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召喚に愛された勇者  作者: ゆきつき
3/13

三話

「なあ、これさ。絶対確信犯だったろ」

「そうですね。うさぎの可愛さは犯罪級です」

「いやそっちじゃないんだけど」


 確かに小動物とかも増えたけど。それと同じように肉食の動物とか、モンスターとかも出てきた。

 別に手間ってわけでもないんだけど、魔法の調整が難しすぎる。魔王相手とかだと、もうぶっ放せ、って感じやってたんだけど。流石に森とかでやると、自然破壊にしかならない。ゲームとかだと破壊神の称号得られそうなぐらいには、一発で壊してしまう。


「おい、うさぎ、可愛い、ってだけで捕まえるなよ?いくらモンスターの知能が低いとは言っても、相手を殺すためなら悪知恵を働かせまくるから」

「はい?」

「何やってんだー!」

「ちょ、やめてください。こんな可愛いうさぎを、よく投げれましたね」

「あれを見ろ」

「……」


 あのうさぎを投げて、石を投げたら、本性を現した。ちょっと例えにくいけど、簡単に言えばモンスターに変わった。

 あのかわいらしい耳が、ムキムキの足に変わって。あのつぶらな瞳が、どうやって移動したのかは知らないけど、どう見ても充血してる目になった。あの小さいお口が、わかりやすいぐらい殺すための牙が出てきた。今まで手足だった部位は、触手のようにうねうね動いちゃってる。


「いいか?自然ってのは弱肉強食なんだよ。強い奴だけが生き残れるんだよ。だから殺されないように知恵を使うんだよ。わかったか?うさぎだからって、舐めたらだめだぞ?」

「舐めてるのはハル様なんじゃないで、す?」

「俺だってそんな下手なミスはしないぞ?どのぐらいの『悪』を倒してきたと思ってるんだ」

「そうでしたね、すみません」

「次からは気を付けてくれたらいいんだよ。別に怒るほどでもないし。それより無事でよかった」

「……はい」


 いやぁ。それにしても、うさぎからあんな化け物に変わるなんてな。俺もビックリした。魔王が女の子だったときよりびっくりした。うん、あったんだよな。魔王が女性だった時。まあよくある『亡ぼす』など『人間はごみ』などと言ってくれたおかげで、一応罪悪感は少なかったけど。





「ども、人間なんですけど、ちょっといいです?」

「どうした、人間なんて初めてみたが。旅人かなにかか?」

「??」

「どうした?貴様が話しかけてきたのだぞ?」


 え?魔族と敵対してるんじゃねえの、人間って。だから不可侵なんじゃねえの?え?敵対してないなら、俺、なんで召喚されたの?予定が狂うんですけど。


「いや、この辺りは不可侵とか聞いてたんだけど?」

「ん?ああ、あれはな。人間どもが勝手に言ってるだけだ。我々としては、協力していきたいのだがな。向こうが一方的に嫌っていてな。ところでお前は我々を怖がったりしないのか?」

「いやぁ。別に襲ってこない相手を怖がる必要もないでしょ」

「そうなんだがなぁ。どうも他の人間どもはそうはいかないからな。我々だって困ってるところなのだ」

「そうなんですか」


 やっべえ。まじやべえ。この人が嘘ついてる可能性もあるけど、この口ぶりだと、本当に魔族全員がこういう性格の可能性がある。

 こうなると、魔王を倒すとかただの悪じゃん。いや普段から魔族からしたら俺は『悪』だろうけどさ。一応こっちにも理由がある。けど、これだと本当にただの悪だ。大義名分とかもなく、ただの悪になってしまう。

 けど、一応魔王討伐を言い渡されてるし。これ、困ったぞ。


「そういえば、そっちの娘は誰なんだ?貴様の友達、と言う訳でもなさそうだが」

「えっと、妹ですね」

「全く似てないが、まあ色々あるんだろうな」

「そうなんっすよ。あんまり詮索しないでいただければ」

「そんぐらいわかってる」


 うん。年齢を聞いてなかったら姉って答えたんだろうけど。これまた異世界共通なのか、15ですら十分大人っぽい顔つきになってる。成長段階はちょっと知らないけど。


「それで、町ってどのあたりにあるんです?」

「そうだな。この先をずっと進めば、道があるんだ。そこを道なりに進めば、門が見えてくるはずだ。そこで一応検問があるが、どうせすぐに通れる。まあ、人間なんて珍しいから、質問攻めにされるかもしれないが」

