祝杯
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試作機の成功を皆で祝った後、雪乃と二人で祝杯を交わした。
今夜の雪乃はとても嬉しそうに笑っていた。
「良かったね。あんなに頑張ってたから喜びもひとしおだよ」
「雪乃が陰で支えてくれたおかげだよ。ありがとう」
彼女の額に軽く感謝のキスをした。
「てっきり、そのまま関係が進展すると思ったんだけどな」
「ん、ソフィアとは仲良くなったと思うけど」
「違うよ。肉体的にって意味だよ」
「そうなって欲しかったのか」
「少しは」
その答えについ笑いが溢れる。
「少しっていうことは、大半はそう思ってないって事だよな」
「意地悪言わないで。彼女の想いも少しは報われてもいいと思ったの」
「雪乃は俺を独占したくないの」
「だって、死んだら未来永劫私のものなんだよ。忘れたの。だから、短い今世のことはたいして問題にしないの」
そういえばそんな約束したなぁと思い出す。
今となっては、それはありがたいことだ。
「でもさあ。問題にしないってのが、俺にはとても引っ掛かる」
「もう、揚げ足を取らないで。ほんと、たまにすごく意地悪なんだから」
「浮気しろっていう罰だよ」
「ふん、浮気じゃないもん。だいたい本来は一夫多妻制の方が正しかったんだらね。だから男性より女性の方が多く生まれてくるの」
なんかとんでもないことを聞いたような気がする。これが神の意志なのだろうか。
「深いね」
「うん、深いよ」
「けどさ、肉体関係を結ばなきゃ絆は深まらないものなのかな」
「好きな人、愛してる人に抱きしめられたい。口づけされたいと願うのは当然じゃないかな」
それもまぁ分かるけど、だからといってなあ。あれなんだよな。
「なに。納得がいかないの」
「いや、例えばさ。俺が雪乃以外とそんな関係になったら、雪乃は一人でベッドで眠るわけだろ。そんな寂しい思いはさせられないよ」
「なら別に終わったら帰ってくればいいだけじゃない。それか私と一緒にとか」
「なんか前半はどうでもいいけど、後半にはとても興味がある」
「じゃあ、週に二回くらい誰かを呼べばいいんだよ」
「週に二回なの」
「そう、週二回。それ以上は駄目。週に一日なら他の女性の部屋に泊まってもいいよ」
何気に独占欲はあるんだよな。
かわいいから全て許してしまうけどさ。
「雪乃はかわいいね。やっぱり君がいちばん大好きだよ」
彼女と唇を重ねた。そして唇が離れると雪乃は口を開く。
「だから、彼女達の想いに応えてあげて」
「その気になったらね」
そう言って彼女を抱き寄せて、今度は深く身体を重ねあった。
◇
試作機も完成して、特に予定もなかったので俺は雪乃と久しぶりにずっとイチャイチャしていた。
それこそ誰も部屋には近づけずに、思う存分二人で快楽に耽った。
「ほんと、元気だよね」
「俺も知らなかったよ」
お互い裸のまま部屋でくつろぎ、何度か一緒に風呂に入って体を流し合う。そんなとても素敵な時を二人っきりで過ごす。
「久々に水入らずで二人でのんびりしてるような気がするね」
「だな。半年くらい魔道具作りに夢中だったし」
こんな時の為に用意しておいた作り置きのサンドイッチを収納魔法を付与したバッグから取り出して二人で食べていた。
「そういえば学院の建物が完成したって」
「早いな。トニーさんの仕事には感心するよ」
「グレースさんも気合い入れて教師を探してたよ」
「感謝ですなあ。俺は何もしてないけど」
そう。最初に口を出してから一切何もしていない。いつものように周りに丸投げ状態だ。
「できる人がやればいいんだよ。私達はお金だけ出して黙っているくらいがちょうど良いんだよ」
「たしかに。それで俺達は何をしようか」
「うーん。魔物討伐でもする」
「ダンジョンとかか」
確かに最近めっきり体を動かしてないな。
魔道具作りにかまけて鍛錬もサボってたし。
「そういえば雪乃水着姿を見てないな」
「もう冬なんですけど」
「じゃあ来年か」
うーん、本当にやるべき事がない。
裏社会に君臨する予定も、敵対する組織がなくてめっきり活動が減ってるしなあ。
「なんか倒し甲斐のある悪の組織とかないのかね。このままだと俺のワイルドサイドが消えて無くなりそうだ」
「私のライフルもめっきり錆びついてそう」
二人で大きなため息をついた。
「あ、そういえば北部の国境付近で野党被害が相次いでいるって、グレースさんがぼやいていたよ」
「それだ!」
俺と雪乃は目を合わせて同時にうなづいた。
そんな時に激しくドアをノックされた。
ガウンを羽織り、ドアを開けるとアリステラが何かを言おうとして視線が俺の股間で止まったまま絶句していた。
それを隠すこともなく堂々とアリステラに要件を問う。
「あ、あの、ハンガリー王国で内戦が始まりました」
俺の股間に視線を定めたままアリステラは報告した。
「それで」
「はい。あのう、あれです。大きい、じゃなくて。グレース様がお呼びです」
「ほう。大きいか。もっとよく見てもいいぞ」
そう言ってアリステラを揶揄っていると、背後から雪乃に軽く頭を叩かれた。
「もう、顔が真っ赤じゃない。かわいそうでしょ」
「いや、だってずっと見てるし」
「いえ、悠哉様が見せてるのです!」
アリステラはやや叫びながら否定した。
別に初めて見たわけじゃないのに、なに照れてんだよ。ウブかよ。
「宮殿に行けばいいのね。着替えたらすぐ行くわ」
雪乃がそう答えると足早にアリステラは立ち去った。
その後ろ姿はなんとなく興奮しているように思えた。息も荒く、肩を上下させていたから。




