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第3章9話 カインの長い一日

 王都カナンの五番区、ブラックガーデンの屋敷ほどの広さはないが、豪華絢爛をそのまま表したような邸宅があった。三人の召使と一切の生活の不自由を与えないであろう広々とした屋敷は、たった二人に居住者のために存在している。


 家主の名前はカミュ・カリギリ。三人の特位騎士の一角にして、『妖艶』の名を与えられた超凡の剣士だ。


 彼女の存在は、天は二物を与えずという言葉を否定するべく生まれたようにも思える。

 卓越した剣の腕。ソニレ王国の上級貴族の第一子という家柄。すれ違えば誰もが振り返るようなその美貌とスタイル。

 天に愛されていることを自覚して生きてきたカミュは、特位騎士として何万という命を救ってきた紛れもない英傑であった。


 テルとニアよりも先に王都に到着していたカイン・スタイナーは、そんな国の英雄の屋敷の修練場で、英雄本人を前にして酷い顔色をしていた。


「もうほんとに、勘弁してくれよぉ……」


 押し堪えたような声がカインに向けられていると、薄氷のような長い青髪がさらりと揺れる。


「もうなに? お前を弟子に取って一週間、ほんとにお前はダメダメだったよ。剣も一流には程遠く、かなり性格が悪い。挙句の果てには、華がない。何と言っても華やかさに欠ける」


「……っ」 


 カインへの評価に異論はない。自分自身、今の剣に満足を覚えることもなく、目的のために誰かを蹴落とすようなこともした。しかし、カインが今にも泣きそうなほど屈辱的な思いをしているのは、それらの指摘に心を痛めたからではないのだ。


「だから、僕は好意で足りない分を補ってやろうと思ったのに、——————お前、女装似合わなすぎだろッ!」


 そう指をさして叫んだカミュは、堰を切ったように笑い始める。

 女性服(それもフリルやリボンのついた飛び切りかわいい少女趣味)を着せられ、顔にべったりと化粧を塗られたカインは、制御の利かない体の震えを感じていた。

 当然、自分の意思でこの格好をしたわけではない。しかし、着せられた明確な理由も見つからず、つい今しがた、カミュが口にしていた屁理屈に(かこつ)けた、カインへの修行という(てい)のいじめにしか思えない。



 ソニレ王国の騎士には、師弟制度が存在する。

 若手の騎士の育成に力を入れるべく、準特位騎士以上の者に弟子を取ることを促す国の方策である。弟子を多くとった騎士への支援は手厚く、家賃や色々な経費の援助を受けることができるのだが、細かいことは割愛する。


 そして、王都に馳せ参じたカインは、その制度を利用してカミュに弟子入りをしていた。目的はリベリオの元にいたときと変わらず、『特位騎士の唯一にして一番弟子』という箔をつけるためである。


 当然、女装をするためではない。



「ほっんと、似合わないなあ、ムダ毛の処理ぐらい怠るなよ! あっははははっははは!!!」


「こんなモン、着てられるかぁっ!」


 堪忍袋の緒が切れたカインは、ヘッドドレスを地面に叩きつける。

 なぜこんな可愛らしいフリフリの服を着せられて、挙句には罵倒されなくてはいけないのか。過去にテルに女性服を着せて面白がっていた罰が当たったのかもしれない。


「僕の大事なお召し物だぞ! 粗末に扱うな!」


「これのどこが鍛錬だって言うんですかっ!?」


 いくら最近門下に入ったカインとて、遊び道具になるため、易々と女装を受け入れることはない。

 数時間前、カミュは豊満な胸を張って、「僕が考えた、お前の強くなる最短の道だ。嫌なら別にやらなくてもいい」などと断言され、不承不承で臨んだのだ。だというのに、現状、辱めを受けているだけで、一体どこに「強くなる最短の道」があるのか見当もつかない。