「どうも」

「楽しんでいけよ」


 ヤバい。マジヤバい。心が痛んでくる。めっちゃいい人じゃん。


「それじゃ行くぞ」

「はい」




「本当にやらないといけないのですか?」

「そりゃまあ、一応は命令なんだし」

「ですけど、報酬だって頂いてないじゃないですか。それ相応の対価を支払う約束すらしてないのに」

「そりゃまあ、そういった話を全部すっ飛ばした俺が悪いってところもあるけど」


 けどまあ、やりたくないのはソフィアと同じだけれども。だって人間側が魔族の被害を受けてる様子もないし。魔族だって、人間をどうにかしないといけないとか、切羽詰まってる感じで人間を襲ってるわけでもない。


「ま、別に魔王と会って決めればいいだろ。それで拘留されたら、まあ、その時考えればいいだろ。それで済むならラッキーだろうしな。なんてったって、殺さなくて済むんだし」

「前から聞きたいと思ってたんですけど、今までに何があったのです?言ってる内容すべて、実感がこもってるような気がするのですけれど」

「それは、もっと時間がある時にいつか」





「そこで止まれ」

「はい」

「ここに来た理由は?」

「観光です。世界のいろんなところを見て回りたくて、いろんな場所を見てきたんです。そして最後にここを残してたんです」

「そうか。旅にしては、随分と軽装だが?」

「俺の魔法ですね。少量しか入らないですけど、キャンプ用品ぐらいだと魔法で収納できるのです。だから、この通り身軽になるのです」

「そうなのか。ところで、人間だよな?俺、初めて見たよ。なあ、もうちょっと話を聞かせてくれないか?ずっと拘束するつもりはないけどな。その、人間の生活ってのに興味があってよ」

「……」

「おい、どうした?」

「いえ、いいですよ。俺はずっと旅してたので、詳しい事は知らないですけど」

「それでもいいさ。人間からしたら俺達はどうやら恐怖の対象らしいからな。こうやってまともに会話できる相手なんていねえんだな、これが」

「どうやらそのようですね。見回りの人のも同じような事言われましたよ」

「そりゃな。人間なんてここにこないから。それに、こっちから会いに行って、難癖付けられるのも困るからな。こうやって向こうからくるのを待つしかねえんだわ」


 次の召喚がないなら、あの王様に文句言ってやる。というか、今までの魔王と同じ目に合わせてやろうか?人間だと光魔法ってそこまで影響ないけど、一切影響しない訳でもない。

 俺が受けてるわけじゃないから例えようがないけど、魔族が炎で燃やされてるような反応を示す。おそらく人間はそこまで行かないけど、それでも火でじりじりと焼かれるような感じになるんじゃねえの?


「ならまず、生活様式を教えてくれよ」

「教えるって言ってもな。そんな変わらないんじゃねえの?」

「そうなのか?」

「俺も一か所に留まる事はなかったからな。国によっても変わるからな。特別貧相な暮らしのことろもあれば、逆に食料が豊かな国もあった。だから、食べ物の価値だって変わってくる」

「そういうものなのか。いや、こっちはこっちで食料問題があるからな。いやぁ、俺達魔族は強すぎるからな。モンスターとか乱獲しすぎてしまうから、一時的に動物とかモンスターがいなくなるんだよ。いい加減学習してほしいが」


 すごい。俺達とは違う理由で食糧難になってる。俺達の場合、大抵は動物に逆に狩られるから、食糧難になったりするのに。






「すまねえな。やっぱ珍しい話を聞けるとなると、長話しちまう。おそらく、この町の住人も同じような反応すると思うが。そこは仕方ないと思ってくれ。俺達は外の世界には疎いからな。外の世界の人が来たら、やっぱり好奇心が先走っちまうから」

「警告どうもです」

「いやぁ。折角の二人っきりの時間を邪魔しちまってすまねえ」

「あれ?謝る理由が変わってるぞ?」

「私は良いですよ。これからも一緒ですから」

「おいおい、そんな恥ずかしいセリフを言うもんじゃねえぞ?」

「では、またな。帰る時も通ると思うが、恐らく俺じゃねえからな。その時もまた同じ事になると思うが、その時は優しい気持ちで相手してやってくれ」

「わかった」


 ところで、なんでソフィアさんはずっと一緒なんて言っちゃうの?あなた、帰る場所があるんじゃねえの?帰れるかどうかは別として。


「ハル様はどう思います?」

「そうだな。俺の場合、この世界に留まりたくないから、さっさと仕事を終わらせたい」

「留まりたくない、とは?」

「どう考えても、人間の方が『悪』だ。今のところ、お互い干渉しあってないから問題になってないけど。というか、この魔族たちが綺麗すぎるってのもあるけどな。どう考えても、俺達がいない方が幸せだったに違いないし。魔族にとっても、人間にとっても」

