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序章1
よろしくお願いします
ピエロがいた。
モノクロのピエロだ。
二股に分かれた帽子とストライプの上下のモノクロのピエロだ。
男は目の前の光景を不思議そうに見つめる。
仕事が終わり、会社から家に帰る途中、“こいつ”にあった。
誰なのかわからない。
顔もモノクロの仮面で隠れているがゆえに。
「君は——」
と言いかけ、瞬きをする。と、そこには誰も居なかった。
代わり自分の体が倒れていく感覚を覚える。
一瞬の出来事だった。
地面に倒れると背中から生温かい感触がする。
そして、意識が遠のいていく。
(何が起きた? 私はどうなっている?)
考える中でも意識が遠のいてゆく彼が最期に見たのは、憎たらしいほど美しく輝く月を背に立つ、一人のピエロだった。
今日中にいくつかあげます。