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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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要求と承認

今夜はあと一話投稿します。

 俺はノワールの姿となって雪乃とグレイシアが待つリビングに入った。


「遅れてすまない」


 ノワールらしく振舞いそう挨拶すると、何故かアリステラ達もいることに気付く。また壁際にはキョウヤとユキナの姿もあった。

 取り敢えずやや動揺した心を悟られまいと鷹揚にソファに座り足を組んだ。


「それでグレイシア、お前の望みはなんだ」

「なんでも願いを聞くと言ったな。間違いはないか」

「今更何を言う。俺が一度約束したことを反故にする男だと思ったか」


 くそっ、反故にしてぇよ。撤回させてくれよ!


「そうか。それを聞いて安心した」

「それは良かった。ところであの壁際にいる二人はなんだ」


 クールに視線をキョウヤ達に向ける。


「あの二人は立会人だ。念の為に私から二人に頼んだ」

「俺も存外信用がないな。まあいい。さっさと要求を言え」


 アリステラやマチルダとソフィアがグレイシアの後ろで立っている。それはいい。それはいいのだが、なんで雪乃がグレイシアの隣に座っている。雪乃は俺の味方じゃないのか!


「そうだな。私もまわりくどいことは好まん。私達四人。私とソフィア、アリステラとマチルダをノワール、ユウヤの愛人にしろ。私からの要求はそれだけだ」


 あん、四人だと。まさかこいつら最初から、誰か一人が勝てばいいと手を組んでいたのか。

 なんて姑息。なんて汚い。神聖な勝負を最初から汚しおって。


「なぜそんな悔しそうな顔で歯噛みする。何一つルールからは外れていないぞ」

「確かにルールからはな。だがいい。気付けなかった俺のミスだしな。しかし、愛人にしろとはなんだ。俺はお前達の気持ちを受け入れる事はできても、その気持ちには応えらないと以前話したはずだ」


 何回話せば分かるんだよ。頭ニワトリか。


「正式に恋人。愛人として認めろって言ってるだけだ。だからといってすぐに抱いてほしいなんて言わない。私達の気持ちを受け止めた上で、ちゃんと向き合って欲しいだけだ。たまに二人でデートしてくれたり、たまに甘えさせて欲しい」

「大体正式に、とはなんだ。周りにそう一々説明してまわるつもりか。馬鹿なのかお前は。自分の立場を考えてから言え」

「別に女王が愛人になっても構わんだろ。それこそユウヤの前の世界にも存在していた筈だ」


 くっ、雪乃。雪乃だな。そんな入れ知恵したのは。なんでだよ。


「知らん。そんなの俺は知らん。それにだ。傷つくのはお前達の方なんだぞ。俺は雪乃を一番愛してる。それは永遠に変わらない。グレイシア達は永遠に俺の一番にはなれないんだぞ。そんなの切なすぎるだろうが。俺は大切なお前達にそんな想いはさせたくないんだよ! なんで、わかってくれないんだよ。悲しむのはお前達なのに」


 叫んだ声は段々と小さくなり。組んだ手を強く握って、うつむいた。


「私達は最初からユキノが傍にいるユウヤを好きになった。ユキノより愛してほしいなんて願わない。最初から願ってないんだよ。ただ、ずっとユウヤとユキノの傍で、一緒に笑ったり、時には泣いたりしながら幸せに過ごしたいだけ。だから、ずっと傍にいられる理由が欲しいだけなんだ」


「なんだよ、理由って。そんなのが無くたって、好きなだけいればいいじゃないか。そんなのは俺の許可なんて必要ないだろ! デートしたいなら言えよ。話を聞いて欲しいなら言えよ! 愛人関係になんかならなくても、それくらいはするから。それに。キスをしたり、抱きしめたくなったり、深く体を重ねたいって思うのは、そんなのは流れだろ。互いに重ねてきた想いの結晶だろ。それを。はい、抱いてください。はい、抱きます。なんて真似を。俺はお前達には出来ねぇよ。そんな不誠実な事はしたくないんだよ」


 うつむいて独白するように話す俺の隣に雪乃が来て、俺の丸くなった背を優しく撫でてくれた。


「うん。そうだよね。悠哉くんにはそんな真似はできないよね。君はとても優しいから」


「恋人だとか、愛人だとか。誰かに言いたいなら好きに言えばいい。俺が誰かに訊かれても否定はしないから。勝負は俺の負けだったんだから好きにすればいい。それで君達が幸せになるならそれでいい。それでいいんだ。そうだろ、雪乃」


 うつむいたまま、囁くようにしか言えなかった。

 そんな俺を、雪乃は何も言わずに、ただ優しく背を撫で続けてくれた。



「愛と美と性を司る、このアフロディーテがそれを承認する。これは神との契約でもある。違えることは何人たりとも許さないとしれ」


 横目でユキナを見ると、あのキラキラエフェクトが発生していた。普段は駄女神でも、ちゃんとした女神様なんだなと思った。


「どう、こんな感じでいい。ねえねえ、フレイヤちゃんみたいに素敵にできたかなぁ」


 打って変わって、後ろからソファ越しに雪乃に抱きつくユキナに、俺はさっき思ったことを撤回する。


 こんな駄女神の承認で大丈夫なのか。

 そんな事を考えていると、キョウヤもこっそり項垂れながら額に手を当てている姿が目に入った。


「いたっ、あれ何で痛くするの。いたたたたたたっ、やめてフレイヤちゃん、痛いよっ!」

「私の神名を口にするな。黙ってなさいって言ったわよね。約束したわよねっ」

「いたっ、たたたたたたたたたたっ! ごめん、んなさいっーーーーーーたぁいよっ!」


 そうだった。雪乃のことは、女神だとは話していたが名は教えていない。

 それもそのはず。この魔法の世界ではセイズを司る女神フレイヤは最も偉大な神様なのだ。

 その衝撃の事実を知ったグレイシア達は青褪めた表情で驚いている。というか、固まっている。


「それに。良い話でいい流れだったのに、ほんとにいつもいつも台無しにして! 少しは成長しなさいよっ!」

「あっ、ああああああああああぁ、いたいよっ! いたいんだよ、ほんとにっ! あっ、ゆるしてぇーーーーったいよ!」


 俺とキョウヤの目が合い、互いにうなづき合うと二人でこの場から立ち去った。


「今夜は付き合えよ」

「奇遇だな」


 こうして俺たちは静かに外に飲みに出た。


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