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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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葛藤

 王位について十数年。

 先代の父が亡くなり若干19歳で私は王となった。

 夫とは14歳で結婚し、15で母となったのだが、海難事故により夫は結婚から三年で他界した。

 以来、一人で娘を育て、そして王となり、玉座に君臨した。


 そんな私が国の重鎮から一目置かれるようになったのは隣国との海戦で勝利した時からだ。

 陸戦で苦戦していた状況を海戦で勝利する事で盤面を一気にひっくり返した。まあ、その海戦で負傷し左目は失ってしまったのだが、左目一つで勝てたのなら安いものだ。けれど、20歳で隻眼となった私に本気で好意を寄せて、愛を向けてくれる者は現れなかった。もっとも、権力目当てで近づいてくる者は多々いたのだけれど。


 国の統治に関しては才ある方だと自負している。容姿もスタイルも悪くはないと思う。けれど、気が強いせいなのか、誰からも本気で愛を求められなかった。


 ただでさえ玉座は孤独なのに、私は一人その重責に耐え、その座を頑なに守ってきた。

 それは、愛すべき民のためにだ。


 それなのに、オートリアとハンガリーと手を結び、他国にこの国を売り渡そうとした愚か者達が現れた。その中には長くから王家に仕える貴族もいた。本当に怒りが込み上げてはらわたが煮えくりかえる思いだった。

 そんな時、一人の男が現れた。馬車で移動中の娘を助けた男だ。


 特に期待してはいなかったが、娘がどうしても会って礼をしてくれと言うので会うことにした。


 若く不遜な男だった。

 王を前にして膝を屈しない。言葉も王に対する言葉遣いではなかった。おまけに護衛の騎士を煽り、私の前で斬って捨てた。


 そんな男に私は興味を持った。もしかしたら、私の力になってくれるのではないかと。

 交渉を持ちかけると、男は叛逆は何が理由だと聞いてきた。私が富だと答えると、そんなものくれてやれ。と、なんのことなく言い放った。その時点で私は男を気に入った。そこからいくつかのやり取りをして、男はお前の全てを寄越せと平然と言ってきた。それが報酬だと。


『誰もが虐げられずに幸せに笑い。誰もが明日へ希望が持てる。そんな世界が作りだす美しい光景を彼女に贈りたい』


 その為の努力をお前の持っている全てで叶えろ。

 その言葉に一瞬唖然とした。金でもない、地位でも名誉でもなく、好きな女に美しい世界を見せたい。ただ、それだけだを要求してきた。


 私は男を心底欲しいと思った。

 初めて心から手に入れたい者が現れたと、心の中では狂喜乱舞していた。


 私は男の要求を飲んだ。

 そして、私の想像の斜め上をいく結果を次々と見せつける。

 私は男を絶対に手放さないと、正教会に多額の寄付を払い、男との養子縁組を速やかに認めさせた。しかも、正教会教皇自らの署名入りで。


 私はそれを見て、心の底から喜び笑った。

 それを書簡にして男に送りつけた。

 ハメられたと悔しがってはいたそうだが、大人しくそれを男は受け入れた。


 そんな男が内乱を収める為に暗躍した七日間を、その惨劇さから民は血の七日間と呼んだ。

 大勢の貴族が死に。またそれに伴い大勢の家臣が犠牲となった。そして他の貴族は皆知っていた。殺されたのは叛逆を企てた者達だと。

 こうして、完全に叛逆の芽は摘まれた。


 お陰で貴族の数は減り、領地や役目を改めて振り直さなければならなくなった。

 全くもってクソ忙しい日々だ。

 私の愉しみ、義息子を揶揄えない程に。


 全く、年増年増としつこく言いよって。

 その年増が、お前を骨抜きにしてやろうか。とも思うが、思い返してみれば夫としか経験ない私が、伽で満足させられるのだろうか。どうしたら、あの男に一泡吹かせてやる程満足させられるのか。最近は暇さえあれば、そればかりを考えているような気もする。もしかして。


 私は、彼に恋をしているのだろうか。


 濡れる、いや、そんな揺れる想いを抱えて、私は日々過ごしていた。



 ◇


「悠哉くんて、あれだよね。グレースさんと気が合うでしょ」


 突然雪乃からそんな事を言われて困惑する。

 しかも、雪乃がさん付けで他人を呼ぶこと自体珍しい。


「まあ、気が合うというよりは、話していて楽しいかな。あれだけ激しく罵り合っても、次の瞬間には何もなかったかのように接してくれるしな。楽なんだよ、たぶん」

「そっか。良かったね、本音で話せる人ができて」


 本音か。まあ、普段は年増扱いしてるが、前の世界の年齢的にみれば歳上のお姉さんだしな。あの頃なら手を出していてもおかしくはないよな。


「それでソフィアはどう思ってるの」

「まだ付き合いが浅いのもあって、まだよく分からないな。かわいくて良い子だとは思うけど」

「ふーん、そうなんだ」


 なにその意味深な反応は。


「もしかして変なこと考えてるのか。俺は絶対に親子丼はしないぞ」

「変なことってなに。それに親子丼ってなに」


 うわっ、絶対知ってて聞いてるよな。

 なんかソフィアの一件から、俺に対して意地悪になってないか。


「ねえ。子孫を残すのが嫌なら、魔法でそうできるよ」

「なにそれ。やだよ。ハーレムつくって子供が一人も出来なかったら種なし呼ばわりされるじゃん。絶対に嫌だね」

「でも、たくさんの人とできるよ」

「お生憎様。俺は雪乃に十分満足してるし、幸せだから」

「私だけだと飽きない。たまには違った刺激があった方がいいと思わないの」

「思わない。それにもし雪乃がそう思って、他の男と寝たら、俺はショックで死ねる自信がある。だから、二度とそんな事は言わないで欲しい」


 その答えを聞いて雪乃は俺の頬に軽くキスをしてくれた。


「私は絶対に悠哉くん以外に身体を許さないよ。でも、そんな良い話をしてる時にこんなに元気なのも考えものだね」

「君への想いは、萎えることがない。ということで如何でしょうか」

「もう、恥ずかしいよ。あっ、」


 こうして今夜何度目かの肌を重ねあった。


明日も三話投稿します。

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