八話
「それにしても、魔族領広すぎない?」
「そうですね。もう歩き疲れました」
「まあ、これよりもっと歩く事もあるけど」
「ぶー」
「それでも、魔族領でこんだけ歩かされるのは初めてだな」
今までは魔王って、一人しかいなかったし。言い方は悪いけど、こじんまりしてる感じだったkから、すぐに魔王がいる城を見つける事ができた。
だから、ここまで魔族領を歩く事はなかった。人間領は散々歩いてきたけど、魔族の方はそんな歩かなかった。
これの何が辛いって、今からこの王様を殺すんだって自覚させられるんだよね。いや、殺してないけど、今回は。
「妾はもう疲れたのじゃ。おぬし、妾を運べ」
「うん、百歩譲って運ぶのは良いけどね。自分で運べっていうのはどうなの?荷物みたいで嫌じゃないの?」
「そんな事はどうでもいいのじゃ、早く妾を運ぶのじゃ」
「はいはい」
まあ、そんな疲れてないしいいけども。どうせそんな重そうじゃないし。
「ふふん!どうじゃ、ソフィー。羨ましいだろ」
「まーちゃんだけずるいです!」
「ずるいとか知らん。てか魔王ちゃんさ。背中で騒ぐなら、すぐに降ろすからな」
「わ、わかったのじゃ」
うん。わかってくれたならそれでいい。別に賑やかなのはいいと思うけどね。背中で、身振り手振り使って話されると、安定感を失うからやめてほしい。
ついでに言えば、そもそもおんぶとかする機会がないから、ちょっとした揺れとかでも、落としてしまいかねないから。
「それと、次の休憩までには降ろすからな」
「そんないけずな事、言わんでいいではないか」
「じゃあ君、自分で歩く?」
「……」
「本当に疲れてるなら、そりゃ休憩するまでおぶるよ。けど君、そんなんじゃないよね。いざって時に動けないとか言われたくないからこうしてるけど、別におぶる必要もないよね?」
「……」
「そういう事だから。文句は一切受け付けないから」
俺は優しい方なんじゃないの?普通がわからないけど、疲れてもないのにおぶる必要はないもん。
「どうして私はしてくれないのですか?」
「少なくとも、今は無理」
「そうですか……」
「まあ、魔王ちゃんもこうやってるんだし、ソフィアもいつかやってあげるよ」
「ほんとですか!約束ですよ!」
「お、おう」
なんでお父さんみたいな感じになってるんだろ。別に保護者じゃないのに。実質そんな感じだけどもさ。
うん。もう城が綺麗とか立派だったとしても、びっくりしない。それがテンプレみたいになってたし。
けど、これは違うだろ。これ、どう取り繕ったとしても、廃墟だろ。廃城だよ。外観はもう、廃れまくってるよ。ボロボロで、苔とか生やしてるよ。魔王の城ってより、ドラゴンとかの隠れ家みたいな感じだよ。ドラゴンへの、急な風評被害。
まあね。魔王だからね。内装とかを魔法で補ったりできる可能性もあるからね。うん、そんな妄想を抱きながら城に入ったんだけどね。本当にただの廃墟だったよね。
通路も、所々穴が開いてたり。壁も崩れてるから、外の景色も見える。城の位置が高所にあるからか、かなりの絶景。まさか、それを見るための壁の穴か?
噂では、魔王は四人いるらしい。だからまだ、魔王ちゃんたちを連れてきてない。いない方がいいからね。あの子たちがいたら危険だから。守りながら戦えればいいけど、回避スキルとかがあるせいで、流れ弾が当たってしまいそうで怖い。
「よく来たな、勇者よ」
「どうも」
「この俺様を殺しに来たと言うのか、愚かにも人間風情が」
「言わないですよ、冗談が上手いですね、ハハハ」
「そうか、そうだよな。魔王である俺様を殺すなど、阿呆の言う事だ」
「俺は魔王を無力化する旅をしてましてね。殺したら俺の負けですよ」
「貴様!俺様を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
いやあの、馬鹿にしたのは一回なんですけど。てかこの程度で怒るって、人間風情より器が小さいんじゃないの?
