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「何をしようか…」忍座は深くため息をついた。することが全くない。
街中を歩いていると気配を感じた。殺気だ。素早くその場から飛びのくと剣が投げられてきた。運よく誰一人けが人は出なかったがそれよりいったい誰が投げたのかを彼は知りたかった。
剣を拾うとすぐにその場を去った。何かに追われている気がする。町から遠い原っぱまで来ると後ろを水に訊いた。「おまえは誰だ、何をしに来た」だが、返事はない。気配は完全に感じ取ることができる。
「そこにいるのはわかっている。さっさと出てこい」すると、地面から人が現れた。「!」この人間は人間じゃない。体全体が影だ。まるで影から生まれた化け物のようなものだ。
また剣を飛ばしてきた。どこから現れるのかがわからない。出てきた瞬間は持っていなかった。なのに今は持っている。意味が分からない。
「お前は何者だ」警戒しつつ、忍座は訊く。「…」黒い生き物は答えない。
日本語が離せないのか? 「Who are you?」英語で訊いても答えなかった。ただただこっちにめがけて歩いてきているだけだ。「会話をする気はないってわけか」それは少し問題だった。
「いったいどうしたものか…」ため息をついてから黒い生き物に集中した。手に持っていた件を投げつけるとすり抜けた。これは確実に体全体が影で作られている。ということは攻撃をすることは不可能。これも厄介なことだった。
とにかく逃げてみると向こうは走らなかった。だが、問題は違う。その時に追ってきた。気が付けば横にいたというような状態だ。目的を訊きだそうにしても話さないのならば訊くことは不可能だ。
逃げ続けても気が付けば後ろにいる。後ろを見れば前に出てくる。逃げようにも逃げることができない。逃げ続けていればいつかは忍座が疲れるだろう。人間だ。疲れることはある。
「どうすれば…」そのまま街中まで来てしまった。逃げていると剣を飛ばしてこないと分かったので逃げ続けているがその後にどうするかは考えていない。
走っているといい考えをした。そのまま走り、コンクリートの広場についた。もしも自分の勘が当たっていれば… 思った通り、なかなか来ない。理由はこうだ。この生き物は影の中を自由自在に動ける。のだと思う。だから完全にコンクリートで作られた場所に行けば影は作られない。自分の影は問題ない。地面に倒れていればあの影が現れる隙間がない。
だが、じっとしているといつかは来る。自由自在に動けるということは一番近いところにある影へ移り、そこから歩いてくるだろう。なので転がりながらその場を去った。
草むらの中に入り、待ち構えてみることにした。もしかしたら見えなければいつからないかもしれないと思った。だが、それは大間違いだった。普通に見つかる。じっと待っているとどこからともなく剣が飛んできた。ぎりぎりよけることができたが、肩をかすった。方に薄い切れ目ができた時に分かった。剣は影のように触れないわけではない。もしも触れないのであればさっきはどうやって触ったのだという話になる。ますます面倒になってきてしまった。
逃げる方法がない。倒す方法がない。




