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召喚に愛された勇者  作者: ゆきつき
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四話

「よく召喚に応じてくれた、勇者……達よ」

「? ああ、そうですね」


 そうだった。ソフィアがいるもんな。達ってなるよな。言い淀んだ理由は、本当は一人しか呼ぶつもりがなかったとかか?


「我々は、魔王の脅威にさらされている。本来、これは我々の問題で、勇者である貴様には関係ない事だ。だが、我々ではどうする事もできず、貴様を呼び出した。まずはその事について、謝罪する。貴様達にも、それぞれの生活があるにも関わらず、我々の勝手で呼び出してすまない」

「陛下!そう簡単に頭を下げるのは問題です!」

「なら貴様は。小さな集落で穏やかに暮らしている相手に、これから魔王と戦えと、これまでの生活を捨てて戦えと言うのか?」

「それは、」

「貴様には息子も、娘もいる。その子らが突然消えたらどう思う?」

「……」

「所詮は爺の頭だ。下げても許される事ではないが、できる事をしないのはまた話が違う」


 なんか今までで一番優しそうな人に当たった。


「いえ、大丈夫です。もう慣れてますから」

「慣れてる?」

「それで、魔王は何処にいるのです?」

わらわなら、ここにいるぞ」

「……」

「……」

「……」

「というか、ここはどこじゃ?他の者どもはどこじゃ?」

「……え?」


 ちょっと頭が真っ白になった。ちょっと待って。ちゃんと目の前の情報を処理しないと。

 ……

 え、えぇええええええええええええええええ。

 魔王がいるんですけど!それもさっきまでの国の魔王な。いやまあ、この国の魔王なんて知ってるわけないんだけど。

 いや、なんで魔王がいるの?てかなんで当たり前のように抱き着いてたの?え?……え?


「えっと。話はあとにしてもらえますか?そしてできれば、部屋を貸してもらいたいのだが」

「……。ああ、かまわん。おい、勇者達を部屋に案内してやれ」

「はっ!」






「えっと、なんで魔王がいるの?」

「それはわらわが聞きたい。というか、ここは何処だ?」

「えーっとだな。とりあえず、落ち着いて聞いてくれ」

「どうしたのだ?そんな深刻な顔をしおって」

「俺は勇者なのは理解してるよね?」

「おぬし、自分で言って恥ずかしくないのか?」

「わかってるって事で話を進めるぞ。俺の場合、変な体質のせいで、召喚されやすいんだよ。だから、今までいろんな世界に行ってたんだよ」

「ご立派な事をするものだ」

「だからまあ、今回もそれと同じで、違う世界に来た」

「……は?」

「そして最近になって帰る方法を探し始めもんで、未だに帰り方はわかってない」

「どうして探してるのですか!私は別に、ハル様と一緒ならいいと、あれほど」

「君は君で恥ずかしい事をよくもまあ言えるよね」

「おい、おぬし。それは、どういう事なのだ?」

「簡単に言うとよ?君がいた世界に帰れない。今はってつけとくけど」

「……」

「それとこっちからも質問な。君、なんで一緒に来てるの?例外が一つしかないからわからんけども、魔法陣の中にいたか?」

「えっとだな。突然光ったら、びっくりしてな。怖くなったから、抱き着いてしまった」

「それが、俺と」

「そうだな。よくわからんが、そこが一番安全な気がしたのじゃ」


 これは喜んでいいところなのかな?敵からしても、安全区域だと思われてる俺。いやダメだな。敵から安全認定受けるって、弱いとかそういった意味合いになるくない?そもそもあそこだと俺って敵扱いだったのか?最後の方なんかは緊張感なかった気がするけど。

 と、そっちはいい。魔王をどうするかだ。いや、置いていくって選択は、俺には無いけど。本人が望むなら、そうするしかないし。


「それで、妾は帰れるのか、帰れないのか?」

「さっきも言ったけど、今は帰れないな。まだ帰る方法を見つけれてない。もしかすると、召喚魔法と同じ原理で、帰還用の魔法もあるかもしれないけど。ここの王ならその準備もしてそうだけど、あの口ぶりからしたら、なくてもおかしくはない。つまりわからん」

