表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/85

血の七日間二日目

明日も二話から三話投稿します。

 朝早く、白い外套のフードを深く被った女が息を切らしながら部屋に入ってきた。


「ノワール、見事な手並みじゃ!」


 寝惚け眼でソファに座る俺に飛びつくように抱きついてきた。


「何度も言わせるな。年増には興味ない、離れろ」


 無理やり引き剥がしていると、同じような格好で同じように息を切らした女が入ってきた。


「お母様、少しは落ち着いてください!」

「そうだぞ。それに抱き付かれるなら、そっちの方がいい」


 俺は娘を指差して、はっきり振ってやった。

 しかし、女王に対する嫌がらせのつまりだったのに、娘は顔を赤らめてうつむいた。しかも、女王は女王で馬鹿げたことを言い出した。


「むむむ、なら娘をくれてやろう。なぁに、ノワール殿なら側室の一人や二人増えても構わんだろう」

「あほか! そしたら誰が国を継ぐんだよ!」


 朝からどっと頭が重くなる。いや、痛くなる。

 しかも、隣の雪乃からもの凄い冷気を感じる。


「そういえば、はぐらかされたけど桜って誰?」


 おい、忘れてたことを思い出させやがって!


「なんだ、その桜というのは」


 お前まで。馬鹿かよ! そこは黙って流してろよ!


「うるせえ、それで何のようだ」

「おおう、そうだったそうだった。あの裏切者の屋敷からオートリア公国と交わした書状が見つかってな。お陰で此方も彼の国への対処がし易くなった。感謝するぞ、ノワール殿」

「ほう、それは良かったな。取り敢えず、これから俺達は朝食だから帰れ」


 どうやらこの親子は押しが強いらしい。

 何度も帰れと言っているのに、一緒に朝食をとると言って聞かない。根負けした俺は渋々、彼女達を朝食に同席させることにした。



 ◇


 雪乃がいつになくしつこい。

 昨夜はカジノなどを経営している裏組織と、それに与する商会を壊滅させて疲れている筈なのに、やたら元気でしつこい。そんな彼女に観念した俺は素直に口を開いた。


「別に隠してる訳でもないし、隠したい訳でもない。話してもしょうがない事だしな」


 俺が話し始めると、アリステラやマチルダまでもこちらに注目した。


「桜ってのは、初めて付き合った彼女の名だ。あのお姫様があまりにもそっくりだったから、驚いてその名を口にしただけだ」

「初恋の人?」

「まあ、初恋といえば初恋なのかな」

「いつ?」

「いつって。そんな事まで聞くのかよ。どうでもいいだろ、そんなこと」


 なんなんだ。けど、初めて嫉妬してるよな。これ、絶対に嫉妬だよな。

 ほほう。これはこれで有りかもしれない。


「ふーん。あの婚約者とは違うよね。それに、あの婚約者の事はそんなに好きじゃなかったよね」

「なんでそんなこと知ってんだ。ストーカーか」

「違うよ! 死ぬ際の記憶が見えたんだからしょうがないじゃない」


 そりゃあそうか。でもそれ、桜となんか関係あるか。


「まあいい。でもそれって関係ないよね」

「あるよ! だって、桜って口にした時、とても愛おしそうな感情だったもん」


 雪乃の声が段々小さくなっていた。それに、少しうつむいてもいた。


「まあ、互いに嫌いになって別れた訳じゃないからな。実際、前の世界では一番好きな女性だったしな。けど、それだけの話だろ。今更どうこう出来ない訳だし」


 俺は戯けて肩をすくめてみせた。


「じゃあ、あの娘のことは好きじゃないの」

「なに言ってんだよ。この際だからはっきり言っておくけど、アリステラもマチルダもよく聞いておけよ。俺は、雪乃以外とは結婚しないし、雪乃以外と誰とも肉体関係を持たない。けれど、別に雪乃以外からの誰かの好意を一々否定しないし、受け入れる気もないだけだ。だからといって、好意を向けられた相手に嫌な事はしないし、逆に此方もそれなりの誠意を持って接しようとは思ってる。大体、人として俺は、アリステラやマチルダの事を尊敬も感謝もしている。寧ろ好意的にさえ思ってる」


 ちゃんと伝わるように、気持ちを込めて、ゆっくりと話した。

 なのに、アリステラやマチルダの反応が思っていたのとは違っていた。


「良かった、です」

「ええ、拒否されるとばかり思っていましたから」


 あれ、人の話をちゃんと聞いてましたか。

 なんか、勘違いしてませんか。


 俺は目頭を抑えて、ため息をついた。



 ◇


 その日の深夜。計画通り、一番影響力のあるお貴族様の屋敷へ向かった。そして、雪乃達は最大手の奴隷商を襲撃する手筈になっていた。


 目当ての屋敷は宮殿のすぐ側にあった。そばとはいっても宮殿の敷地は広大だし、歩けば二、三十分はかかると思う。


 いつものように門を強引に破壊し、敷地の中へ足を踏み入れる。

 すぐに警備の私兵が飛び出してくるが、具現化した炎と氷の剣を持つ俺に隙はない。一人一人を一刀で斬り伏せ、屋敷の中に押し入る。


 少し進んだ先で全方位から襲われるが、具現化した剣を伸ばし、そのままくるっと体を回して相手の体を上下に断つ。


「馬鹿か。具現化させた剣が伸びないと思ったか」


 ちなみに槍にも形状を変えられるが、あいつと被るので敢えてしない。

 そんな事を思いながら進んでいると、今夜のお貴族様は気概があるらしく、大勢の騎士を伴い待ち構えていた。


「賊如きが調子に乗りおって。我が剣で成敗してくれるわ!」


 中年過ぎのガタイの良いお貴族様はそう叫ぶと、周りにいた騎士たちが一斉に襲い掛かってきた。


「まずはお前じゃないんかい」


 少しがっかりしたものの。本日最大の見せ場だと思い、無駄に過剰に華麗に美しく、映えよく戦うことにした。


 正面の一人を姿勢を低くしてすれ違い様に炎の剣で横に払い、くるっと体を斜めに回して隣の騎士を氷の剣で斬り払う。後は無駄に前や後ろ、右に左へと、自在に宙を跳んで騎士を次々と斬り伏せた。

 あれだけ勇ましかったお貴族様は、逆に俺の勇姿に慄き、腰を抜かして尻をついていた。


「カツアゲだ。金も、命も全て、差し出しな」


 そう言って、お貴族様の首を刎ねた。

 血を払うように両手の剣を振るい剣を消す。

 そして、屋敷の中を物色するが金目の物がほとんど残っていなかった。おそらく、妻子に持たせたのだろう。回収し損ねた俺はやや肩を落としながら屋敷を出た。


「はぁ、あの年増に俺の金が……」


 そう嘆きながら、女王配下の騎士達とすれ違う。

 気落ちした俺はさっさと宿屋へ転移した。

気に入ってもらえたならば評価や感想。または誤字などお気軽にお願いします!

 読んでいただいたたくさん方、本当にありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