「その腐った頭、かち割ってやる」
「そうですか」
えー。これも、ダイジェストで。
この魔王は物理特化型なのか、間合いを詰めに来た。
俺としてもそっちの方が都合がいいので、特に行動はしなかった。
そしたらどう思ったのか激昂して、力任せのグーパンチが飛んできた。
回避スキルが優秀すぎるのが悪い。魔王のパンチは空を斬り、そのまま地面に拳が叩きつけられた。
そしたらまた激昂。『この俺様を見下すな!』と言って、再度パンチを繰り出そうとしてきた。
けどまあ、俺だって何もしないで攻撃を受けるほど、優しくない。攻撃は受けると言うより、躱すだけど。
アイテム欄から聖剣を装備。そしてこれまた優秀なスキル、剣術スキルのおかげで、剣での攻撃も成り立つ。
その結果、恐らく利き腕を切断。これまた魔王は激昂。雄たけびのような何かを叫んでいたが、流石にこれ以上は可哀想なので、さっさと眠らせた。
「それじゃ、安全になった世界で目覚めてください」
「人間、風情が」
うん、寝てくれた。流石に腕を斬ってるから、出血量が酷いけど。俺が治したりしても、どうせ激昂するだけだから。気づくかはさておき。
「ありがとう、ございます」
「はい?」
「ありがとうございます。私達は、この方の乱暴な政治のせいで、苦しんでいたのです。ただ、その強大な力のせいで、私達には反逆する事もできませんでした」
「は、はあ?」
「あなたのおかげで、私達は救われました。本当に、ありがとうございます」
「ど、どうも?」
まあ、それぞれが抱えてる事情ってのがあるんだろうしね。俺なんかが理解できないような事情ってのがあるはずだしね。
けど、王様が見た目上殺されて、感謝されるって、それはそれで困るんだけど。怒りのあまり突撃とかされる以上に戸惑うんだけど。
「えっと、感謝されるのはありがたいけど、俺は別に殺してないから。ただ眠らせただけだから。一日とか一週間とかで目覚めるようなやつじゃないけど」
「それでも、十分すぎます。私達には、それすらできませんでしたから」
「そ、そう」
うん、わからん。ここにいるって事は、従者とかじゃないの?いやだからこそ、こうなって嬉しのかな?
うん、わからん。
次の場所は、過酷な環境にあるんだけど。辺り一面、肌色の砂だらけ。まあ、砂漠だ。
オアシスとかも見つけれたけど、だだっ広い砂漠を歩いていて、一か所しか見つけれてない。まだ見つけれただけマシなんだろうけど。
そして砂漠の特徴、昼間は焼き付けるような太陽の日差しのせいで、汗が止まる事がない。そのせいで、服が何回もびしょびしょになって着替えた。女子二人は、ちょっと可哀想だけど、一緒の物を着てもらった。俺が女子物の服なんて持ってる方がおかしいから、こればっかりはしょうがないと思う。
なんだけど。逆に夜は、雪でも降ってんじゃないのって思うぐらいに寒い。まあ、舞ってるのは砂なんだけどね。口に入るとじゃりじゃりする砂だけどね。砂利じゃなくて砂だよ。じゃりじゃりしてるけど、砂だ。
とまあ、この気温差のせいで、結構ガチめな感じで、魔王ちゃんがばててる。ソフィアも大丈夫って言ってるけど、そんな風には見えない。
「流石に着替えたいのじゃ」
「それは私も思いますが、わかってて言わないでいたのに」
「そ、それはすまなんだ」
「まだ水があるだけマシだな。普通なら、飲み水確保のために、水を浴びる事すらできないから」
「それに関しては、よくやった」
「へいへーい」
「ただ、やはり服が欲しいのじゃ。おぬしの服でもいいのだが、大きすぎるのは困るのじゃ」
そうなんだよね。俺だって身長は高い方じゃないけど、男女で見比べれば、やっぱり高いって感じになる。ほら。日本だったとしても、男女だと大体10センチぐらいの差があるじゃん。平均を見てもそうじゃん。
小さいってよりは良いんだろうけど、そこは女子の困るところだよね。見られたくない場所ってやっぱりあるから、大きすぎるのも問題だよね。
ほら、あれ。絵とかの投稿サイトとかでも見つけれるかもしれないけど、胸の大きい人がtシャツを着たらエロいじゃん?はちきれそうで、見てて危ないじゃん。
そしてロリっぽい子が来たら、見えそうではらはらする感じの絵になるじゃん?ちょっと前にかがむだけで、見えそうになるじゃん。まさにあんな感じになってしまう。
どっちもロリっぽい子です、はい。胸は差があるけど。
「それにしても、おぬしのセンスはどうなっておるのだ?」
「いいじゃん、ネタTシャツ」
「そのセンスがわからんと言ったのだが」
うーん。いいと思うんだけど。特にこの、『勇者は魔王なくしてならず』って。日本語で。そして棒人間で、片方が跪いて、片方は威張るような姿勢の絵がある。よくない?え?
どうして自分でネタTのネタを考えてるんでしょう?元からある物の方が面白いと思うんですけど。