「なら、おぬしについて行けば、いつか帰れるかもしれないのか?」

「それも保証はしない。あくまでも探してるだけであって、見つけれるとは限らない」

「少し、考えさせてくれないか?」

「だとよ、ソフィア。話し相手してやってくれ」

「妾を一人にしろと言ってるのだ!」

「性格は違うし、生まれの世界だって違うけどな。お友達同士、話せばちょっとは気が楽になるぞ?それに、ここではわざわざ魔王の役を意識するつもりもないんだ。誰かと一緒に考えてもいいんじゃねえの?」

「うぅ、」

「まーちゃん、いいでしょ?」

「まーちゃん?」

「あっちだと名前を教えてくれなかったんだよね。けど、魔王って堅苦しい呼び方は似合わないし。だから、魔王のまを取って、まーちゃん」

「……。それじゃあ俺は王様と話をしてくるから。考えをまとめておいてくれ。一応帰れるのかも聞くけど、そっちは期待しない方がいいから」


 だって帰る方法があるなら、王様が謝る必要なんてないしな。だって帰れるんだもん。





「すみません、待たせて」

「良い。それで、残りの二人は?」

「部屋で待機させてます。それに、見た通りまだ子供なので、話は俺しかしないので」

「えっとだな。あの片方、魔族か?」

「話せば長くなるのですが、誤解を解くために話ます」


 しょうがないよね。あれが魔族って認識されてるなら、ちゃんと誤解を解くべきだし。こればっかりはしょうがない。



「とまあ、この具合でして。別に悪い子じゃないのは保障しますので、あの子を悪者扱いするのはやめてほしいですね」

「なるほど、わかった。だが、我らの前に姿を現すのはやめた方がいい。誰もかれもがその話を受け入れるわけでもなければ、貴様も誰彼構わずこの話をするわけにもいかないのだろう?」

「そうですね。はい、そうします」


 それが確実だろうな。


「そうです。あの、帰る方法ってあったりします?」

「すまないが、それはできない。本当にすまない」

「いえまあ、わかってたんで」


 さて。どうやって魔王ちゃんを送ろうか。いつか召喚特典で覚えないかな?それが一番楽?いや楽ではないか。






「それでお二人さん。話はまとまった?」

「妾もついていく事にした!ソフィアが心配だからな!」

「あっそうですか。え、魔王さんもちゃんと戦える力あるの?」

「もちろんじゃ!妾は魔王じゃぞ!力なくして、王にはなれず、じゃ」

「その力って武力の事じゃないと思うんだけど」

「妾には、隠れた魅力があるからな。そう、カリスマ力が!」

「どう思いで、ソフィアさん?」

「まーちゃんは良い子ですよ。カリスマ性があるかは知りませんけど」

「ソフィアもいけずなのじゃ!ここはわらわの事を馬鹿にする連中しかいないのじゃ!」


 なんと言いますか、いじりやすいキャラしてるんだよね。それに反応も可愛いと来たら、もうやるしかないじゃん。


「ほら、行くぞ。それと魔王ちゃんには魔法かけるけど、我慢してね」

「どうしてじゃ。何か問題があるのか?」

「うん、問題しかないよ。わかるでしょ?あの城で俺達が来たら、ちょー違和感あっただろ?」

「そうじゃな。人間なんて珍しいから、わくわくしたのじゃ」

「てことはだ。君だって同じなんだよ。人間の世界で魔族がいたら、その子は奇異の目で見られる。それだけならいいけど、この人間たちは魔族の事を敵視してるからな。最悪、関係ないはずの君に八つ当たりを受けるかもしれないからな。それはわかる?」

「確かに、そうなのじゃ。妾達は人間を嫌ったりしていなかったが、もし嫌っていたら、人間を見つけたら殺したりするかもしれないのじゃ」


 おっと。いきなり物騒になったよ。やっぱり魔族の根底って、こういう戦闘を好む種族なのか?戦闘民族なんちゃらかな?


