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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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思惑

今夜はあと一話投稿します。

 正教会からの書簡を読んで思わず吹き出した。

 先日彼から事の顛末を聞いてはいたが、いざ実際に目にするとおかしくて笑ってしまう。


「陛下、正教会からはなんと」

「ノワール殿。いや、ユウヤ・ノワール・ヤマト・ヴェネェツァ。あの、アドリア海の女王ヴェネシーア王国女王陛下の養子になったそうだ」


 笑える。これが一人だったならば腹を抱えて大笑いしていただろう。


「なんでそのような事に」


 政務次官から今や宰相への座へ登り詰めた男が困惑した情けない声を出した。


「彼が言うには、嵌められたらしいよ」

「嵌められたとは、些か……」


 ことの顛末を彼に素直に話すか思案した後、言わない方が面白いと思った。


「あれだ。正式に正教会が認めたのならば、我々がケチをつけたところでどうにもなるまいて。何より、彼があれほどまでに動揺し、狼狽している姿は中々のものだったぞ」

「いや、陛下。笑い事ではありませんぞ。彼がヴェネシーアの王族になったのならば、我が国で彼が行っているスラム街の再開発や事業が全てヴェネシーアに、」


 私は彼の発言を手を突き出して止めた。


「そこら辺は安心していい。彼はこの国をそんな風に扱ったりはしない。現に、彼は既にこの国での事業を商会の代表に全て移譲したよ。為政者の思惑に利用されないようにね」


 そう。彼には良くも悪くも欲がないのだ。

 彼の判断基準はそれが民の暮らしにとって、良いか悪いか、それだけなのだから。


「しかし、本当に彼が敵対しないとは限りません。商会の全てを手放したとしても、かの商会が彼と敵対して我が国の側につく保証はありません」

「それは、かの商会だけに限った話ではないだろう。疑ってばかりいても仕方があるまい。それより、朗報と言うべきは悩むところだが、オートリア公国とハンガリー王国、その王達が暗殺されたのは彼の仕業だ。良かったな、我々はあの国に手出しをしないで。本当に良かった」


 聡い彼だ。この言葉で全てを察するであろう。


「今後は彼に敵対しないように、彼の動向をより一層注視いたします」

「頼む。私も彼との友人関係を崩したくはないからな」


 血の七日間。他国と手を結んだ裏切り者への容赦のない殲滅劇。また同時に裏組織の壊滅と乗っ取り。

 その混乱を早々に鎮めたヴェネシーア女王。

 神はなんの因果であんな傑物二人を引き合わせたのか。


『俺が万が一、王になったらよろしくな。ヴェネシーアの王もお前がやれよ』


 軽い調子で言ってはいたものの、あれは本気だった。面倒を押し付けられているだけなのだか悪い気はしない。それ程彼に、私は信頼されているということなのだから。


 だから私は、その信頼に誠心誠意応えないといけない。



 ◇


 ヴェネシーアを離れる際、見送りにきた年増女は目から大量の涙を流し、俺の足にしがみついて、海はここにもあるだろう、行くな。と泣き叫んでいた。

 ここまで大泣きされると若干、後ろ髪を引かれる想いになる。


 ここの裏組織の方はスコットさんの息子に任せたし、ロマーニャの商会はスコットさんに全ての権利を移譲した。なので、俺達のホームはここ、ヴェネーシアになった。


「年増のくせに泣くな。それにバカンスが終われば帰ってくるんだぞ」

「本当か、本当に帰ってくるんだろうな」

「お前、俺を勝手に養子にしておいて、なに言ってんだよ。首に鎖をつけたのはグレースだろうが!」


 しまった。つい愛称呼びをしてしまった。お陰で復活しやがったじゃねぇか!


「とうとう私をグレースと。ふっふふふ、幾日かの洗脳の甲斐があったな。しかし、馬車ではなく、船で行かなくていいのか」


 冗談じゃねぇ。船酔いはもう御免だ。


「アンヌに旅先で色々な景色を見せたいからな」

「今後の為にも、船酔いは嫌だって、はっきり言った方がいいよ」

「そうです、悠哉様。この方にはまわりくどい言い方は通用しません」

「はっきり言っても駄目ですけどね」


 グレースは、雪乃、アステリア、マチルダの辛辣な言葉に打ちのめされていた。

 そん中、ソフィアだけが申し訳なさそうに小さくなっていて、俺は彼女に歩み寄り慰めた。


「ソフィア、君が気に病むことはない。悪いのは年増女だけだからな。君はそのままで良いんだ」

「悠哉様。ソフィアだけ甘やかすのは駄目だと思います」

「そうです。彼女が一つ歳下だから甘やかすのですか。それはそれで納得できません」


 今度はアリステラとマチルダからの口撃が俺に向けて放たれた。


「なに言ってんの、君たち。別に依怙贔屓してないだろ。被害妄想も程々にしとけよな」


 付き合いきれないので、アンヌを腕に抱いて御者台に乗り込んだ。


「ほら、さっさと乗らないと置いていくぞ」


 皆が馬車に乗り、俺は馬車を走らせた。

 後方でなにやら騒いでいるが気にしない。


「お兄ちゃんも大変だね」

「だな。アンヌだけは、そのままでいてくれよ」


 そう言ってアンヌの頭を優しく撫でた。

 うん。と返事をして、嬉しそうに笑うアンヌに心を癒されながら、二人で歌を歌い、のんびり馬車を走らせた。


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