「それは、言い過ぎでは?」

「そうだと良いんだけどな。普通、呼ばれる時って、片方は絶対『悪』なんだよなぁ。片方、と言うよりも、呼び出された逆陣営が『悪』なんだけど。なんか今回はそうじゃねえんだよな」

「考えすぎですよ。深く考えても、良い事なんてないですよ?」

「普段ならそうするんだけど」


 だってわかりやすく『悪』をやってるんだもん。人間風情め、とか。劣等種が、とか。そこまで行けばやりやすいんだけど。だって人間の敵って感じじゃん。


「とにかく、まずは町に行くしかない。情報収集と言うより、城を目指す」

「わかりました……」

「城は潜入な?透明になっていく。ここまで来たんだし、非情にならないと。ふぅー」


 大丈夫。感情を出さないようにするのは慣れてる。今までだってやってた事だ。今更できないはずがない。




「やはり、これってやる必要はあるのですか?ここの人達は悪いようには見えません」

「そりゃまあ、市民全員が悪人って考えが違うし。ここまで人間に対して好意的なのも想定外なんだけど」

「わざわざやる必要ないのでは?」

「こうなるなら、もっと人間側の生活も見ておきたかったな。じゃないと、善悪とか決められない」


 人間も、別に魔族に襲われてるとかがないなら、こんな面倒な事する必要はないんだし。

 逆に人間だけが極端に魔族を嫌ってるなら、それは俺の関わるところじゃないと思うし。だって、わざわざ他の世界の人を呼んでまで解決したい内容じゃねえだろ。

 何て言うの?魔族と人間の全面戦争、そして勝ち目がなくなってきたので、召喚に頼るしかないってのはまだ把握できる。それが本当に正しいかは置いておいて。

 けど、ただ人間側が、魔族嫌い、ってだけで呼び出されても。何をしろって言うんだよ。




 嘘だろ。なんだって城がこんな綺麗なんだよ。

 なんだろ。今までの魔王城とは違って、普通に綺麗な城だ。今までのが、戦闘まで考慮に入れられた設計だったんだけど、こっちは普通に城って感じ。あの、住み心地がよさそうな感じ。


「よくわらわの城に来たな、勇者よ」

「この子が本当に魔王なのですか?」

「そうなんじゃねえの?自分でそう言ってるんだし。それに、城の持ち主を偽ったところで、良い事なんてないだろ。警備員とかもいっぱいいるんだし」

「ですけど、どう見ても子供ですよ?」

「まあそれだけは言われたくないと思うけど。君にだけには」

「何ですか!わたくしが子供だと言いたいのですか!?」

「うん、客観的にみて、幼さが残ってるよ、十分」

「!?」

「おい、わらわを無視するでない!」


 見た目だけで判断したらいけない事ぐらいはわかってるんだけどね。どう見ても、まだ未発達な子供にしか見えないのよ、これが。

 紫色の髪を、腰ぐらいまで伸ばした、中学生?いや、その例えはいけない。うん。

 それとこれはこの世界の魔族全員に言えるのかもしれないけど、角に翼にしっぽが生えてる。俺のイメージの魔族って、せいぜい翼とか角ぐらいまでなんだけど。しっぽあるって何?ドラゴンが人間になっちゃった、って感じの見た目してるんだけど。ちゃんとしっぽには鱗のような物がある。綺麗なのかはわからない。トカゲのしっぽを見て綺麗って、普通の人が言えない感じで。まあ断然、そんなのよりは綺麗だろうけども。


「ところで、人間二人がどのような要件で?」

「本当なら、魔王を殺しに来た」

「ひっ!」

「と言うところなんですけどね。話を聞きに」

「それは、話を聞き出せるだけ聞き、その情報を流す、と?」

「違う違う。ちょっと、というかだいぶこっちも事情が変わってきてるんでね。俺としちゃ、殺す必要はないと考えてるけど、まあこの話し合いの中でそれは決めさせてもらう」

「よく自分の陣地でもない場所で、そこまで大口を叩けますね?」

「ま、俺は強いからな。それに、そこまで一方的に押し付けるつもりはない。そっちが俺の事を殺すって判断したなら、そうすればいい」

「ちょ、ハル様!」

「実際にできるかは別としてだけど。ああそれと。俺を殺すなら、魔法はやめとけよ?最悪の展開として、俺以外全員が死ぬから」

「……それで、信用しろとでも?」

「言ってるじゃん。俺は信用を勝ち取るために来たわけじゃない。危険だな、殺すか?って感じたらそうすればいいって。それに、俺の場合は信用されたところで、って感じではあるけど」