「別に俺としては、全員を敵に回しても大丈夫だけどな。同じ種族を殺すってのは気分が悪いものだからな。できるだけ問題事は起こさないでくれよ、二人とも」

「どうしてそこで私が出てくるのですか!いつ問題を起こしたと言うのです!」

「一つ。あのうさぎモンスータ事件。二つ。お花摘み問題。三つ。リス問題。はい、何処に反論する余地があるとでも?」

「うっ」

「なあなあ、お花摘み問題ってなんじゃ?」

「個人の尊厳にかかわるから、本人に聞きなさい。女子同士じゃないと話せない事だってあるだろ。色々と悩みとかもあるだろうし」


 ほら。女の子ならではの悩みってあるじゃない?男にはわからないような悩み。うん。俺というか、男全般には理解できないような悩みとかあるんじゃないの?


「ほれ、地図もあるんだ。さっさと行くぞ。食料だっていっぱいもらえたし」

「わかりました」






 今回は、モンスターがうじゃうじゃいるって感じよりかは、動物が群れを成して生活してる感じだ。モンスターも群れを成すけど、あれは動物とかみたいな群れとは違う。助け合う、じゃない。仲間であり、食料だ。本当に飢えがくれば、仲間ないで殺し合って食べる。

 動物はまあ、そっちではない。俺が見てる限りだけど。


「ところで、おぬしはどうしてこんな事をしてるのだ?」

「それが正義だからかな?」

「正義と言うのは、魔族を滅ぼす事なのか?」

「いや、そうじゃないな」

「どういう事じゃ?」

「どういう事です?」

「そうだな。魔王ちゃんのところだと、魔族は優しい人達だったろ?けど代わりに人間って邪悪な感じだったろ?」

「そうですね」

「妾は仲良くしたかったのだぞ?本当だぞ?」

「あの、別に疑ってないから。そうじゃなくて、別に魔族が『悪』ってわけでもない。それが人間な時だってあるだろ?俺としちゃ、自分が人間なもんで、できる限りは人間の味方をしたいけど」


 まあけど、悪い事してるなら、それを止めるってのも優しさになるのか?やっぱり心理的に、人間の敵をするのは嫌だよな。

 両方悪とかだった場合、その時は無干渉を貫くつもりだ。だって、両成敗とか面倒だし。かといって、片方の味方になるのも問題だろ。どうせ悪に染まってるなら、助ける必要なんてないじゃん。

 盗賊と盗賊が喧嘩してて、たまたまそこを通りかかった。ならどうする?無視が一番だろ?片方を助けたとしても、どうせ自分にも被害が来るってわかってるんだから。


「だから勘違いするなよ?別に魔族の敵ってわけじゃない。時と場合によっては、人間の味方にもなるし、魔族の味方にもなる。もちろん他の種族の味方になる時だってあるけど、大抵の場合、この二種族の対立だからな」