 カミュは、カインの怒りを受けると、やや間を開けて、意味ありげな笑みを作る。


「ふぅん、わからないのか。ならいい。それなら、それも課題の一環だ。その恰好の意味を理解できるまで、当分はその姿で過ごせ」


 ほんとに意味があるのかよ。

 そんな悪態を内心で吐き出すと、カミュとカインは示し合わせたように同時に木刀を手にした。

 



 鋭く、速く、ほれぼれするほど美しい剣閃が、雨のようにカインを襲う。およそ一週間、毎日カミュの剣を受けているカインだったが、たった一度だって、その剣筋を捉えられたことはない。


「くっ……」


 一度目の攻撃に、防御を間に合わせると、次の攻撃は顕著にぼろが出て、三度目はもろに木刀を食らう。

 立ち合いと呼ぶにはあまりにも一方的だ。


「ほらほら、その程度か?」


 挑発とともに、カミュが攻撃の手を休めた。腹が立つならやりかえしてみろ、そう言われている気がして木刀を握る手に力が入る。

 しかし、結果は悲惨なありさまだった。立ち合いはカミュの手のひらで踊らされているようで、到底攻撃が届くビジョンが一瞬たりとも見えない。風魔法ものらりくらりと躱される。

 

「う“ぐっ」


 気づけば、カインの膝は地面についていた。呼吸はしているが酸素を取り込めている気がしない。ちらりとカミュに目をやると、平常時となにも変わらないカミュがそこにいる。歯が立つ云々の次元ではない。


「……わかりましたよ」


「ん? なにを?」


 カインは痛みを堪えて平気な振りをして立ち上がると、泥のついた少女服を軽く見まわす。

 今のカインは、自分の恰好を恥ずかしがるどころではなく、惨敗を喫したことで冷静に思考が巡っている。


「この服、普段通りの動きが全然できなかった。……戦いはいつも完璧なコンディションで臨めるわけじゃない。だからそれに備え、不利を背負っての鍛錬をしたんですよね」


 カミュの真意を見出したカインは、一方的な打ち合いを思い出す。

 過剰に長い袖のせいで剣が扱いにくく、ヒールの靴のせいで踏ん張りが利かない。そんな劣勢は、本物の戦いの中でも想定しうるものだった。


 おふざけは過ぎるが、腐っても特位騎士。その視野の広さに感心して、この女装修行も理に叶っていると思い始めたところで、カミュの反応がおかしいことに気づく。


「……ぷ、ぷぷっ、ぶふぉっ! あーっはっはははっはっははは!」


「は?」


 先ほどは腹を抱えて笑っていたカミュだったが、今度は完全に崩れ落ち、地面を叩き涙を浮かべるほどの大笑いに、カインは意味がわからず茫然と立ち尽くす。


「お、お前バカすぎ! ていうか頭硬すぎ! たかが女装をそんなに考察しちゃって、まじめちゃんかよ、もっと単純に考えればいいのに!」


「笑われる意味がわからなすぎる……」


「だって僕の弟子なんだから、まずは恰好から弟子らしくしてもらおうってだけだってば」


「それは、つまり」


「女装にそれ以上も以下もあるわけないだろ! あはっはははっはははっはははっ!」


 ブチリ、と頭の中で何かがちぎれる音が鳴り響く。

 カインは身にまとっている洋服を、両腕で強引に引きちぎると、布切れになったそれを地面に叩きつけた。


「わああああっ!!!」


「こんなモン、着てられるかッ!」


「ああっ、よくも僕の大事な服を!」


「うるさい、知ったことか!」 


 そう叫ぶと、カインは風魔法で破った洋服をさらに切り刻む。木っ端みじんになった布切れは、吹き抜けていった風に全て吹き飛ばされていく。


「お、お前よくもやってくれたな!? 若い頃に着てた思い出の服なんだぞ!」


「知るか! 人に無理やり着せておいてよく言える!」


 それだけでなく、木刀で容赦なく滅多打ちにしておいて文句を言える立場ではないはずだ。しかし、頭に血の上っているカインは失念している。そもそもカミュはまともな会話が成り立つ相手ではない。


