ヴィス島
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ヴィス島。長くヴェネシーアがその周辺の島々を支配下に置いてきたが完全に統治したのはグレイシアがその周辺域での海戦に勝利してからだ。
そんなヴィス島に新型軍艦の試験航行を兼ねて長期バカンスの目的地に向かっていた。
「前よりスリムになったし、マストの数も心なしか減ったような気がする」
「はい。水の抵抗を極力減らし、五基搭載されたスクリューでの推進力と航行時間を高めました。なので、今のようにマストを上げた状態でも航行可能です。でも、予備的な面も考えマストは残していますし、同時に使用すれば現行より三倍近い速度がでます」
ソフィアがその慎ましい胸を誇るかのように新型艦の説明をしてくれた。
「そっか。頑張ったんだな」
「でも、実際はヒントをくれたお母様のおかげです」
「ヒントはヒント。実際にカタチにしたのはソフィア達だ。もっと誇ってもいいと思うぞ」
軍艦に囲まれて海を行くのは壮大で壮観だ。自分が無敵になったような気になる。
「どうだ。この海全てがヴェネシーアのものだ。私に惚れ直したか」
「惚れ直すも何も。まだ、惚れてないからな。そうやって嘘で既成事実を積み上げるな」
「そうですよ、お母様。ユウヤ様はお母様に惚れたことは一度もありませんから」
なるほど、これが骨肉の争いというやつだな。
ほんと、罪な男だ。
「なんか海風に煽られて格好つけてない。ユウヤくん、大丈夫なのかな」
「お調子者なのはいつものことだ。気にしたら病気になるぞ」
おい。キョウヤ、ユキナ、聞こえてんぞ!
「しかし、私がここで戦ったのも、もう十年以上も前か」
布で隠した左眼に軽く触れながら、グレースは遠くの波を眺めながら呟いた。
「アドリア海の島はヴェネシーアの支配下なんだろ。あんなに陸地に近いのによく維持できるな」
「ここアドリア海での海戦で、我が国に勝てる国などないさ。もっとも、他の海域でも負けるつもりはないがな。それにヴィス島周辺以外は争いが起きぬ程度に緩く支配しているだけだ」
「なんでヴィス島周辺だけ別なんだよ」
「綺麗だろ、海が。それだけさ」
勝ち気で気丈そうなのに、意外にロマンチストなんだよな。年増だけど。
「なんか失礼なことを思っていないか」
「まさか。可愛いところがあると思っただけださ」
イマイチ納得できないといった表情で彼女はまた遠くの波を眺めはじめた。
そして小さく、ありがとう、と呟いていた。
トラブルなど起きようもなく安全に予定通り、ヴィス島へ着いた。この島には集落が二つしかない。その内の一つヴィスという所が今回の滞在地だ。
やはり女王陛下が滞在するということもあり、島で一番の屋敷が滞在先に選ばれていた。
あまり華美な装飾などを好まないグレイシアの性格を熟知していて、屋敷の改築も最低限に留められていた。
また、護衛の数も最小限に抑え、それ以外の兵士達は海上訓練などを行うらしい。
屋敷の中を使用人達が忙しく動く中、暇な俺達は散策などして夕食まで時間を潰すことにした。
だが、なぜ皆で行動する。行動したがる。
重い思いに好きな場所に行くなり、遊べばいいものを。
「キョウヤ。なんでお前達までついてくるんだ」
「馬鹿か、お前は。スポンサーの側にいるのは当たり前だろうが」
金をたかると、はっきり面と向かって言い切ってきた。あきれて助けを求めようと雪乃に目をやると、アフロディーテが雪乃の腕を抱いて仲良く笑顔で歩いていた。
「なあ、あの二人は昔から仲が良いのか」
「うーん。昔からといえば昔からなのかも」
「なんだよ、はっきりしない言い方だな」
「仕方がないだろ。あの二人は神族が違うし、そんな昔の事なんてしらねぇよ。ただ権能的にあの二人は似通ってるからな。仲は悪くはないし、寧ろいい方だと思うぞ」
そんな事を話しているといい匂いが漂ってきた。その匂いのする方には屋台がたくさん並んでいた。
その屋台へはやる気持ちで歩をすすめる。
「おーい。少し買い食いしてこうぜ!」
色々な種類の焼き魚と貝焼きがある。しかも、醤油の匂いがしてる。
「香ばしい匂いね。懐かしいでしょ」
そう言いながら隣に並んだ雪乃が料理を注文して、俺に手渡してくれた。さすがだ。おれの好みをわかってる。
「このポッポ焼きうめえなぁ。懐かし過ぎて涙がでる」
俺が泣きながら食べていると甲斐甲斐しく涙を拭いてくれていた。
「おじ様、この調味料が売っているところを教えてくれませんか」
丁寧に醤油を購入出来るお店まで聞き出してくれた。なんて、良い子なんだ雪乃は。
そんな涙を流しながら食べていたぽっぽ焼きは評判が良かった。後から聞いた話だとグレースは醤油の買付先を聞いて大量購入したらしい。それも俺の為に。なんとも持つべきは偉大なる女王陛下だとしみじみ思った。
「はあ、あとわさびがあれば刺身が食えたのに」
「それはどこで買えるのだ」
「日本だ」
「ん、あの極東の島国のことか」
「たぶんそう。俺の前いた世界の祖国だ」
「なるほどな。なら、貿易の手をそちらまで伸ばすか。なぁに心配するな。ユキノの収容魔法が付与された鞄があれば生物でも腐らん」
やはり持つべきは偉大で決断力のある女王陛下様だ。
そしていつかは訪れてみたいものだ。




