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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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グレイシア杯

今夜もあと二話投稿します。

 オスマン艦隊に完勝して帰還したグレイシアは、完勝記念がてら水上バイクのレースを開催することに決めた。しかも賞金金貨百枚の大盤振る舞いだ。

 現在、新型艦には俺たちの使用している水上バイクの他に六台が新型艦の搭載機として積まれている。然るに、俺たち八名と海軍の代表者六名で競い合うことなる。

 ヴィス島を一周するという熱きレースに皆が心を躍らせていた。だがここで思わぬ効果を島に齎す。

 なんと、それを聞きつけた島民達がお祭りとして準備し始めたのだ。その祭りの規模は日に日に大きく盛大になっていった。



「お兄ちゃん、私も出たいよ」


 上目遣いでおねだりするアンヌのお願いを聞くべきか悩む。

 確かにアンヌの水上バイクは小型とはいえ、速度も大して変わらない。寧ろ、小回りが効く分優秀なのかもしれない。ただ、小さくて軽い分波に弱い。万が一、転覆したらと心配になる。


「何台かの救助艇も控えてるし大丈夫だよ」

「そうか。本当に大丈夫なのか。救助艇が間に合わなくてアンヌが溺れてしまわないか」

「もう。心配し過ぎだよ。別に沖を周ってレースをする訳じゃないんだよ。それに腰から肩に巻いているコルクで沈むことなんてないから」


 確かにあれは優れものだ。海軍御用達品だしな。


「よし。アンヌの参戦を認めよう」


 その言葉にアンヌは飛び跳ねながら喜んだ。

 それから開催日までの間。出場選手達はコースを下見しながら細かい調整を施す。アンヌに関しては俺と雪乃が全力でサポートした。


 開催日前日の夜。

 島を挙げての盛大な前夜祭が行われた。

 この日ばかりは、もう一つの集落から人が消えたのではと思うくらい大勢の人達が前夜祭を盛り上げ楽しんでいた。


「なに緊張してるの」

「だってよう。こんな大勢の前で」


 そう。前夜祭の目玉の一つとして、出場者全員がステージに立って紹介される事になっていた。

 それに併せて、試走段階でのラップタイムと最初のオッズが発表される。それをもとに誰が一位か。誰と誰が一位と二位かを賭ける判断にするのだ。


 だが、この胴元は俺ではなくグレースだ。

 つまり、大儲けするのは彼女なのだ!

 自分の名声も高め、大儲けもする。本当に抜け目のない女王様だ。なので、賞金額をあげろと交渉した。結果彼女は渋々賞金を二倍にしてくれた。


「ほら、次は悠哉くんが呼ばれるよ。シャキッとして」


 雪乃にお尻を軽く叩かれて、一歩前に出て手を振った。なんかとても恥ずかしい。ノワールになってくれば良かったと後悔した。




 ◇


 レース当日。

 それぞれがレーシングスーツなどないので水着姿で水上バイクに乗り込む。

 そしてデカデカと張り出されているオッズ表は刻一刻と変動し、最終的にこのようなオッズとなった。

 一番人気は白き閃光ブランシェ。

 二番人気は紅蓮の翼グレイシア。

 そして、意外な事に三番人気は水上の魔法少女アンヌだ。


 ちなみに俺は五番人気だった。しかも何故か三番人気までしか二つ名はつけられなかった。なんとなく悪意的なものを感じるのは俺だけだろうか。


 スタートラインに並び、フラッグが振られるのを静かに待つ。


「ノワール、勝負よ」

「ああ、絶対に誰にも負けない」


 そう。絶対に誰にも負けてはいけない勝負なのだ。

 アリステラ、マチルダ、ソフィア、グレースの誰にも負けてはならない。なぜなら、勝者の願いを一つ叶えないとならないからだ。

 彼女達が要求することなど分かっている。だから俺は自身の貞操のために勝利しなければならない!


 そんな事を考えていたら出遅れた。

 だが、レースは始まったばかりだ。いくらでも取り戻せる!

 スピードペダルを強く踏込み、スピードを加速させた。


 魔石の交換は四、五回位を想定していた。今日の波は穏やかだし案外四回で完走できるかもしれない。ちなみに魔石の交換は六回までとしている。

 今、俺の目の間にはキョウヤが先頭を走り、次にアリステラ、海軍の誰かさんが続いていた。

 雪乃は器用に他の水上バイクの波を避けるように内を五番手で走っていた。そして内に並ぶようにアンヌも好位置につけている。まだ序盤、わりと団子状態で進んでいた。


 先頭集団と中段、後方とはっきり別れてきたのは半周を過ぎた頃だった。

 やはり経験の差で海軍の人達は中段から後方辺りにいた。もっとも波がやや高くなってきたことも原因の一つだと思う。


 ここまで見事な魔石交換で先頭を維持するキョウヤ。それを外の斜め後方から追うアリステラ。

 少し離れてキョウヤの波の影響を避けるように後方を走るグレイシア。それに並ぶように内にやや後ろを走る雪乃とアンヌ。その五人が先頭集団を形成していた。


「みんな元気だな。あんなに飛ばして体力が持つのかね」


 俺は中断のやや後方を内に最短で周るよう走らせていた。それに俺は知っていた。キョウヤが魔石を使い切る前に交換していたことを。そんな事で波が高くなってきた今、最後まで走り切れる訳がないのだ!


 レースは終盤。残り千メートルといったところだろうか。やはり、俺の見立て通りキョウヤのペースは落ちて、既に中段まで位置を下げていた。


 先頭を走るグレイシアをかわし、ここで雪乃が先頭に躍り出た。その雪乃に食い付くようにアンヌが追う。グレイシアの外にはアフロディーテが。その少し下がってアリステラがいた。

 俺はアンヌの後方にいて波の影響を極力少なくする。ここで最後の魔石交換をした。


 最高速を追求する者。旋回性能を高める者。バランスを追求する者。個々に好みが別れる。


 残り三百メートル。

 スピードペダルを最後まで踏みこんで、最高速を追求した俺はここでトップに躍り出る!


 ……つもりだった。


 誰の順位も変わらず、残り千メートルの順位のままゴールした。

 それはそうだ。魔石の交換時かバランスを崩した時にしか極端にスピードは落ちない。

 それに最高速の差も僅かにしか差がないのだから。


 結果はオッズ通りに終わる。

 俺は優勝賞金も、賭けたお金も失った。

 そして、、、、、


 一着でゴールした雪乃を眩しく思いながら、頬に涙が伝う。

 なぜ、最後に抜けると思っていたのだろうか。

 なぜ、最高速もほぼ変わらないのにそう考えてしまったのだろうか。

 俺はがっくりと項垂れた。

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