西へ
グレースが子供のようなわがままを言い出した。
王を辞める、とか。ずっとこっちで住むとか。そんな32歳の女性がそんなわがままを言って涙ぐむ姿に見かねた雪乃が、宮殿と屋敷を繋げるゲートを設置すると途端に彼女は機嫌を直した。そんなグレースにあきれながらも、次はトニーさんの商会とスコットさんの商会をゲートで繋げる。
これで楽に仕事が出来ると喜んでいると、何かに忘れていることに気付く。
「やばっ、シャルルの依頼忘れてたよ。ジブラルタルって船で行くんだよな」
「うん。その方が速いって」
そんな事を雪乃と話し合いながら宝物庫の宝を収納魔法に次々としまっていた。お宝も一緒に引越しするからだ。当然既にスコットさんに宝物庫の建設をお願いしてある。使用人用の離れの側に建設する予定だ。
「どうする。グレースと一緒に行くか」
「また軍艦でしょ。たまには豪華な客船がいいな」
「酔わないかな? のんびり行くのは不安が」
「そうだよね。贅沢はあっちでも出来るし、今回はグレースと行こうか」
俺たちがジブラルタルへ行くと聞いていたグレースはローマとの海上共同演習へ自ら行くと言い出した。勿論、周りの者はバカンスから戻ってすぐということもあって反対したのだが、彼女の迫力に負けて押し切られた。
「なんか新型艦がパワーアップしたらしい。どうやらマストなしでの完全航行が可能になったとか。これからは少しサイズダウンしたマスト無しの新型艦に移行していくみたいだな」
「まあ、アドリア海を護るだけならそれで十分だもんね」
「そうそう。うちの王様に野心がなくて助かるよな」
「それでその王様は後継をどうするつまりなんだろうね。本人は早めにソフィアに譲りたいらしいけど」
「ソフィアまだ17歳だぞ。流石に早くないか」
まあ、グレースも若くから王様だからな。その重圧から解放されたいのは分かる。先代の王様。その王妹の息子にも打診はしてるらしいが良い返事はもらってないそうだ。ちなみに俺には王位継承権はない。本当の意味でグレースのペット扱いだ。
「今回は誰を連れてくの」
「え、二人でよくないか」
「アリスは張り切ってたよ」
「張り切るも何も。誰かさんがライフルぶっ放して終わりなのにな」
「なに。私のアイデンティティに文句を言うの」
「いいや。無駄だって分かってるから」
そんな感じで話を続けながらお宝をしまい終わると屋敷へ転移した。
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