「ムっキイイィィィいいいぃぃっっ!!」


 カミュの奇声が敷地中に響き渡ったかと思えば、カミュは木刀を手にしている。


「この生意気なガキんちょが、お前みたいなやつは破門じゃあぁい!!」


「そんなの、認められるわけがないだろぉっ!」


 重なり合う怒号。どちらの主張もどこか的外れだったが、なにはともあれ、二度目の打ち合いが幕を切られた。

 カインのハンディキャップであった慣れない服装はすでになくなっており、怒りを纏った集中は、先ほどより動きに精細を持たせている。

 しかし、それでも相手は特位騎士。しかも先ほどよりも本気を出している。


 カインは風魔法を唸らせて、格上の攻撃に備える。

 不可視の刃、それさらに隠す半透明の刃、鞭のように不規則な軌道の刃、最後に隙を突くカインの剣。

 攻守共に応用のきく三重の構えは、怪物ドールとの戦いを経て編み出した新戦法であり、その完成度に少なからず自信があった。しかし、


「——————ッ!?」


「この期に及んでまだ手抜きか?」


 刹那、目の前に迫っているカミュの足裏が鳩尾にねじ込まれる。


 一瞬で風刃の壁を突破されたことへの衝撃と呼吸のできない痛み、そして、耳元で囁かれた言葉で思考が混濁し、意識が明滅する。辛うじて気絶を堪えたカインは、自分が地面に転がっていることを自覚した。


「あはっはははっ、身の程知らずのガキが調子に乗るなよぉ! ざーこざーこ!」


 視線を上げたさきには、鼻を高くし、指さしたカインを全力で嘲笑しているカミュだ。

 なんて大人げないのか。カミュのもとに誰一人弟子がいないこと、そしてカミュの弟子はやめておけと方々から言われた理由を痛いほど理解できたカイン。


 しかし、個人の好悪なんて関係ない。

 少しでも早く特位騎士になるためだったら、どんなことだって受け入れる。


 瞳を閉じればいつだって蘇る、決意の日。

 激しく燃え盛る大きな屋敷と、それを茫然と見るだけの自分、そしてそれを見下ろす兄。

 全てを奪われた、始まりの日。


「……簡単に、折れてたまるか」


 古びた怒りに薪をくべたカインが痛みを忘れて再び立ち会がると、カミュを睨む。しかし、そのとき耳に届いたのは、あまりに暢気で優しい声だ。


「あら、お二人とも、お疲れ様です」


 そこに現れたのは、栗色の髪の女性シーラだ。瞳は細いがそれ以上に眉が長く、美形と呼べる。田舎的で穏やかな雰囲気は、この大都会で異質な安心感を相手に与える。しかし、そんな女性がカミュの妻であるという事実が、いまだに衝撃だった。


 カインもカミュも突然訪れたシーラに、あっけに取られる。ややあってため息をついたのはカインだった。それもそのはず、直前まで火花を散らしていたカミュの目には、もうシーラしか映っていない。


「おおぉぉ! マイ、ハニー! どうしたんだい、わざわざこんな殺風景でつまらない場所まで」


「カミュさんとカインくんは上手くやっているか心配になりまして」


 殺伐とした雰囲気が完全に洗い流されたのか、それともシーラが空気を読むのが不得手なのか、カインとカミュが僅かに視線を交わす。

 その問いで、カミュは不自然に硬直した。カインはそれを自分から言うように催促しているように思え、「今、追い出されるかどうかの瀬戸際です」と口にしようとする。しかし、なぜか口が開かない。


