表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と歩む悪党街道  作者: そらまめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/85

バカンスへの準備

 俺は馬車を取り扱っている中で一番大きな商会を訪れていた。

 色々なタイプの馬車が並んでいて、車屋さんに行っているようで見ているだけで楽しくなる。

 その中でも派手な装飾のない大きな箱型の馬車に目がいった。


「シンプルイズベスト。やや丸びを帯びた形も上品で美しい」

「ほう、お客様。お若いのに目が高い」


 老紳士がそう言って話しかけてきた。


「こちらは旅の道中の快適さを追求したタイプです。馬車の揺れも、中のシートの快適さも、全て兼ね揃えた逸品です。ただ、それだけじゃありません。なんとこの馬車は室内で寝泊まり可能。シートがスライドしベッドに早変わり。また、室内の温度を一定に保つ優れものであります!

 ただ、お値段が高く。その、」

「要は高すぎて売れないってことだな」

「仰る通りでございます。この老骨の最後の理想の馬車として制作しましたが」


 話の途中で老紳士はがっくりと肩を落とした。


「まあ、あるあるだよな。で、いくらなんだ」

「え、はい。金貨650枚です。馬二頭付きですと750枚ですな」


 おいおい、宿屋のスィートルームの永年使用権より高いじゃないか。まあ、判断出来るほどこの世界の物価のこと知らないけどな。


「よし、買った」

「そうですよね。あきらめ、えっ、今なんと!」

「買うよ、爺さん。それも馬付きでな」

「え、はいっ、ありがとうございます!」

「それで馬車の管理とかメンテナンスとか、保管場所ていうのがよくわかってないんだよ。色々と教えてくれると助かるんだが」


 商談室で教えてくれるというので俺は老紳士の後をついて行った。


「あの、爺さん。こんなにお菓子とかお茶とか要らないんだが」

「いえいえ。これは私の気持ちです。なんなら持ち帰っていただいても結構ですので」


 これが俗にいう菓子折りってやつか。まあ、アンヌが喜ぶだろうからいいか。


「馬車のメンテナンスはこちらで格安で対応致します。というか、工賃なしでやらせていただきます」

「いやいや、それは悪いって。少しは取ってくれよ。じゃないとメンテに出しづらいからさ」

「左様でございますか。まずは登録だのの書類関係はこちらで代行いたします。手数料はいただきませんのでご安心ください。そして馬車の保管場所が無ければ当商会で預かることもできます。もちろん、馬も預かれますが、なにせ生き物なので死んでも保証できません」

「そうだよな。ちなみに、馬車を轢く馬には乗れるのか」

「軍馬なら問題なく乗れるでしょうが、少しお高くなります」


 ほほう、それはいいな。まあ、馬には乗れんが。


「よし、軍馬で頼む。多少金が掛かってもいいから。美しくて丈夫で元気な馬にしてくれ」

「かしこまりました。この馬車三頭立てにも出来ますがどういたしますか。軍馬であればパワー的にそちらの方がよろしいと思うのですが」

「三頭立てにしよう。ではそんな感じで頼む」

「かしこまりました。では、ご用意が出来ましたらご連絡差し上げます」


 俺は爺さんに連絡先を教え、金貨千枚入った皮袋を渡した。

 何のことはない。金貨を数えるのがめんどうだったのと、多めに払えばよくしてくれるかな、という淡い期待からだ。


 そして満足した買い物を終えた俺は屋敷に戻った。



「うーん。何処に馬車をおこうか。馬房も必要なんだよな」


 そんな事を考えながら庭を眺めていると、俺を見つけたマチルダが中から出てきた。


「悠哉様、如何なさいましたか」

「なあ、今屋敷って確かパンパンなんだよな。あ、住んでる人のことな」

「そうですね。割と手狭にはなりましたね」

「よし、ここは執務室と子供達の学校にして。新しい屋敷を買おう」


 思い立ったら吉日。俺はマチルダの手を引いて不動産屋に向かった。そして、以前世話になったオーナーに要望を伝える。すぐ住めて、今より大きい、馬房も備えられる、広い敷地の屋敷。そんな無茶なオーダーにも関わらず、二つ返事で探してくれた。



 そしてその夜。ノワール&ブランの格好をした、俺と雪乃は購入予定の屋敷の前にいた。

 その理由なのだが、浄化と除霊だ。


「幽霊が出るとは思えない程、建物は綺麗だよな。庭もちゃんと手入れされてるし」

「夜だけなんでしょ、出るの」

「ああ、三階の当主用の大部屋と地下。その二箇所だな」

「ふーん、これは呪いね。怨霊がいっぱいいるわ」

「え、視えるの」


 やばい、膝が笑ってる。


「これでも女神だからね。じゃあ、屋敷の中に入ろうか」


 ブランに手を引かれながら屋敷の中に入った。


「中も案外きれいね。ここなら住んでもいいかも」

「まじすか。じゃあ、前の屋敷はそのまま住まわせて、こっちには俺達が引越す感じ?」

「それもいいわね。大きなお風呂もお願いね、ダーリン」

「任せておけ。そこで二人で一緒にだよな、もちろん二人で!」

「そう、二人で」


 なんだこの漲る気力は!


「じゃあ、さっさと浄化しようか」


 ブランは左手を掲げ、ゆっくりと弧を描く。

 すると、光がシャワーのように降りそそぐ。


「ん、厄介ね。生と死を司る私に抗うとはいい度胸ね。輪廻転生すら許さないから覚悟なさい!」


 ブランはもう一度弧を描くと、腕を前に振りおろした。

 一層強い輝きに包まれ、光で目が眩む。

 手で目を隠し、薄っすらと様子をみる。


「グワァーーーー!」

「ギャァーーーー!」


 とても人が出したとは思えない叫び、いや、断末魔が聞こえた。


「完了よ」


 なんかあっけなく終わって拍子抜けした。


「まさか戦闘するとでも思ってたの、ダーリン」


 揶揄うように微笑んだ雪乃に少しの間見惚れていると、彼女は頬にキスをした。


「いつまでも好きでいてね。大好きよ」


 俺は雪乃を抱き寄せた。

 まだ浄化の光は降りそそいでいる。キラキラと輝いた光の中で、長い口づけをかわした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