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天上の魔導書 ―魔法大戦前夜―  作者: 海野山空
第一章 漆黒の少女
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09 大戦前史

「さて、この世界は妖精、エルフ、人間の3つの種族が支配しているのは知っているね?

よろしい。

これらの種族はもう千年も前から大なり小なり争ってきた。

争う理由は様々だ。土地、資源、宗教、経済、魔法、思想、国家形態。まあ、ありふれた理由だよ。

君の世界にもあるんじゃないかな? ありふれた理由で始まった戦争が? 

生物は構造的に闘争するものだからね。まあいい。

繰り返される争いを経て、国同士の戦争にもある程度ルールができた。虐殺はやめようとか、捕虜の拷問は禁止だとかね。

話し合い――外交で物事を解決する場合も増え、戦争や紛争は減っていった。それが、二百年前のことだ」



「人々は平和な時代を謳歌した。国同士の交易も盛んになり、異種族間の交流も増えた。

こんなふうに思った者もいただろう。

あれ、今まで異種族というだけでいがみ合って、争っていたけど、話してみれば意外と普通な奴らで、食事や音楽や踊りなどの文化があり、家庭のために働き、隣人を愛する者がたくさんいるじゃないか。考え方の違いはあるけれど、別に憎み合う必要なんかなくって、違いをお互い受け入れながら、うまくやっていけんじゃないか? とね。

しかし――そんな期間も終りを迎える」


「その前兆は魔法具の発明だった。

少年もサラの家で見たんじゃないかな? 火を起こしたり、風呂を沸かしたり、いろんな魔法具は今でこそありふれているが、当時は画期的だった。

なぜか? 

妖精、エルフ、人間――魔法を使えると言っても、そこには明確に力の差があった。

妖精は最も強大な魔力を持ち、自然現象を捻じ曲げるほどの大魔法を得意とした。

エルフは医療や狩りの魔法に長け、魔法陣を使って高度な魔法を生み出した。

人間は最も魔力が少なく、そもそも魔法を使える者が全体の二割にも満たなかった。

その代わり道具を作るのが得意だったんだね。魔法具は人間が発明したんだ。強大な力を持つが数の少ない妖精、高度な魔法を使い数もそれなりにいるエルフ、魔力は少ないが最も数が多い人間。

平和な時代はそのバランスが取れていたが、魔法具の出現によってそれが崩れた」


「魔法具は魔力の貯蔵ができた。事前に魔力をためていれば、魔法を使えない人でも、魔法具は使えたんだ。

農業、畜産、建設、工業、運輸――様々な産業に、革新が起きた。経済は発展し、暮らしは豊かになった。人工は爆発的に増え、人は未開の土地を開拓していった。

木々をなぎ倒し、田畑を作った。山を切り開き、鉱物を掘り尽くした。海を渡り、新天地を目指した。

その頃から、国の形も変わり始めた。もともと都市国家が各地に点在していたが、いくつかの都市が合併し、大きな国になった。法律が整備され、統一された貨幣が用いられるようになった。

人間の動きに対抗し、妖精やエルフもそれぞれが集まり、大きな国を形成し始めた。国という意識が最も薄い妖精ですらね。軍隊も大きくなった。権力の争いが激化し、同種族、異種族問わず紛争が増えた。国家間の緊張も高まり――


そして百年前、世界を巻き込む大戦争が起きた」

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