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召喚に愛された勇者  作者: ゆきつき
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九話

 砂漠をさまよう事、約一週間。ようやく町を発見した。しっかりと城もある。わかってないけど、恐らく魔王がいるであろう城だ、情報通りならば。

 ソフィアも魔王ちゃんもバテバテだけど、もうちょっと頑張ってもらう。

 魔王はあと二人って聞いてるけど、例外って言うのがあるから。そろそろ魔王討伐に、この二人を連れていっとかないといけない。

 可能性としては、今までもあったけど、あと二人ってのは、結構危ない気がする。ここにいる魔王ちゃんって言う、例外的存在がいる。だから、もしかしたらこの魔王を倒して即召喚って事があり得る。まあ、それはどのタイミングでも同じなんだけど。


「少し、休みませんか?」

「そうじゃ。おぬしは大丈夫なのかもしれぬが、妾達はもう限界なのじゃ」

「別にいいよ。今回ばかりは、俺もちょっと休憩したいし」

「なら、早く行動じゃ」

「はいはい、慌てないで。どうせ君たち、こっちでのお金事情知らないでしょ。余計な手間を増やさないでよ」

「わかってますよ」


 まあ、ソフィアが言うなら、大丈夫なんだろうけど。魔王ちゃんと一緒だと、あの子も結構やんちゃとかするから。





 思ってた厄介ごととは違ったけど、間違いなく厄介ごとには巻き込まれていた。

 変化の魔法によって、あの二人はちゃんとここの魔族の容姿になってる。

 どっちも美人だけど、系統が違う美人だ。可愛い系と美人系。魔王ちゃんの方が可愛い系。

 女性の魔族とか知らないけど、何がついていて何が無いのかは把握できた。それで魔王ちゃんもソフィアも、見た目だけは魔族だ。実際に角がついてるわけでもないし、しっぽをなくす事はできてないけど。

 で、二人は普通に綺麗だ。異世界補正なのかなんなのかは知らないけど、大抵の女性は美人になってる。その中でも魔王ちゃんとソフィアは群を抜いて綺麗な気がする。身内びいきなのかもしれないけど。

 その美貌のせいか、やっぱり男たちの標的にされるのだろう。この前の人間と同じで、魔族側でもナンパのような何かが発生していた。

 一応、色々と話してたら、渋々って感じではあったけど諦めてくれた。一人ぐらいいいじゃねえか、とも言われたけど、そういう訳にはいかないから。


「それで、君たちはどうしてまた、あんな事になってたのさ」

「知らん。あやつらが勝手に集まってくるのじゃ」

「ま、無時で何よりだよ」

「ふふん!やはり妾の美貌は、世界を超えても通用する事の証明なのじゃ」

「その自信が羨ましいです」


 これ以上は関わらない方が良い雰囲気だ。うん。


「それじゃ、ちゃんとついてきてよ」

「はい」







 しっかりと休養も取れたし、万全を期して魔王戦に挑める。

 それに、しっかりとした場所で寝れたからか、ソフィアと魔王ちゃんの顔色もいい気がする。疲れたとか言ってたけど、あの子たち基本は元気だから。判断が難しいけど。


「それじゃあ、絶対に俺より前には行くなよ?いざって時に対応できなくなるから」

「了解した」

「君が心配の種なんだよ。わかってる?絶対だからな?」

「妾を何だと思っておる。話の分からない子供ではあるまいし」

「ソフィア。いざって時、ちゃんと押さえてくれよ」

「わかりました」

「二人していけずなのじゃ!」


 しょうがないじゃん。このちょっとした旅だったとしても、信用はできる。絶対に何かしらやらかすって思ってしまう時点で、信用とかないのかもだけど。あれだ。何かしら絶対にやらかすって言う信頼がある。全く持って嬉しくないであろう信頼がある。





 魔王の城の中は、普通に綺麗だった。

 宿とかでも、しょうがないとは言え、部屋とかにまで砂が入っていた。砂嵐が毎日とは言えないけど、しょっちゅう来るから、そんな細かいところまで掃除してると、人件費が馬鹿ほど高くなるだろうし。

 なんだけど、城の中には、砂とか埃とか一切ない。ピカピカとまではいかなくても、砂だらけの廊下とかを見てたら、かなり綺麗に見える。いや、普通の時でも、埃とかもないから、かなり綺麗に見える。

 魔王は、かなりのおじいちゃんだ。いや、よぼよぼってわけじゃないんだけど、顔には皺が沢山ある。髪の毛も、黒がメインっぽいけど、白髪が半分ぐらいある。


「そなたは、人間か。いつぶりだ?人間と会うのは」

「えっと、」

「なに。もてなす事はできないが、勘弁してくれ。こんな砂漠の町だ。人間にもてなせるほど、資材などが有り余ってるわけじゃない。人間にもてなせるほど資材があれば、町の繁栄のために使う」

「それはそうですけど」

「で、何をしにきた?いや、儂を殺しに来たか。それもまた運命か」

「……そっすね」

「おい、約束と違うぞ」


 そうだけど、どう見ても年寄りだ。いや、魔族とかは、見た目の割に長生きするけど、それを考えたとしても、もう歳だ。

 そして、約六か月ぐらいで目を覚ませるとは言え、それは試したこともなければ、正しいかどうかもわからない。ただ魔法の説明でそう書いてあるだけ。

 しかもそれは、魔法に抵抗できる人に限り、とついている。一般人相手なら、これの倍以上は眠る事になるとも書かれていた。

 いくら魔王とは言え、ただ政治をしてるだけの王だっている。戦闘に向いていない王だっているかもしれない。

 そして歳なら、眠らされてる間に、死んでしまう可能性だってある。

 ただの勘だけど、この人は別に悪い人には思えない。ただ、自分の領土の繁栄などを考えてる。


「魔王ちゃん、これは俺がどうこうできる問題じゃない。どんな人だって、歳には勝てない」

「!!」

「そうだな、そこの若者の言う通りだ。そしてできるなら、楽に殺してくれると助かる」

「……もしかしたら、起きる事があるかもしれませんし、一瞬で死ぬかもしれませんよ」

「なに、かまわんさ。もう妻にもあってないからな。早く会いたいが、自分で死ぬのもあれだからな」


 うーん。うーーーーーーーーーん。

 何が正しいのかわからん。ここで殺す方が、この魔王にとっては良い事だろう。魔王ちゃんだって、しょうがないって事はわかるはず。

 けど、俺だって好きで殺してるわけじゃないし。今更そんな事言っても、なにかあるわけでもない。でも、善人を何も思わず殺すような、心が無いわけじゃない。


「俺には、殺す事はできない。ただ、眠らせる事しか」

「なに、儂だって自分の事ぐらい理解してる。それで十分」

「……わかりました」


 ただ眠らせるだけだ。罪悪感は少ない。

 そして、これは人間のためだ。そうだ。何も問題ない。今までは、もっと酷い事だってやってきた。








「どうしました?顔色が優れてないようですが」

「ん?まあ、そうか?」

「そうじゃ。妾ですらわかるぐらいには」

「そうか。魔王ちゃんにすら心配されるのか」

「何も心配してるとは言っておらんだろ」

「ありがと」

「そ、そのように言われてもな。ふんっ!」

「ソフィアも、ありがと」

「い、いえ。何もしてないですし」


 これは、どうなんだろ。この二人と出会ったから、こういう風な思考になるのかな?いや、違うか。

 絶対に、今はこの二人がいるからこそ、まだ壊れない。一人じゃないって言うのは、案外助かる。別に悩みを話してるわけでもないけど、横に居てくれるってのがありがたい。

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