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召喚に愛された勇者  作者: ゆきつき
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二話

「貴様には、我を助けていただきたい」

「そうですか」

「我々は、悪なる元凶、魔王と敵対している」

「そうですか」

「だが、やはり魔王は手ごわい。そのため、貴様を呼んだ」

「そうですか」


 やっぱり慣れってあるけど、呼び出した勇者を貴様って呼ぶのはどうなんだ?一応は助けてもらう立場なんだし。何回も召喚を繰り返してなかったら、顔に出てたぞ。まあ王様ぐらい立場が上の人なら、関係なく他者の事を貴様と呼ぶのかもしれないけど。


「では、今すぐに出発しますので、魔王の居場所を教えていただきたい。それとできれば地図を」

「そう焦るな。準備は整える。それに、我も何者かわからない貴様に任せるほど愚かではない」

「では、いつ準備が整いますか?」

「それは我の知るところではない!」


 それもそうか。そういうのって、使用人とかに準備させるのような雑務なんだろうし。

 けど、それにしては口調が厳しくないか?怒鳴ってる感じの言い方だったぞ。一応だぞ?一応、今呼び出されたばっかりなんだけど。知らない事の方が多いのに怒られるとか謎だろ。


「準備が整うまでの間、貴様は客人扱いで城に住む。それでよいな?」

「別に問題はないですが」


 まあ、地図ならMPを使って把握する事もできるし、魔王の居場所とまではいかなくても、魔族のいる場所ぐらいなら聞き込めば見つけられそうだから、わざわざ王様の言う事を聞かなくてもいいけど。他にも取れる手段はあるけど、準備してくれるって言うから、その言葉に甘えさせてもらう。

 ところで、地図とかの用意ってそんなに時間がかかるの?


「ところで、そこの少女はなんだ?」

「はい?」

「貴様の後ろにいるだろ!クリーム色をした髪の、貴様より背の低い女が!」

「……」


 ……。うん。え?……え!? なんでいるんだよ!なんでソフィアがいるんだ!え?そんな事あるのかよ。


「えっと、魔法です。幻術の魔法。勇者なんてやってると、面倒な女とかに言い寄られたりするので、面倒ごとを避けるためにも魔法を使っているのです」

「チっ。まあ良い」


 チっ?


「ではなぜ、貴様自身の魔法で驚いていた」

「それは召喚されればかなりの確率で魔法を無効化されるからです。召喚されれば、今まで使っていた魔法、幻術魔法なども無効化されるはずなのですが、今回はどうやらそうではなかったようで」


 といいますか、なんで嘘ついた?そりゃ、こんだけ召喚されてきたんだ。俺の勘だって結構当たると思うし、人を見極める事だってそこそこできるつもりだ。

 その直感と経験の二つから、なんかこの王様は信用できないって囁いてるけど。別にソフィアの事を隠す必要はなかったよな。


「そうか。その魔法は目障りだ。さっさと片付けろ」

「先ほども言った通り、面倒ごとを避けるために作っている幻術です。それをやすやすと消すのは」

「何故?何か消せない理由でもあるのか?ここには、その面倒な女などいないのにか?」

「……では、そのように」


 透明化魔法を使って姿を隠す。

 てかなんでソフィアはこんなに静かなんだ?たった一週間しか一緒に過ごしてないけど、そこそこの人となりを理解したつもりだ。そのソフィアなら、無視されれば噛みついてくるような性格だと思ってたんだけど。やっぱり姫と言う事なのか。大事な場面だとちゃんとしてくれるのか?


「ふんっ。本当だったのか」

「嘘をつく理由なんてないですから」


 嘘なんだけど、バレたらどうしよ。なんかこの王様なら、死刑だなんだって言いかねないぞ?


「では、部屋に案内する」


 どうするか。なんか直感じゃ、この王様は怪しいって囁いてるし。経験とか関係なしに、話した限りだと、少なくともいい人とは思えないし。

 それに、部屋に案内されるのはいいけど、ずっとソフィアを隠すのも面倒だし。てか舌打ちとか堂々とする王様だ。隠し事とかばれると面倒な事になりそう。


「いえ、もう出発させていただきます」

「何を言っている!貴様には、我を助けてもらうのだぞ」

「だからこそ、今すぐに出発するのです」


 それに、助ける対象が一人なのも気になるところだよな。こんなんで本当に王様が務まるのかよ。傍からみたら、面白い具合に噛み合ってないだろ。会話は成立してるような感じなのに、全く噛み合ってないもん。


