きっかけ
明日は昼と夜に三話投稿します。
公爵邸襲撃の後、俺は王様とお茶したが、その話は機会があれば話そうと思う。
それよりも雪乃との昨夜の激しい攻防のせいで、やや寝不足だ。惰眠を貪りたいと二度寝を試みるが目を真っ赤にしたアリステラに叩き起こされた。
その時にエッチい下着が見えたのは秘密だ。
そのせいで俺は雪乃とソファでイチャイチャしていた。していたのだが、アリステラが何故か部屋を出て行かずに残っている。
そんなアリステラにお構いなく続けているのだが、妙な感覚に襲われ、いつもより興奮した。
「とまぁ、そんな夢を見たんだよな。ほんと、デリカシー無さすぎてドン引きだよ」
フォークに刺したウィンナーを行儀悪く揺らしながら夢の話をした。
「勝手に夢に出しておいて、私を悪者にしないでください!」
ドン! と、乱暴に水を置かれたが器用なことに水が溢れることはなかった。
「いやいや、アリステラ。これはお前の怨念のせいだと思うんだよ。実際似たような話が俺の国ではあるしな」
パクッとウィンナーを齧った。
「怨念って。なんで私がそのような得体の知れないものを放つ必要があるんですか。失礼にも程があります!」
「うーん、それは興味深いわね」
「だろ。だって真っ赤な目でじっとこちらを見てるんだぜ。ゾッとするよな」
「でも、いつもより興奮したんでしょ」
「そうなんだよ。そこが問題なんだよなぁ。そんな趣味ないのによ」
「お二人とも、私を無視しないで勝手に事実化しないでください!」
とうとうテーブルドンを両手で決めてきたアリステラにジト目を向けた。
「最近怒りっぽいしな。男と上手くいってないんだろ。その八つ当たりが幸せな俺達に向けられているんじゃないかと、俺は結論付けてみた」
「アリス、彼氏いないわよ」
「えっええええええぇー!」
雪乃の驚きの暴露に思わず椅子ごと後ろにひっくり返りそうになる。
どうにか耐えて一旦深呼吸をしてみた。
「じゃあなんで色気づいてんの。スカート短くしたり、エッチい下着履いたり、彼氏の為じゃないのかよ」
何故かアリステラは顔を赤らめてスカートを両手で下に伸ばしていた。
「はぁ、ここまで鈍感な人だとは思わなかった」
「鈍感? 俺が? なんで、なにを?」
雪乃はあきれたように息を吐いた。
「知らない。私は愛の女神だからね。権能的にあなたに向けられた感情を否定も拒否することも出来ないわ」
なんか深い、かっこいいことを言ってるけど意味がさっぱりわからない。
とうとう雪乃まで怨霊に取り憑かれたのか。
「ご馳走様。ほら、アリス。出掛けるわよ」
出て行く時に目も向けられず、挨拶もなく、なぜか俺一人残された。
くっ、なんなんだよ、この仕打ちはよ!
◇
「雪乃様、申し訳ありません」
「謝ることはないわ。人を好きになるのに誰かの許可なんて必要ないのだから」
肩を落とすアリスにほんの少しだけ同情する。
他人の婚約者を好きになる。真面目なアリスなら許しがたい感情なのかもしれない。
けれど、そんな気持ちのせいで精神的なバランスが崩れているのは明らかだ。
「私はやはりお側にいない方がいいと思います。雪乃様から悠哉様に私が去ることを」
アリスの唇に人差し指を軽くのせて、私はアリスの話を止めた。
「私はね。最初は浮気なんて許さないって思ってたの。けれど、私以外の誰かが彼を本気で好きになって、彼がそれを受け入れるのならば、それは仕方がないと思う。思ってしまうの。真摯な愛を、私は否定なんて出来ないわ」
そう、私に向けられた感情なら否定も拒否もできる。けれど、そうではないから。
「一度、きちんと彼に想いを伝えてごらんなさい。私たちのもとを離れるのか、傍にいるのかを決めるのは、その後でいいんじゃないかしら」
「私はこの気持ちを伝えても、本当によろしいのでしょうか」
「ええ。きちんと彼に伝えなさい。モタモタしてるとマチルダに先を越されるわよ」
なにを驚いてるの。本当にあなたも、彼と同類なんだから。困ったものね。
「あちらには最強のオプションが付いてるわよ。かわいいロリっ子がね」
強敵よ。と言って私は笑った。
「ほら、さっさとシルクを買いに行くわよ」
その布地で彼と私のパジャマをつくるの。もちろん色違いで。
彼、ガウンはお気に召さないみたいだしね。
私は彼がパジャマに袖を通している姿を想像して、思わず微笑む。きっと、素敵だと。
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