表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/85

時期尚早

今夜はあと一話投稿します。

もしよろしければ評価などもお願いします!

「ソフィア。その魔石の件は凍結だ。また、関係者にはこの件を口外することを禁ずる」

「なぜですか。この研究が進めば更なる発展が望めます!」

「よく考えてみよ。空になった魔石に人が簡単に魔力を注ぎ再使用できると知れたら、魔石の需要は極端に減って価格は暴落する。それに魔石の採掘や販売に関わる者たちの職を大量に失わせる事にも繋がる。よいか。この件は絶対に公にしてはならぬ」


 歴史的な素晴らしい発見だとは思う。が、時期尚早なのだ。それに新たな奴隷需要を作りだしてしまう可能性が高い。人が魔石替わりにされかねん。


 項垂れる娘を眺め、その気持ちは分からなくはないと心の中で呟く。


「しかしソフィア。魔石から出力されるエネルギー効率の向上は本当に限界なのか。お前たち研究者は豊富にある使い捨ての石程度にしか考えてはいないのではないか。魔力回路に欠陥や無駄があり、そこから魔力が漏れてはいないか。動力部には正しく伝わっているのか。残念だが、私が今までの報告を聞く限り、それらを見直し改良した報告は目にしていない。つまり、その部分においては過去からなんら進歩していないのではないか」


 私の言葉に娘が顔をあげる。涙を浮かべていた瞳には輝きが戻った。


「それにスクリューの件も、何故一台で船を動かそうと拘るのだ。力が足りないなら二台でも三台でも積めばいいではないか。確かに一台で船を動かす力を得られるのに越したことはない。けれど、お前たち研究者はそんな瑣末な事に拘りすぎだ。例え、スクリューを五台積んで重量が増したとしても、その分マストが減って全体では重量が減るかもしれん。それに何故、現行の軍艦の形そのままなのだ。スクリューの推進力に合わせて軍艦の形状やバランスを適切に見直して変更するのが正しく実用化に繋がるのではないか。ちゃんと船の設計者や大工と相談しながら進めるのが、本来の正しい姿ではないのか」


 あまり口出ししたくはなかったのだけれど、あまりにも視野が狭い。大体、馬車でさえ一頭で駄目なら二頭。それでも駄目なら三頭と増やすのに。なぜこうも頭のいい奴等は一頭の力を上げることに拘泥するのか。私には理解できない。


「お母様。私の視野が狭すぎました。申し訳ありません」

「そうだな。でもそのままでもいいぞ。その方が私が彼を先に落とせる可能性がグッと高まるからな。あっはははは!」

「くっ、お母様だけには負けませんから!


 まあ、無理だろうけどな。



 ◇


 俺は自分の存在がこの世界でイレギュラーなのだと自覚した。そして、自分の存在があまりにもこの世界に悪影響を与えているのではないか。と、危惧した。


『ソフィア。すまないが、俺は今後研究に力は貸さないし、参加しない』


 朝、俺を迎えに来たソフィアにそう告げた。

 彼女は言葉を押し止めた素振りを見せながらも、その事をただ一言、はい、と言って受け入れてくれた。

 その時の彼女の寂しそうで、悲しげな表情が。俺の心に深く、抉るように刺さった。


「それで春の息吹を目と心で感じ癒されようと、馬で散策なのかな」

「違いますぅ。天気が良いからデートしたかっただけです」


 ヴェネシーア本島ではなく、大陸部にある学院周辺を馬に雪乃と二人乗りしながらのんびりと散策していた。


「立派な学院だね。生徒たちも楽しそう」


 やや遠くに見える初等部の子供たちがグラウンドで楽しそうに走り回っていた。


「トニーさんに感謝だな」

「だね。ところで、さっきから姿を消して覗いてる不審者を懲らしめてもいいかな」


 俺は周囲を探るも、なにも分からなかった。

 しかし雪乃は先の尖った細い鉄の棒を何気なく後方に放った。カン、と少し高い音がすると槍を手にした男と綺麗な女性が姿を現した。


「危ないじゃないか。刺さったらどうするんだよ」

「刺さらないように投げたから大丈夫。それより久しぶりね。アレース、アフロディーテ」

「ご機嫌よう、フレイヤ。とても会いたかったわ」


 満開の笑顔でアフロディーテは駆け寄ってくる。

 その笑顔は魅了の魔法を放ってるかのように、彼女の周囲を煌めかさせていた。


「なによ。私のことを処女神同盟に入れてくれなかったくせに」


 雪乃は馬から華麗に降りて、アフロディーテと向かい合った。


「あれは無理よ。文句ならあなたを語った神話に言って。それより聞いて。アレースったらあなたに会いたいって何度もお願いしたのに合わせてくれなかったんだよ! ひどいと思わない!」

「近い近い。顔が近いわ。あまりそう興奮しないで。あなた、本当にそんなところは昔のままね」


 雪乃はアフロディーテの額に手を当てて接近を阻止していた。


「あなたのそんなつれないところもね」


 そして愉快そうに二人で笑いはじめた。

 そんな二人を、俺とアレースは困惑した表情で眺め、互いに大きく息を吐いた。


「それで。あなた達の名でも当てたから慌てて弁解にでもきたのかしら」


 二人は言い当てられたからなのか、少し焦った感情を表した。


「そうそう。アレースにはちゃんと倍にして御礼をしなきゃいけいわね」

「いやいや。僕と君の仲じゃないか。お礼だなんて要らないよ。あはははは」


 あのアレースが半歩も下がり、顳顬から滝のように流れるような汗を垂らしていた。その表情はとても青い。


「そう、残念ね」

「ねえねえ、フレイヤ。私、考えたの。私たちも一緒に暮らせば、他の神も手を出せないんじゃないかって! どう、いい考えでしょ!」


 手を合わせて、前のめりに自分たちをプレゼンした。それも無邪気に、とびっきりの笑顔で。


「どうせ隠れ住む暮らしに飽きたんでしょ。正直に言いなさい。楽しく、愉快に、贅沢に暮らしたいって」

「そうなの。もう、無理なのよ。なんで神である私がひっそり隠れてなきゃならないの。もっと自由に遊ばせて! もっと自由に楽しませて!」


 なんて残念な女神様なのだろうか。

 そう思いながらアレースに視線を移す。


「なあ、お前にあげた大金はどうした」

「あ、あれな。うちのかわいい恋人が溶かしたよ」

「溶かしたって。まさか、カジノで負けたのか!」


 アレースはやましさを隠すように顔を背けた。

 なんて残念過ぎるコンビなんだよ。

 俺はあきれて下を向くと、大きく息を吐いた。


「ちょっと、うちの悠哉くんからカツアゲしたの。ねえ、そんなの許さないから」

「ち、違う、違うから。ユウヤが、お礼だってくれたんだよ!」

「ほんとに」

「うん、ほんと」


 一応、庇っておく。これは貸しだぞ。


「そんなことより、一緒に暮らそう。ねえ、そうしよう。今すぐそうしようよ!」


 アフロディーテの切実な訴えに雪乃が折れた。


「わかったわ。けれど、迷惑を掛けたらすぐ追い出すからね」


 アフロディーテは飛びつくように雪乃に抱きついて喜んだ。

 なぜだろう。そこはかとなく、不安を覚える。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