シャルル王
夜にも一時間おきに五話投稿します。
「陛下。公爵様が暗殺され、領土拡大派は混乱し、まとまりを欠けております。この隙に拡大派を切り崩し、弱体化を狙うのがよろしいかと。もちろん、今まで好き勝手に公金の横領、不正賄賂などを行ってきた貴族を一掃するのも手かと」
執務机を挟み、前に立っている政務次官が私に進言する。
「それだけで足りるか。あの宰相をそのままにしていてはあまり効果はないと思うが」
「先日の公爵邸襲撃の際に宰相閣下の不正の証拠は掴んでおります。あとはタイミングだけかと」
穏健派、または王族派と呼ばれる派閥の重鎮でもある政務次官は自信ありげに答えた。
彼は叔父でもある公爵から、私の身を守ってくれた忠臣だ。こうして今まで生きてこられたのも彼の献身があってこそだった。
「では任せる。上手いことやってくれ」
「かしこまりました、陛下。ところで、あの陛下の友人は欲のない男ですな。スラム街の再開発を私費で行うなど疑ってありましたが、いやいや中々の御仁。是非、陛下の家臣の一席に加えたいものです」
彼も王城襲撃の件を知っているはずなのにな。
「それは無理だな。何より、私の手には余る」
「では、いつの日か陛下の喉元にナイフ突き立てられるやもしれませんぞ」
「あはははは、そうであればあの時すでに私は死んでいる。そんな事を一々危惧していたら彼とは付き合いきれんぞ。まあ、私の娘が幼くなければ、彼との婚姻関係でも結んで更なる関係強化も可能であっただろうがな」
まったく要らぬ心配だ。
それに、ノワール殿に敵う者などおらんだろうに。軍勢を差し向けたところで、こちらが被害を大きくするだけで、彼等は簡単に逃げのびる。
「左様ですか。では、陛下の妹君はいかがですか」
「容姿、性格的には問題ないが。あの方はかなり一途な性格だぞ。婚約者であるブラン様以外に興味なそうだしな。それにあのアリステラがこんなに短いスカートを履いても、一向に見向きもしない。それどころか、頭がおかしくなったんじゃないかと心配するほどだぞ。本当に愉快な方だ」
私を席を立って、その短さを笑いながら彼に教えた。
「あの剣一筋の堅物がですか。なんとも困惑しますな」
私は席に座り、机に両肘をついて手を顔の前で組んだ。
「あの方には手だし無用だ。利用しようとしたり、敵対すれば確実に命はない、と思え。いや、叔父上のように無様に死ぬと肝に銘じておけ。私は信頼する者たちが意味もなく死ぬのは我慢ならんからな。くれぐれも間違いを犯すなよ」
私はそう彼に釘を刺した。
頼むから選択を間違えないでくれと、祈る気持ちで退室する彼の背中を眺め、見送った。
◇
部屋でみんなで食事した後、俺はテーブルに地図を広げてため息をついていた。
その隣ではロリ姫アンヌが一生懸命に俺のお酒をグラスに注ごうとしている。
そんな健気な姿を見て、そっと彼女の頭を撫でた。
「ありがとう。アンヌが注いでくれたお酒が一番美味しいよ」
口をニッとし、嬉しそうに微笑むアンヌを膝の上に乗せて、また彼女の頭を撫でた。
「これはなに?」
地図を指差し、彼女は俺に聞いてきた。
「これは地図だよ。この世界、この国のある大陸の地図だ。そしてここが俺達が今住んでいるところだよ」
王都を指差して、彼女に教えた。
「大きいね。この青いのはなに?」
「うん、大きいね。で、ここは海っていうんだ。大きな水溜りで、こう波が押し寄せては引いて。そして何より、お水がしょっぱいんだぞ」
手振り身振りを交えてアンヌに海を教えた。
「楽しそう!」
「ああ、楽しいぞ。海で泳いだり、浜辺でボール遊びしたり、バーベキューしたりな。ただ、気をつけなきゃならないのは日焼けし過ぎると肌が痛くなることだ。だから、遊びすぎないで日陰で休むことも必要なんだぞ」
「おおぉ。行きたい! お兄ちゃん、アンヌ、海に行きたいよ!」
「よし、海に行こうか!」
俺のその言葉に雪乃、アリステラ、マチルダが一斉に反応してこちらを見た。
「もうそろそろ夏だし、バカンスもいいわね」
「海ですかぁ。私も行ったことありませんので楽しみですね」
「はい、楽しみです。私も水着を着るために少しダイエットしなければ」
そのマチルダのダイエット、という言葉に雪乃とアリステラが、ハッとした表情を浮かべた。
「いい。今から水着を美しく着るために美しい身体づくりをしないとダメよ」
三人は頭を突き合わせて何やら相談していた。
それが終わると雪乃が代表して俺に話しかけてきた。
「二週間後。二週間で美しいプロポーションを実現するわ。だから、二週間後にバカンスに行きましょう!」
「あ、別にそんな気合い入れなくてもいいんじゃないか。充分に雪乃は綺麗でスタイルいいし」
「駄目よ。完璧な姿を悠哉くんに見せたいの」
ああそっか。と言って口を閉ざした。どうせ何を言っても俺の意見は通らないの知ってるし。
海か。最後に行ったのは高校生の時だな。
懐かしいな。浜辺から花火を見て、そして初めてのキスをした。ほんと、良い思い出だ。
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