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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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34/85

方針

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 グレイシアの執務室へ入るなり一言文句をつけた。


「俺と雪乃の楽しい時間を邪魔しやがって、くだらない話だったら屋敷から出禁にするからな」

「顔を見るなり噛みつくな。まあ、私の話を聞け。そしてお主の意見を聞かせてくれ」


 執務室の机に両肘をついて手を組むと彼女は神妙な面持ちで話し始めた。


「ハンガリー王国の内戦が始まった。あの土地、あの国は様々な民族で構成されていて過去に何度も争っている。そんな歴史を繰り返しているのだが、今回ばかりはさすがに激しいものになると考えている。隣の国だ、勝手にやっとけとは思うが我が国の国境付近に避難民が押し寄せてきてな。ちょっと対処に困っている。さて、我々はどうすべきだと思う」


「自分達の住む場所を放棄して逃げ出した者など放っておけ。勿論、武器を手に取れない老人や女子供は別だがな」


 俺の知ったことか。

 だいたい戦わずして逃げる奴なんて、どうせ同じことがあればまた逃げる。受け入れてもなんの役にもたたん。


「ほう。ただ追い返すにしても面倒だぞ」

「街や村の外でキャンプでもさせとけ。めんどうを掛けてくるなら容赦なく罰を与えろ」

「なんだ。てっきり民に優しいお主なら手厚く保護しろと言うかと思っていたのにな」

「馬鹿か。それは真面目に働いて過ごしている自国の人に限っての話だ。俺にだって、グレースにだってやれる事に限りがある。出来もしないことを引き受けて、自分達の守るべき大切な人々に迷惑を掛ける訳にはいかない」


 人道支援なんてのは余裕のある奴がやれることなんだ。学校で虐められている人に手を差し出すのも同じだ。弱い奴は同情は出来ても解決出来ない。虐めている奴らに対抗できる力のある奴にしか手を差し出すことが出来ないんだよ。


「その例え、微妙にズレてるよね」

「まあ、雪乃がそう言うならそうなのだろう。とにかく、イジメ云々は置いておいてだ。放っておけ。それに内戦なら、ハンガリー国内の国境付近の奴等が良い緩衝地帯になってくれるだろうしな」


 グレースは大袈裟に両手を広げてみせた。


「さすがは我が愛人。いや、義息子だな。私もまったく同じ考えだ」

「訂正しろ。俺はお前の愛人じゃねえ」


 そんな俺の抗議を無視して彼女は話を進めた。


「それと、ローマ王国からこれまで以上の同盟関係強化の申し出がきた。同時にオートリアへ侵攻するとも」

「関係強化しておけよ。それに万が一、俺がこの国の王になんて事になったら、シャルルにくれてやるって言ってるからな」

「お主は何を言っている。まったくあきれるわ」


 王様なんて面倒は絶対に御免だからな。勝手に押し付けられても、こっちが困るわ。


「で、なんでシャルルは戦争するんだ」

「パブルスク家の排除だな。あの一族は厄介でな。色々なところと婚姻関係を結んでは大陸での影響力を高めている。しかし、あの国は先の暗殺事件で王族の女子供全て暗殺された。今の国王も他国からの出戻りだ。ここできっちり止めを刺しておきたいのだろうな。我が国もローマも奴等には散々してやられたからな」


 ほう。アレースのやつ中々気が効くじゃないか。


「なら、いいんじゃね。シャルルが勝てば国境を隣接するのはハンガリーだけになるし」

「お主は、我が国がローマに飲み込まれないと思っているのか」

「当たり前だろ。喧嘩を仕掛けてきたら、倍にしてやり返してやる。で、最初にシャルルの首をとってやるから安心しろ。俺は友人だろうが裏切り者には容赦しない。いや、寧ろ友人ならさらに容赦はしないからな」


 俺はニヤリと笑ってみせた。


「そうだね。悠哉くんを裏切ったら私も容赦しないかな。全て根絶やしにして、それこそ罪を悔やむよう真綿で首を絞めるように、ゆっくりとゆっくりと長く苦しめて殺してあげる」

「さすがはブラン。よく分かってるな」

「そうよ。私達はダークサイドに生きてるからね」


 ブランを横向きに抱いて高笑いをした。

 久々のノワール&ブランごっこだ。何気に楽しい。しかし、やや周囲の反応が悪い。


「うほん。まあ、あれだな。久々に急にやられると少し反応に困るな」

「馬鹿なこと言うな。俺達は常にワイルドサイドの人間なんだぞ。あれ、待てよ。シャルルがオートリアと戦争するなら、俺達の野党退治はどうなるんだ」

「そこは大丈夫じゃない。余計に流れて来るかもよ」

「なら少しは余計に楽しめそうだな、あっはははは」


 雪乃を抱いたまま歓喜の高笑いをあげる。

 その目の前では何故かグレースが頭を抑えていた。


「そんな計画を建てていたのか。聞いてないぞ」

「当たり前だろ。さっき決めたんだから」


 グレースは頭を抑えるのに加え、大きなため息をはいた。


「少しは自分達の立場を考えてくれ」

「俺と雪乃は誰にも縛られない。あんまり調子に乗ってると、その無駄にかわいい尻を千回ひっぱ叩くぞ」

「それきっとご褒美になると思うよ」


 そんな俺達の会話にグレースは顔を赤くした。

 雪乃の見立てに間違いはない。


「グレース。おまえ、Mだったんだな。そっか、今度から褒める時はケツを叩いてやるよ」


 口をアワアワさせて、倒れるようにグレースは机にうつ伏した。


「よし、要件は済んだようだな。帰るか」


 こうして執務室を後にすると、また雪乃と部屋でイチャイチャしてその日を過ごした。


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