「ん、んん……!?」


 口が縫い付けられたようになって、間抜けな声を上げるカイン。シーラはそれを不思議そうに見ているが、隠すようにカミュが一歩前に立った。


「あ、ああ! もちろんだとも! なかなか気骨のある若者だ、こっちも指導に身が入るというものだとも!」


 先ほどとは真逆の発言に「ん!?」と喉を鳴らすカイン。


「そうだったのですね、よかったです。カミュさんは人付き合いがあまりうまくないので、色々と案じていましたが、全て杞憂だったようです」


「こ、これも君がそばにいてくれたから、成長できたのさ」


「そんな、恐縮ですわ」


 仲睦まじく笑いあう二人。いまだ口が開かないカインは置いてけぼりだ。


「……でも、安心しました。どんな理由があろうと、職務を怠慢しようものなら離婚しなくてはならにのですから」


「ん?」


「ああ。も、もちろん承知しているとも」


「ええ、あなたがいくら私に迷惑を掛けようと、私はよいのです。しかし、あなたが他の者に迷惑をかけては、私の父の顔に泥を塗ることになってしまいます」


「そ、その懸念は現実になりそうにないね!」


 仮定の話で気持ちが沈んだシーラの視線がどんどん落ちていく。そんな妻を励ますカミュだったが、顔から冷たい汗がとめどなく流れている。


「あまり長くお二人の邪魔をしてしまってはいけませんね、これで失礼します」


 シーラが立ち去ると、いつの間にかカインの口が開くようになっていた。しかし、特に言を発することなく、カミュの背中を眺めていた。


「我が唯一にして一番の弟子カインくん」


「はあ」


「気が変わったので、先ほどの発言は撤回だ。明日も鍛錬に励むんだぞ」


「……はあ」


「そして、くれぐれも余計なことは口にしないように」


「…………はあ」


 カインは、振り向くことなく去ったカミュを見送ると、大きくため息を吐いた。


 師匠というのは皆、こういうものなのだろうか。


 カミュというあらゆる意味で常軌を逸した人物は言わずもがな。それと比べるとリベリオはずっとまともに思えるが、お世辞でもリベリオは「ちゃんとした大人」とは呼べなかった。

 自分はそういう星のもとに生まれたのかもしれない。


「まあいいや、風呂に行こう」


 疲れた心と化粧を癒すため、カインはとぼとぼした足取りで、修練場を後にした。




 ――・――・――・――




「ふぅ、ううぅぅ……」


 並々だったお湯に体を沈めるカインは、無意識に発せられたおじさん臭いうめき声に少しだけ冷ややかな気持ちになるも、心地良さに全てが押し流がされていくのを感じた。


 女装を強いられたカインは、当然と言わんばかりに化粧を施された。道化が如く厚塗りの化粧は、すべて落とすのにいささか時間を要した。


「思ったより、疲れたなあ」


 それは今日一日のことだけではなかった。

 王都にきて、カミュの弟子になって一週間が経った。鞍替えという言葉が適切かわからないが、リベリオへの後ろめたさが少なからずあった。


 それだけじゃない。わざわざテルたちと別行動を選らんだことも、すべての行動原理の裏に私欲しかないことが、今更ながらに居心地の悪さを覚えている。


「間違いじゃ、ないはずだよな……」


 自分に言い聞かせるように呟くと、その声が逆に自分を追い詰めるように反響する。



 ——————この期に及んでまだ手抜きか?


 

 先ほどのカミュの言葉が脳裏を過り、カインは頭を振る。

 