「そんなこと、いや、それはそれで口実になるか?」

「では失礼します」


 勇者の特権なのか、透明にした人がどこにいるのかちゃんと把握できる。顔の表情とかを確認できるわけじゃないけど、ソフィアがいる場所に光の線で形が作られてる。

 だから、一応ついてきてるのはわかる。これで置いてけぼりって事にはならないはずだ。顔とか見えてるわけじゃないから、本人って確証はないけど。




「なんで誤魔化したりするんですか!」

「まあ、あの人を信用するのは危ないって直感が言ってたから」

「それはわたくしも感じましたけど。折角休憩する機会でしたのに」

「うん。休憩するのは良いけど、なんで君がいるの?」


 誤魔化したのは俺もよく分かってないけど、それ以上にわからないのが、ソフィアがここに居る事だ。

 いや確かに召喚魔法陣が出た部屋に一緒にいたけど。あれがどこまでの範囲が有効なのかは知らないけど、魔法陣は結構小さかったぞ。どんなのかなんていちいち覚えてないけど、直径3メートルもないぐらいだったはずだ。

 そのぐらいあったら、2,3人ぐらいは入れるだろうけど。でもその時ソフィアはもうちょっと遠くにいたぞ?なんで一緒に召喚されてるの?

 最後に格好つけたのに、一緒に召喚されてるんだったらとにかく恥ずかしいじゃんか。恥を忍んでまでやった意味ないじゃん。


「あのままハル様を行かせると、ダメだと思いまして」

「思いまして?」

「光った時に、跳びこんじゃいました」

「跳びこんじゃいました、じゃないだろ!帰る方法なんてないんだぞ!」

「大丈夫ですよ。ハル様が一緒ですし。寂しくなる事はあっても、ハル様が一緒ですと大丈夫だと思うんですよ」

「おう」


 なんとも反撃しにくい事を言ってくれる。素直に喜んでいい話でもないから困る。


「それでも、帰れなくなるんだぞ?疲れた、帰りたい、とか思っても帰る事ができないんだぞ?」


 ここでどれだけ言ってもどうにかなる問題じゃないけど、それでも言わないといけない気がする。


「その場合は、ハル様に慰めてもらいます」

「あの、俺ってそんな大層な人間じゃないけど」

「わかってますよ。だからほっとけないんです」

「そっすか」


 ここでどれだけ言っても帰る事はできない。ここでソフィアが帰るとか言っても、帰る事なんてできないけど。いや、探せば見つけられるんだろうけど、今の俺にはそれができない。

 短距離転移ならできるけど、国から国へ移動する事すらできないのだ。もちろん世界から世界に移る事なんてできるはずもない。


「本当に帰りたいとは思わないのか?」

「大丈夫です。ほら言うじゃないですか。可愛い子には旅をさせよって」

「自分で可愛いって言ってるようなものだぞ、それ」

「それにわたくし、前から旅をしてみたかったんですよね。一人だと不安でしたけど、ハル様がいれば安心ですしね。私もついていきますよ。というか、ここに置いて行かれる方が困ります。帰れないよりも困ります」

「ならもうちょっと考えてから行動してほしいけど」

「だって考えてる間にいなくなっちゃうと困るじゃないですか」

「うん、そう」


 もう諦めるしかないか。一応帰る方法も探すとして。本命は勇者としての職務だからな。

 帰りたいって言った時にすぐ帰せるようにしとくのがベストなんだろうけど、流石に魔王討伐を優先しないと。そのために呼び出されてるんだ。そっちをほっぽかして、ソフィアの帰る方法を探るのも違う気がする。一応、この子自身で決めた事だし。



「それにしても、活気に満ちてるな」

「そうですね。平和そのものです」

「ここが魔族たちの領土からどのぐらい遠いのかなんてわからないけど。それでも、平和すぎるような」

「それの何が問題なんです?」

「君たちの国は、どっちかと言えば平和だったよな」

「そうですけど、なんで関係ない話なんてするのです?」

「関係あるから、もうちょっとだけ静かに聞いてくれ」

「はい」

「けど、やっぱりどこか心配事があるような感じだったろ?」

「そこまでわからないですけど、」

「ま、そこまで詳しく知らなくてもいいけど。とにかく、魔王の脅威ってのはあっただろ?」

「そうですね。国の方まで攻めてくる事はないですけど、それでも国境付近だと常に争いがあったと聞いてますね」

「その事を住人が知ってるからこそ、心のどこかで不安があるんだよ。だからこそ、明るく振舞ってるように見えるんだよ」

「そうなんでしょうか?」

「ま、ほとんど仮説だし、本当かなんて知らないけどな。けど、こっちの世界はそんな様子が一切ないんだよな。なんて言うんだろうな。平和ってわけでもないんだろうけど、なんか心配事がない感じなんだよな」


