃は我先にシーツを巻いて風呂場に一人走る。肌を隠すシーツが無くなり、慌てて転がるようにベッドから落ちた二人も雪乃の後を追って走る。
「ユウヤ様、こちらで一体何をしておられたのですか」
ソフィアのその恐ろしい声に更に身を丸めてソファの陰に隠れる。
「まさか、依頼された仕事をなあなあに情事に耽っていた訳ではありませんよね」
マチルダの声が怒りで震えている。さらに恐ろしくなり身を伏せてソファの下に震えながら隠れる。
すううっと現れた二つの真っ黒な顔がこちらを見ている。その目と口は白く抜かれていて、ゆっくりとその二つの顔の口角があがる。
「「みいつけた」」
ひゃあー! と、俺は叫び声をあげて体をお越すとソファにおもいっきり頭をぶつけてそのまま気を失った。
◇
ザ・ロック。
威厳のあるその岩山は見るものを虜にさせる。そんなジブラルタルの名所でアンヌと手を繋ぎながら、マチルダやソフィアと観光していた。
流石の雪乃も気まずかったのか、アリステラを連れてゲートを設置しないとね。と言って商会支店の立ち上げに向かった。また、グレースも同じような理由で演習の確認にいった。
どちらも三人にやる事はないのに。と、あきれながらも、ほんの少しだけ裏切られた気持ちになった。
少し高い場所から眺める景色は、そんな俺の感情を和らげてくれる。
石造りの家屋や施設が整然と並び、その向こうには青い海が広がる。その街並みの美しさに心を奪われる。
「綺麗だね、お兄ちゃん!」
「ああ、そうだな」
俺を見上げて楽しそうに微笑むアンヌの頭を撫でた。
そんな俺達とは違い。マチルダやソフィアは未だに少し拗ねていた。
「二人とも機嫌を直してくれ。お詫びに一人づつディナーに連れてくからさ」
「本当ですか」
二人は声を合わせて確かめてくる。
「本当だから。今夜から順番でデートしよう」
二人はその順番を掛けて、じゃんけんで勝負を始めた。何度か引き分けが続き、最終的にはマチルダが勝利した。
「では、私からお願いします」
「私は明日ですが、とても楽しみです」
機嫌が良くなった二人を連れて、のんびりと四人で観光名所を巡った。
その日の夜。薄い青のドレスを身に纏ったマチルダをこの街一番のレストランに連れていく。
ちゃんと席までエスコートして彼女を席に着かせた。
「うん。とても美味しい」
テーブルに並べられた海鮮料理の中から海老の炒め物を選んで最初に口に運んだ。
「ほら、マチルダも食べてみろ」
あまり行儀は良くないが個室ということもあって、フォークで海老を刺して彼女の口元に運ぶ。やや照れながらも彼女は小さく口を開けた。その小さな口に海老を運ぶと、彼女はそれを上品に口にした。
「本当に美味しいですわ」
「気に入ってもらえたようで何よりだ」
二人で食事と会話を愉しんでいると、マチルダが不意に訪ねてきた。
「私は女性として魅力はありませんか」
「そんな事はない。ロマーニャの執務室での俺の密かな愉しみを知っているか」
俺は白ワインを一旦口に含んだ。
「マチルダの綺麗な横顔を眺めることだ。俺は君の横顔にいつも見惚れていたんだよ」
突然の暴露にマチルダの顔がどんどん赤くなっていく。次第には恥ずかしくなったのか、少しだけうつむいた。
「だからそんな。自信をなくしたような事は言わないでくれ。いつだって君は魅力的な女性なのだから。愛しているよ、マチルダ」
ハンカチで目を覆いながら声も出さずに、背をやや丸めて泣いている彼女に近づくと、そっと彼女の背を撫でた。
「嬉しいです。ユウヤ様、ありがとうございます」
少し顔をあげて、そう口にした彼女の唇にそっと口づけをして、時を少し置いて唇を離した。
「さあ、食事を再開しよう。それに今夜は別の宿を取ってるから二人っきりで過ごそう」
少し腫らした目で嬉しそうに笑う彼女。そんな彼女に目が離せなくなる。料理や酒を口にしながらも、俺は彼女から目を離すことはなかった。
広いベッドの上でマチルダを腕に抱きながら天井を見つめていた。俺の上で美しく乱れる彼女を思い浮かべながら。
でも、しっかり彼女の柔らかな胸を手に収めながら、さりげなく優しく揉んでいた。
段々と堪えきれなくなって、五度目の情事を開始した。
「こんなに求められて嬉しいですけど、本当にお元気なのですね」
揶揄うように小さく笑う彼女を黙らせるように、その小さな唇を塞いだ。
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