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神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


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伝説の幕開け

この後、24時にも投稿します。

 この都で一番の宿屋。そこの最上級スイートルームで俺たちはくつろいでいた。


「本当に一人でやるの」

「ああ、一人でやる。そうじゃなきゃプレゼントにならないだろ」

「まあ、そうなんだけど心配だよ」

「俺には戦いの女神様の加護があるからな。大丈夫だって」


 そう言って微笑んだ後、雪乃にキスをした。


「もう、みんなの前で恥ずかしいよ」

「あははは、ごめんごめん」

「ねえ、あの炎の剣と氷の剣は何。あんなのいつ覚えたの」

「あれは、対とある最強男用に鍛錬している時に偶然得た技だ。なので、理由を聞かれてもさっぱりだからな」

「偶然って。そんなの偶然出来ることなんてないと思うけどなぁ」

「それが出来るのが、女神に愛された俺なんだよな」


 どう考えても、そうとしか考えられないので、素直な感想を述べた。


「まあ、頑張ってたし、女神様からのご褒美かもしれないね」

「そうそう。あ、話は変わるけどさ。雪乃達には頼みたいことがある」

「なに? 私達は戦闘には加わらないんでしょ」

「悪徳商会とか、裏社会の利権ごっそり手に入れるのはいいけど、任せる人がいないじゃん。そこで、王都に戻って誰か連れてきてくれないかな」

「ああ、そうだよね。うん、マチルダも転移魔法使えるようになったし、二人で連れてくるよ」


 え、マチルダって転移魔法覚えたの。なにそれ。


「私もあと少しで覚えられそうなんですが。今のところまだ視認できる程度の場所にしか転移できません」


 アリステラは肩を落として落ち込んでいるが十分凄い。


「いやいや、落ち込むことないって。ショート転移だって、この世界で使えるやつはいないからな。十分に凄いって」


 その言葉に感激したのか、アリステラが嬉しそうに目を細めて微笑んだ。

 その姿に俺はこう思う。やっぱりこいつは天然のあざとい女だな、と。


「しかし、小島なんだっけか。それがたくさんあるし、さらにそれが繋がってるのは凄いよな。そこにこんなに地図の上に標的マークがあるとうんざりするな」

「裏組織の方は私達が少し受け持つよ。そっちなら別に構わないでしょ」


 確かに。そっちは自分達の飯の種だしな。けどなぁ、なんか俺より派手に目立つような気がするんだよな。


「ライフル禁止ならいいぞ」

「駄目よ。あれはブランのアイデンティティなんだから」


 ほら見たことか。女怪盗に憧れすぎなんだよ。

 絶対に派手にやり過ぎるだろ、これは。


「まあ、でも仕方がないか。とてもじゃないが一人でやれないしな。わかった。雪乃頼んだよ」

「任せて! クールに美しく、颯爽と決めるから」


 やや不安になりながらも雪乃達に任せた。

 そして、この時の俺達には知る由もなかった。

 この世界で最も有名な惨劇。後に伝説となる『血の七日間』が幕を上げたことを。



 ◇


 深夜になる少し手前。下弦の月を見上げながら、昼に襲撃犯を仕掛けた貴族の屋敷に向けて歩いていた。その途中、人気のない雑踏で足を止める。


「アレーーーーース!」


 俺をぶち倒した男の名を叫ぶと、ゆっくりと前の暗闇からその姿を現す。


「俺を呼んでどうした。また、ぶちのめされたいのか」


 先日のように槍を肩に乗せて、人をおちょくるように笑って立っていた。


「それはまたの機会だ。まあ、俺がお前をぶちのめすんだけどな」


 互いに歩み寄ると額をぶつけ合い、睨み合う。


「ああん。身の程を知れ、小僧」

「テメェもな。で、見てたんだろ。なら、説明しなくても分かるよな」

「ああ、相変わらずの馬鹿だよな。態々、めんどう事に首突っ込んでよ」

「そこまで知ってるなら話は早い。この国に干渉している国の王。そいつの首を取ってこい」


 その言葉に怒りを覚えたのか、アレースの額を押し当てる力が増す。


「あん、なんで神である俺がそんな事をしなきゃならないんだ。お前が自分でやれ」

「神なら、悪党に罰を与えやがれ。それにだ。やってくれたなら、もっと強くなって何度でも何度でも、ぶちのめしてやんよ」

「ほう、それは面白い」


 アレスは額を離し、俺を真っ直ぐに見た。


「今回だけ、引き受けてやる。だが勘違いすんな。ぶちのめすのは、俺だ」


 アレスはそう言って踵を返すと、また闇の中に消えていった。

 そんなアレスを見えなくなるまで見送ると、俺はまた歩き始めた。



 いくつかの島が並ぶ中の中央付近にある島。

 その島に屋敷を構えている貴族の邸宅に押し入る。


「カツアゲに来ました。命も金も全て差し出しなっ!」


 右手には炎の剣。左手には氷の剣を具現化させてフードを深く被り、その外套をはためかせて、立ち塞がる敵を次々と斬り裂いていく。もちろん、無駄に飛んだら跳ねたりすることは忘れない。

 逃げる侍女達や戦えない使用人達はちゃんと見逃し、向かってくる者だけを倒す。


 そして護衛三名を連れて逃げる途中のお貴族様を見つけて口角をあげる。


「逃げられるとでも思ったか」


 間抜けにも大きな鞄を両手で抱えたお貴族様を背中から袈裟斬りする。勿論、スタイリッシュに護衛三名を斬り倒す。


「しかし、奥さん子供を見捨てて逃げるかね。まったくもってあきれるぜ」


 そんな事を言いながらお貴族様の鞄をちゃんと回収して、さらに屋敷の中を物色した。

 それらが終わり、屋敷の外に出ると、ちょうど女王様の私兵がやってきた。


 俺は視線だけ交わし、そのまま屋敷の門を出ると、昼に襲撃した傭兵の拠点を目指す。


「ついてなかったな」


 付く方を間違って御愁傷様、といってあっさり壊滅させた。勿論、此処でもお金などはきっちり回収するし、きちんと火を放つ。


 中々の収穫と手際の良さに自画自賛しながら、ゆっくりと夜の街を宿屋へ向かって歩く。


「今ならマジでアレースに勝てるんじゃね。いや、まだ無理だな。もっと鍛え上げないと奴には届かない。しかし、あいつ失敗してねぇよな。まあ、失敗してたら馬鹿にして笑い飛ばしてやれば良いだけだからな。逆にそっちの方がおいしいかもな」


 夜空に浮かぶ、美しい下弦の月を見上げながら、そうつぶやいた。

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