 こんな長々と喋っておいてなんだけど、全部仮定に想像を重ねて話してるだけだから。全部間違ってる事とかもありえるから。人の心を読むなんてできないから、間違いしかないだろうけど。

 それに、特に何とも思わず魔王討伐とかしてる俺が、他人の気持ちを理解しきる、なんて無理だと思うけど。


「それで結局、何が問題なんです?」

「俺達が呼ばれた理由がよくわからん」

「それは、魔王を倒すためなのでは?」

「脅威にならない魔王ってのは、ただ魔族の王様だろ?人間の王とやってる事は何一つ変わらないぞ。人間より強いだろうけど、それでも人間を襲ってないなら問題なんてないだろ」

「それは、そうなんです?」

「ただ人間より強いから滅ぼす、って発想はただの危険思想だ。人間で言えば、隣国は兵力が強すぎるから、敵対される前に潰す、って言ってるような感じだ。言いたい事も理解できるけど、別にそれを使って侵略とかしてないなら、危険と言うのは流石に早すぎるじゃん?いや、何かあってから対応するのは間違ってると思うけど、他にも取れる策ってあると思うんだよ。潰す以外の策」


 ほら。同盟を組むとか、保有する武具とかの放棄させるとか。後ろの方は絶対にできないだろうけど、同盟はまだ可能な範囲だと思うけど。


「ま、どうせ今から魔族がいる場所を聞かないといけないんだし。その辺りの事は聞いてたらわかってくるだろ」

「こういうのワクワクしますね」

「うん。あのさ。君も同じ立場だったんだからさ、一応わかるだろ?これは遊びじゃないから、絶対に俺以外の人の前でそういう事言うなよ?」

「そ、そうですね。気を付けます」




「ちょっと聞きたい事があるんですけど」

「なんだい、ここは情報屋じゃねえぞ?」

「別にそんな難しい事を聞くつもりはないです。あ、パン四つください」

「なんだ、わかってるじゃねえか」

「当たり前ですよ。流石に情報だけ聞いてさよなら、なんてしないですよ」

「それで、何を聞きたいんだ?」

「魔族がどのあたりにいるのか聞きたいんですけど」

「あ?あそこは不可侵領域だぞ?」


 なんだそれ?え?敵対してるんじゃないの?いやだからこそ不可侵なのか?


「いや、恥ずかしい事に最近田舎から出てきたばかりでしてね。詳しい事情をほとんどしらないんですよ」

「これは常識だと思ってたけど、知らねえ奴もいるんだな。よっぽど田舎だったんだろうな」

「いい場所ですよ、自然に囲まれてますから」

「俺も実家は田舎だからそれは知ってる」

「あ、そうなんです」

「で、聞いてどうするんだ?ほい、五つ。そっちの可愛い子に免じてサービスしといてやったから」

「どうも。えっと、そこを通らないためですね。田舎とは言え、そういった話は聞いたことはあるんですよ。けど、それがどこにあるのかなんて知らないもので」

「俺もちゃんと知ってるわけじゃねえからな。ここからずっと北に行ったところにある、ぐらいしか言えねえな」

「それで十分ですよ。そっちに行かないようにすればいいんですから」

「それもそうか。じゃ、御贔屓に」

「どうも」


 なんで不可侵なのか聞けなかったけど、これ以上聞くのは流石に危険だろう。ちょっと知らない程度なら田舎者で通せたけど、知らなさすぎるのは、疑われるだけだろうし。



「あれだけで大丈夫なのですか?」

「ま、北に行けばいいってわかっただけでも十分だろ」

「そうですけど、迷ったりしないのですか?地図もないのに」

「それは魔法でなんとかなる。一応食料も手に入れれたし、出発するぞ」

「ところで、どこからお金を取り出したのです?」

「企業秘密」


 短距離転移は、なにも人にだけ作用するわけじゃない。岩とか剣とかでも転移させる事ができる。

 しの応用と言いますか、活用して金を手に入れた。勇者だからって何しても良いわけなんてないけど、多少の金ならバレないしいいだろ。


「ほれ、出発するぞ」

「わかりました」





 うーん。やっぱり、会話が続かないって気まずい雰囲気になってくる。俺は今まで一人で旅してたから、余計に気になる。静かなのが気になるってより、ソフィアがどう思ってるのかが気になる。


「そういえば。今回はどんな魔法を手に入れたのですか?」

「さあ?まだ確認してないけど」

「なんだか平和ですし、確認してみてくださいよ」

「そうだな。びっくりするぐらい平和だよ、ほんと」


 えーっと。新しい魔法。新しい魔法は何処だ?