 正直、魔王を倒さなければ、次の世界に呼ばれる事はない気がするけど。だって、問題何一つ解決してないし。


「それじゃ、魔王様は、人間の事をどう思ってるのか聞いても?」

「ようやくわらわにも話が来たと思たら。何故そう、難しい事ばかり話してるのだ?」

「……。えっと、ソフィアさん。俺ってそんな難しい事言ってた?」

「ちょっと私も理解できなかったです……」

「あっそう」


 魔王様と話すつもりでいたのに、そっちが理解してないと話が進まないし。


「すみません。姫はまだ幼いので」

「幼い言うな!」

「とまあ、この具合ですので。代わりに私が受け答えさせてもらいますが、よろしですね?」

「あ、はい。お願いします」


 なんかもう、ペースが狂わされてばっかりなんだけど。






「マジですか」

「本気ですよ」


 えーっとですね。色々話を聞いていくうちに、呼び出したあの王様の悪評ばかり聞けたんだけど。

 まず、そこまで国民に尊敬されていない。うんまあそれはね。あの性格のまま国民の前に出るんだったら、尊敬なんてされるはずない。だって、必死に生きてるような俺達を見下してるように感じるんだもん。実際その通りなのかもしれないけど。

 そしてもう一つ。魔族達を除く他国。普通に人間の他の国の王様たちからも嫌われてると。あの王がどこまで社交辞令を使いこなせるのか知らないけど、使えたとしても大して変わらなさそう。普通に、外交向きだとは思えないし。

 まあ、理由はそっちじゃないけど。あの王、自分の領土を拡大する事しか考えてないらしい。なんだそれって感じだけど、まあそこは百歩譲ってスルーする。もちろん領土を広げたいとなっても、既に国と言う枠組みがあって、侵略とかできるはずもない。いや、あの王は理由をでっちあげて侵攻した事もあるらしいけど。

 で、国って扱いになってない魔族領に目を付けた、ってわけだ。けど知っての通り、魔族ってのは身体能力諸々、人間より遥かに上なので、下手に手を打つ事ができなかったそうだ。そこで俺を召喚、って感じの流れらしい。

 うん。あの王には一発どころか、数発本気で殴りたいけど、それより。魔族達の情報収集技術凄くない?どこまで正確な情報かなんて確かめる術がないけどさ。謎の信ぴょう性がある。

 てか、わざわざ魔族がでっちあげたところで、メリットを感じないし。これを言い訳に人間領に攻め込んだりしてるなら、メリットもあるんだろうけど、そんな感じでもなかったし。


「おいソフィア。魔王とのお喋りは一旦置いておいて、こっちこい。話がある」

「どうしたのですか?ここじゃ話せない事なのですか?」

「今後の方針諸々、話しておくべきだと思ったからな。そりゃまあ、ここで話したっていいけど、誰彼構わず巻き込むわけにもいかないだろ」

「そうですか」


 やっぱり、まずは王様に一発拳をぶち込みに行くか?けど今帰ったら、今度こそ面倒になりそうだし。

 しばらく魔族領でいるってのも面白いかもしれない。どうせ問題を解決できないなら、次の召喚だって来ないだろうし。なら、どこかに定住するのもありか?


「は?」

「キャッ!」

「何故今出るのですか?」

「そりゃ俺が聞きたいぐらいなんだけど。ほれ、ソフィア早くこっち来い。置いて行かれたくないなら、手を握っとけ。前は入るだけで大丈夫だったかもしれないけど、今回もそうとは限らないからな」

「わかりました」


 次はどんな国だろ。というか、問題を解決できてないんだけど、それでも召喚は続くんだね。

 おそらくですけど、どれだけ伏線っぽいのがあっても、回収される事はないんでしょうね。それか、最後に雑に詰め込まれるかの二択。

 それと、ギャグってこんなのなんですか?これって、鼻で笑った、って感じになってるんじゃないですか。もしくは無感情で読み進めるか。

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