血の七日間。そして伝説へ
今夜はあと二話投稿します。
昨夜の襲撃を受け、女王陛下は非常事態宣言を発した。その内容はというと、ざっくり、今危ないので貴族のみんなは屋敷から出ずに警戒しなさい。領民も夜間の外出は控えなさいよ。と、いった内容だった。
要するに、襲撃されて殺されるのを大人しく屋敷で待っていろ。ということだ。
俺にべったり引っ付いている雪乃に、そっちの進み具合を聞いた。
「順調だよ。あとは娼館関係を抑えれば完了かな」
「奴隷は解放したのか」
「ううん。そのままだよ。環境を良くしただけかな」
ということは、うちの商会に丸投げしたということだな。大変だよな、毎回無茶振りばかりされて。
「マチルダ、こっちに来てる人も含めて臨時のボーナスを多めに配っておいてくれ」
「はい。かしこまりました」
「それで悠哉くんの方はどうなの」
「大きいところは潰したから、後は消化試合だな。ただ、昨夜は妻子に財産を持ち逃げされて空振りだった。はぁあ、あの年増女に金を横取りされたかと思うと腹が立つ」
「それ、横取りとは言わないよね」
「似たようなもんだろ。しかも、こんなものまで送ってきやがって!」
それは一通の書簡だった。
書いてあることを要約すれば、お前を私の養子にした。これは教会も認めた正式な物で、お前が何と言おうと無効には出来ないし、拒否や反故にも出来ないからな。そして、娘をくれてやるから、愛人にでも側室にでも好きなようにしろ。とにかく、娘を断ったら私がお前のもとにいって骨抜きにしてやるからな。といった、ふざけた内容だった。
「あの年増め、俺をハメやがって」
「いいじゃない。養子になっただけだし、お姫様とも結婚しろとは言ってないしさ。確かな身元を得たと思えばいいんだよ」
「大事なことを忘れてませんか、雪乃さん。あの年増には子供はあのお姫さんしかいないんですけど」
そう。このままでは将来的に、俺が王様になってしまう可能性が高いのだ。そんな、めんどうは絶対に御免だ。
「まあ、私に素敵な景色をいつまでも見せろ。なんて言った意趣返しかもね。お前もやれってさ」
「伊達にアドリア海、最大の海洋都市を統べている訳ではない。ということでしょうね」
「マチルダ、お前までなに言ってんの。それじゃ、まるで俺がしてやられたみたいじゃん」
「みたい。じゃなくて、やられたんだよ」
雪乃の言葉にマチルダもアリステラも大きくうなずいた。
「正式に教会に認められたら仕方がないですよね。それにたった二日でそれを認めさせた女王陛下の手腕には敬服します」
アリステラまで……
俺に同情するやつも、味方するやつもいないのかよ。
孤立無援の状態に、俺は遠くであの男が高笑いしてそうな気配を感じた。
「そういえば詳細は分かりませんが、オートリア公王とハンガリー王が暗殺されたみたいですね。同時期に暗殺されるって勘ぐりたくなります。なにか私達の知らないところで世界が大きく動いているのかもしれませんね」
やばっ、それ俺だわ。
この件は墓場まで持って行かなきゃ駄目だな。
「悠哉くん、大丈夫?」
「いやぁ、ほら」
俺は股間に視線を落としてごまかすことにした。
「もう、元気なんだから」
その雪乃の言葉に、アンヌはキョトンとし、アリステラやマチルダからは白い目で見られた。
どうやらプライドを捨てた作戦は功を奏したようだ。俺はそんな功労者を初めて誇らしく思えた。
◇
皆に話していた通り、後は消化するだけの簡単な作業だった。あれだけあった襲撃者リストも決行開始からたったの七日で全て殲滅し終えた。
ただ不満があるとしたら、お貴族様からあまり財産を得られなかった事だろう。
しかし、ヴェネシーアの都では多くの貴族家の当主達と、その家臣達全てが惨殺された事件として、多くの領民が恐怖と不安に眠れぬ夜を過ごす事となった。それを更に増長させたのが裏組織の壊滅と、少なからずの商会が襲撃にあい潰れた事が皆に知れ渡り、皆の記憶から忘れ去られる事のない惨劇として深く記憶に刻まれることになった。
そんな中。ヴェネシーアの都で唯一そんなことは関係ないとばかりに楽しく遊んでいる者達がいた。
「アンヌ、あまり体を乗り出すなよ。海に落ちるからな!」
船での観光を終えて、楽しそうに桟橋で遊ぶアンヌに注意するが、その満面の笑みに嬉しくなる。
そんな俺と腕を組む雪乃と俺の傍には三人の女性達がいた。アリステラとマチルダ。そして、お姫さんのソフィアだ。
「ソフィアの水着も作らないとね」
「はい、ありがとうございます。雪乃様!」
雪乃がどんな水着を着るのかは楽しみだが、あとの三人は正直どうでもいい。まあ、出来ればあまりセクシーじゃないやつだと有難い。
あの皆の気持ちに応える気はないと話してから、なぜかアリステラとマチルダが、余計に好意を向けてきているような気がしてならないからだ。
お陰で、雪乃も皆が居る前ではやらせてくれなくなった。前までは途中までガンガンオッケーだったのに本当に残念だ。
それともう一つ不安な事がある。
あの年増女こと、グレイシア女王陛下が『義息子よ、私の伽の相手をせよ』と、言って舌なめずりしながら足を、股間を撫でるのだ。自称31歳の義母に体を狙われる毎日に心がすり減っていく。
明日には絶対にここを出よう。俺はそう決意しながら楽しそうに遊ぶアンヌを眺めた。
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