「ではなぜ、あの時妾の城に来たのだ?」

「俺だって面倒な事避けたいからな。余計な会話とか省いてるから。とりあえず魔王に会えばわかるかな、って事で、あの城にいった。結果はさんざんだったけども」

「さんざんとはなんだ!妾に文句でもあるのか!」

「それ、自分で欠点があるって言ってるくないか?」


 今までは、その世界で問題を解決したら、次の召喚が来たんだけどな。どうも今回は違ったらいいから。面倒ごとをそのまま連れてきちゃった。

 それに、結局あそこだと何が『悪』とか判断できなかったし。いやあの王様は明らかに『悪』って感じだったけれども。他の人間達がどうなのかはわかってないし。


「ま、どうせ話す事なんてないし。それより魔王ちゃんの方が面白い話あるんじゃないの?」

「なあ。どうして魔王ちゃんなんて呼び方になるのだ?」

「どう見てもちゃん呼びが正しいだろ」

「ですよね。私よりも年下に見えますよ」

「いや、君たちは一緒だよ?見た目は違うけど、年齢はほぼ一緒に見えるからな?」

「妾を舐めてると痛い目にあうぞ?」

「いやあの、絶対に俺の方が強いから。どうせ守る対象なんで、勝手な行動はやめてよ?」


 魔法を近くで使われるだけで、カウンターが発動するし。魔王ちゃんの見た目的に、近接戦を主体としてるようにも見えないし。俺が言えた義理じゃないけども。俺も見た目には反映されてないから。


「そうじゃ。どうせだし、もっと国を見てみたい!妾の知らない国を見てみたいのじゃ!」

「そりゃ却下だ。君たちは割り切れるのかもしれないけど、俺はそこまでキッパリと割り切れないんだよ。この世界に干渉しすぎると、別れる時に愛着諸々のせいで行きたくなくなるからな。そういった事になりたくないから。却下だ、却下」

「いいではないか!どうせ観光なのだ。観光など、すぐに帰る事になる。それと大差ないではないか!」

「行きたいなら一人で行ってくれない?」

「それでは、帰れなくなるではないか」

「じゃあ諦めてくれない?」

「私も見てみたいです!」

「おいおいマジか」

「ね、まーっちゃん」

「そうじゃ。もっと言ってやれ、ソフィー」

「君たち、仲良くなったよね。全人類がこんな感じで和解できればいいんだけども」


 いやほんと、なんでこの二人、こんな仲良いんだろ。というか、魔王側もあだなで呼ぶなら、本名を教えてあげたらいいのに。


「で、どうするのだ?妾は観光したい」

「はぁ。魔族領に行く途中にある町とかならいい。けど、長時間居座る事はしないからな。そもそも観光が俺達の目的じゃないから。わかったな?」

「わかりました」

「わかったのじゃ」






 やっぱり、余計な約束なんてしなければよかった。

 よくよく考えなくても、男一人と女二人だ。言い方違うと思うけど、どう考えても俺が不利じゃん。


「聞くけど、魔王ちゃんは戦えるの?」

「当たり前じゃ。前にも言っただろう。戦えないと王にはなれないのだ」

「じゃ、とりあえずソフィアを頼むぞ。流石にないと思うけど、暗殺とか企んでる輩がいないとも限らないし。それに、俺がいない方が楽しめるだろ?」

「そうなのじゃ。おぬしは邪魔なのじゃ」

「一応助言しとくけど、その傲慢さ、他で出すのはやめとけよ?普通にキレられるから」


 てかなんで俺はこんな事言われてもどうとも思わないんだろ。え、てことは、俺ってマゾだったのか?いや違うよな。別に嬉しくないし。けど別にサディストってわけでもないと思うんだけどな。え?なら、どっちでもイケる変態なのか?


「いいか?この宿屋に、五時ぐらいには帰って来いよ。わかったか?」

「了解なのじゃ」

「じゃあ、それまでは自由な。金も王様がくれたし。もしかするとまだいける場所があるかもしれないんだ。小遣いを使い切る事はやめとけよ」

「わかりました」


 この子ら、本当にわかってるのかなぁ?心配だ。とにかく心配だ。はじめてのおつかいに出す親の気持ちって、こんな感じなのかな?

 じゃ俺は、晩飯の買い出しだな。なるべく多めの方がいいけど、軍資金だって限りがあるからな。宿屋とかに泊まらければ、節約になるんだけど。

 流石にここまで来て、野宿するって言ったら、魔王ちゃんにキレられそうだし。ていうか、あの魔王ちゃん、野宿をする事を拒絶する可能性あるんだけど、大丈夫かなぁ。

 あの二人が仲良くなればいいけどな。会って数日しか経ってないのに、既にあれだからな。これに関しては、そこまで心配する必要もないか?そもそも俺が気にする事じゃないか。

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