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後始末

明日も五話投稿します

「なあ、スカート中からライフルって反則じゃないか」


 特に警戒することもなく、王様の部屋を目指して王城の中を雪乃と二人で並んで歩いていた。


「え、そう? 一度やってみたかったのよね。峰◯二子みたいに素敵にかっこよく」


 楽しそうな横顔を見て、否定することはやめた。


「満足した?」

「ええ、とっても」


 楽しそうに笑って、俺の腕に抱きついた。

 そんな雪乃の行動に、ある確信を得た。


 こいつって、かなりの甘えん坊じゃね。


 もちろんそんな事は口にしない。

 楽しそうにしている雪に、そのまま笑っていて欲しいからだ。


「もう、さっきから邪魔ばかりして」


 俺たちの足下、その影から暗部の者たちが出てくるが、片っ端から踏みつけて撃退していた。

 何も出来ずに簡単に返り討ちにあう暗部の者に少しだけ同情する。


「まあ、無粋だよな」

「ほんと、少しは空気を読んで欲しいよね」


 そう言ってる側から、上から襲い掛かる者たちに向けて、スカート中から取り出した暗器を投げて一撃で仕留めていた。


「俺、絶対に雪乃とは喧嘩しない」

「なんで? 喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない」

「いや、正確には殴り合いに発展するような喧嘩な。もちろん、女性に手を出すような男の風上にも置けない真似はしないけどさ」

「悠哉が浮気しない限り、そんなことは起こらないと思うけど」


 ずっと疑問に思っていることを聞くべきか悩む。

 でも、このままでは問題があるよな。


「なあ、俺達、つきあってんだよな」

「そうじゃないの?」

「いや、そうなんだろうけど、なんか端折りすぎて確認しておこうかなって」


 腕を組んだままの、上目遣いの視線が痛い。


「私はキスをした時から、あなたのことが好きよ。運命を感じたわ」


 この暗がりの中でも彼女の頬がほんのり赤く染まっていることがわかる。


「人間の俺が、本当に、君を好きになっていいのか」

「私はあなたが何者だろうと構わない。あなたが好きなの、愛しているの」

「そっか。胸の支えが取れたよ。俺も君のことが好きだし、愛しているよ」


 彼女にキスをしようと顔を斜め下に向けた時、これ以上ないタイミングで邪魔が入った。


「殺す。一人残らず殺す」


 ちょうど王様の部屋の前で大勢の兵士に取り囲まれた。


「命乞いなど許さない。私は私の恋路を邪魔する者には容赦はしない!」


 雪乃の周りに無数の光の剣や槍が浮かび、彼女の叫びとともに、それらは兵士達に向けて放たれる。

 刹那に一人残さず、体を貫かれ絶命していた。


「なあ、活躍し過ぎ。俺にもかっこつけさせてくれよ」


 まだ怒りに震えている彼女を、不意打ちするかのように抱き寄せて唇を奪う。

 一瞬、彼女の体がこうばるも、俺の気持ちを受け入れて段々力が抜けていくのがわかる。

 少し長めのキスを交わした後、王様の部屋のドアを蹴り飛ばした。


「カツアゲでーす。というか、忠告でーす」


 ベッドの影に隠れ、隠しきれずに少しだけ頭をだして震える男に向けて声を掛ける。


「アリステラに手を出すな。忠告を無視して彼女に手を出したら次は容赦なくお前を殺す」


 王様の胸ぐらを掴み、持ち上げた。


「わかった! 約束する! だから殺さないでくれ!」


 泣いて鼻水を垂らし、しょんべんを漏らす、みっともない男をベッドに放り投げた。


「約束を違えるような真似はするなよ。それと、アリステラに襲撃者を差し向けた侯爵を三日以内に殺して首を晒せ。なぁに、奴の屋敷の門にでも首を晒すだけでいい。出来るよな、王様」


 脅しがてら掌に炎を浮かべると、王様は泣きながら何度も何度も頷いた。


「よし、用事は済んだ。帰るぞ、ブラン」


 俺は彼女を抱き抱えると、そのまま勢いよく窓をぶち破り外へ飛び出した。


「ファーストミッション完了!」


 その声と共に宿屋へ転移した。




 次の日。王都は蜂の巣を突くような騒ぎになっていた。

 ボルドー家の襲撃騒ぎと、暗殺されたベルガー侯爵の話題で。


「迅速過ぎてひくわー」

「あなたが脅しすぎたのよ」

「いやいや、君が殺しすぎたからだろ」

「殺したのは部屋の前だけですぅ。あとは致命傷を与えただけだからね、人聞き悪いこと言わないで」


 俺の膝の上で横向きに座る彼女が俺の頬を軽く抓って微笑む。


「なあ、そんなことより、そろそろ降りてくれないか」

「嫌よ。あなたの膝の上が私の居場所なの」


 はっきり、きっぱり拒否されたけど、問題ありなんだよな。

 あまり体重は感じないけど、とてもいい匂いがするし、何より抱き心地がいい。俺の半身が元気すぎて困る。


「なんかずっと固いものが当たってるけど。だから我慢しないで、」

「ちょ、ちょ、ちょ、ストッープ! それ以上は駄目、絶対に駄目だから」

「なんでよ。意味がわからないわ」


 言えるわけないだろう。

 もし、一線を越えたら時を忘れ、食事も忘れ、寝るのも忘れ、何もかも放り出して、ずっとしてそうだなんて言えるかよ!


「とにかく、ちゃんとした家を持って、結婚式を挙げるまでは駄目だから」

「ふーん。そんなの明日にでも出来るけど」

「いやいや、そやなの駄目だから。雪乃の純潔をもらうんだから、俺がちゃんとしたいの!」

「ふーん。あやしい、なんか隠してない?」

「隠してない、隠してないからな。俺だってしたいよ。けどさぁ、絶対猿みたいに四六時中するのが目に見えてるんだよ、だから我慢するんだよ!」


 ふっ、と鼻で笑われた。

 まずい、追い込まれすぎて本音が……


「そっかぁ。なら仕方がないね。ねえ、でもさぁ。悠哉くんはいつまで我慢できるかなぁ。頑張れるのかなぁ」


 俺の首に両腕を回して、体をさらに密着させ、甘い声で揶揄うように耳元で囁く。


「ああぁ、悪魔だっ! 堕落への道へ誘う悪魔だっ!」


 俺は彼女を膝の上から降ろし、一直線に風呂場に行って水に打たれ、邪念を払った。

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