 断じて手抜きなんてしていない。持てる剣と風魔法の全てを以て臨んでいた。本気だった。殺意さえもあったかもしれない。

 そう念じて、カミュのおかしな指摘を忘れようとする反面、頭の中のほんの片隅で、冷静な疑問を掲げる自分もいる。


 |自分の持てる全てではなかった《・・・・・・・・・・・・・・》ことを、どうしてカミュは知っていたのだろうか。


「思った以上にしんどいなあ」


「なんだ、弱音か? 君の方から辞めてもらう分には、こちらとしても歓迎だけど」


「ひぇ!?」


 予期せぬ背後からの声にカインが悲鳴を上げて振り返る。

 すると、そこに立っていたのは一糸(まと)わぬ姿で、平然とした顔を向けるカミュだ。


「な、なんでここに!?」


 カミュは一切の羞恥を感じさせない表情で、どこを隠そうという意思すらなく、豊かな胸をあるがままにさせている。

 カインは一瞬の思考停止の後、すぐに背を向けた。もしかしたら、自分が女風呂に入ってしまったのではないかと不安に駆られるも、すぐに違うと断じる。

 そんな可能性を考慮するよりも、あのカミュがまた変なことを仕出かしたと考えた方がずっと有り得る話だ。


 カミュは湯舟に入るが、体を浸けようとはせず立ったままカインの背を見下ろしている。


「これから会議があるんだよ。それもとーっても重要な会議が。運動してそのまま行けるわけがないだろ」


「そうじゃなくて、何で男風呂に入ってるんだって聞いてるんです!」


 こちらを諭すようなカミュの言い草に反論するカイン。


「はあ?」


 しかし、返ってきたのは、怒り混じりの疑問の声だ。

 

「お前、物事を思い込みで判断することをやめるんだな」


「なにを、言っ……て…………」


 背を向けていたが、カミュの意味ありげな言葉で、思わず振り返る。すると、カミュはすぐ目の前に迫っていた。

 多感で女性慣れをしていなカインだったが、はっきりとそこにあったモノを目にしてしまい、思考が完全に停止した。


「いつ僕が女だなんて言った?」


 目の前にあるのは、カミュの平均よりも大きいと思われる女性的な乳房。そして、男性を象徴する、ソレである。


「僕こそは、男性的逞しさと女性的しなやかさ、どちらの美しさも持ち合わせる唯一無二の存在——————、両性具有だぁっ!」


 何故か勝ち誇った表情のカミュ。口を半開きにして理解不能状態のカインなど気にしていないように続ける。 


「ふっ、見惚れるのも無理はない。僕の魅力は全人類に行き届く。いきなり裸体など、ガキんちょには刺激が強すぎるのだろう」


 そこまで言うと、満足そうに湯船に浸かる。水面が揺れると、溢れた分のお湯が小気味の良い音とともに流れていく。


「……それともあれか、女だと思ってた相手が自分より遥かに立派な()を持っていることで、お前の小さなプライドを傷つけてしまったかい?」


「……は、ははは、まさか」


 肩に手を置いて顔を覗き込むカミュを、拒むように顔を逸らしたカイン。疲れを取るための入浴だったのに、新たな心的疲労を蓄積してしまう。


「照れてるんじゃあ、一人前は程遠いな」


「……そういえば、さっきの話ですけど」


 この上なく楽しそうな顔のカミュは、この調子でいけば自分がのぼせ上がるまで解放してくれないだろうと悟り、強引に話題を変える。


「会議ってなんの会議なんですか?」


「ん? ああ、別によくあるクソ怠くってかったるい会議だよ。僕以外の特位とか貴族がくるんだ。ああ、めんどくさいめんどくさい」


 天井を仰ぎ、愚痴をこぼし始めるカミュの扱いやすさに、胸をなでおろすカイン。


「ああ、でも今日はシャナレアちゃんの招集だったな」


「え」


「あの人、かなりの美人だけど、男の趣味がなあ」


「カミュさん」


「ん?」


 間の抜けた顔のカミュが頭を傾げる。カインはそんな現師匠を、澄んだ碧眼でじっと見据える。

 おそらく、この提案をしたら、カミュは大層嫌そうな顔をするのだろう。しかし、弟子入りを願ったときも同じだったことを思い出し、躊躇いは消える。


 それが目標への近道ならば、強引にでも掴むのだ。他の選択肢はない。


「俺も、その会議に連れて行ってください」


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