07 溢れ落ちる涙
目を覚ますと、隣でサラが眠っていた。毛布に抱きつきながら丸くなっている。昨日の夜はもっと離れたところで寝ていた気がするが、彼女は寝相が悪いのかもしれない。ローブや三角帽を身につけていない彼女は、年相応の少女に見えた。陽の光が窓からわずかに差し、彼女の首筋にかかった黒髪がやわらかに煌めいている。
不意に、びくりと、彼女の体が痙攣した。白い手が握られ、眉に力が入る。苦しそうに唇がわずかに開き、息が漏れた。
うなされている……?
僕は彼女を起こそうと手を伸ばし、ためらい、そして力なく手を戻した。
彼女の口から、呻きとともに言葉が滑り落ちた。
「……お母さん……お父さん……」
「ぁ……」
彼女の長いまつげが震える。目尻から液体がにじみ、たちまち玉となって鼻筋と頬をつたい、乱れた毛布にしみを作った。
その場から逃げ出したい気持ちを必死に抑えながら、サラに毛布をかけ直し、自分が使っていた毛布をたたんで、静かに彼女から離れた。窓の近くでストレッチをする。体の節々が痛んだ。
頭を強く降る。
痛いのは、昨日いろんなことがあったからだ。それだけだ。
窓から外を覗くと、遠くに城が見える。朝日を受けて、まばゆいばかりの光を放っている。
エラルディア城。この国の首都テルブルクにそびえる、最重要の建造物。城自体が魔力を生成し、蓄える機能を持つとサラが言っていた。この世界で魔力は、電気や化学エネルギーの役割を持つようだ。あの城は、発電所であり、電池機能もあり、政治の中心でもあるのだろう。
しばらくするとサラが起きたため、一緒に朝食をとった。
「鍵人の世界に戻るのは、今日の夜でいい?」
彼女の問に対し、僕は曖昧にうなずいた。勢いよくパンをかじるサラの姿からは、昨日の夜に見せた雰囲気は微塵も感じられなかった。
「じゃあせっかくだから、今日はこの世界を案内するよっ」
朝食のあと、身支度をした。僕の格好はここでは目立つから、というサラの配慮で、彼女のローブを借りた。ローブはサラが着ていたときの暗黒ではなく、普通の黒い生地だった。僕は黒い本をローブの内側に入れた。サラは若葉色のワンピースに着替え、僕らは外に出た。
それから、大通りの商店を冷やかし、服屋で試着をし、街を歩き回った。見るもの、感じるもの全てが珍しく、僕は現実感のない高揚に包まれていった。
サラは、高そうな宝石を自信ありげに鑑定し(買わなかった)、試着した服を自慢気に見せびらかし(買わなかった)、路上の大道芸に歓声を上げ、声を上げて笑った(おひねりはあげなかった)。太陽のもとの彼女は、水晶の城より眩しかった。
気づくと昼になっていた。サラの提案でサンドイッチを買い、近くの公園に向かった。
僕らが並んで歩いていると、
「おーい、そこの悪ガキ共、とまれ」
頭上から声がかかった。