 ……

 ……

 ない。全部を覚えてるわけじゃないから、見逃しもあるかもしれないけど。けど、どのぐらい魔法を覚えてるのかは覚えてたはずなんだけど。

 だから、新しい魔法を覚えたら、その分数だって増える。正確に覚えてたらよかったんだけど、そこまで記憶力が良い方でもないし、わざわざ覚えても、どうせ意味のない数字って事ですぐに忘れてしまう。

 だから確実とは言えないけど、たぶん新しい魔法を覚えてない。ゲームみたいに、覚えられる数に限りがあるのか。それとも今回は召喚特典がなかったのか。それとも遂に魔法が被ったのか。


「どうやら新しい魔法はないっぽい」

「え!?前は絶対に一つは覚えると言っていたじゃないですか!」

「別にそこまでキレる事じゃないだろ」

「だって、魔王を倒させるのに、何も与えないのと言うのは!」

「別にここの人らが悪いって事じゃないからな。しゃあない事だし、そんなに怒る必要ないぞ?」


 まあ、新しい魔法が増えたところで、使いこなせない事の方が多いからな。そうなったら、あってもなくても大して変わらない。だって結局使えないんだもん。


「それに、たまたまって事もあり得るからな。もしかしたら、そっちの世界で魔法を手に入れられなかった可能性だってあるんだぞ?」

「そうですが」

「それに、わざわざ怒る必要なんてないからな。どうせならもっとちゃんとした時に怒りな」

「わかりました…」


 あ、これわかってないな。別にいいけど。


「それにしても、ずっと何も起きないですね。これって普通なのですか?」

「流石にそれはねえだろ。もうちょっとモンスターとか出てくるぞ、普通。それに小動物とかともすれ違ったりするからな。うさぎとかリスとか」

「それってやっぱり可愛いんですか!」

「そうだな。普通なら会うはずなんだけど、ここまで出会わないのは稀だと思うけど」


 あの国を出発して、三日経つ。なのに生き物と呼べるものに出会ってない。植物は除くぞ?

 別に食料に関しては、今までのストックがあるから困らないけど、いつストック分がなくなるかなんてわからない。

 俺一人だと、ちょっと我慢とかできるけど、ソフィアがいるし。流石に栄養にまで気を回すのは厳しいけど、それでもちゃんとご飯は食べるべきじゃん。流石に少女って歳じゃないかもだけど、やっぱりちゃんと食べないと育たないじゃん。うん。

 それにソフィアがいるから、今まで以上のペースでストックが減る。別にストック分が減るだけだから良いんだけど、やっぱりいざって時のために残しておきたい。そしてこれはいざって時じゃないと思う。だってちゃんとした森と言うか、自然って場所だ。動物だって探したらいるはずなんだけど。

 ……。いないんだよなぁ。探してないけど、流石に物音とか聞こえるんだけど。俺達以外の人とかいないんだから、ちょっとした音でも聞き逃す事はない、はず。それが一切聞こえない。

 これが考えすぎならいいんだけどな。誰かにつけられてないか?別に気配探索なんて使ってないけど、というか使いたくないけど。考えすぎって案を否定できなくなるかもだし。逆に考えすぎを認められる結果を得られるかもしれないけど。


「ちょっと休憩するか」

「珍しいですね。ハル様から休憩すると言うのは。あれ?初めてでしたっけ?」

「それはいいだろ。ちょっと用を足してくるから、ここで待ってろよ?」

わたくしを子供か何かと勘違いしてるのですか?」

「女性に年齢を聞かないって言う礼儀を守ってるんだから、そのぐらいは我慢してもらっていい?」

「私は15ですよ!もう立派な大人です!」

「とにかく、俺は用を足してくるから。モンスターとか来たら、大声出してくれたら駆け付けるから。うん」


 15って立派な大人なのか。やっぱり世界が違うと、常識とか全然違うんだな。いや、当たり前か。俺は魔法とかない世界だから、その辺りの認識も異なるだろうし。



「気配探索は確実にわかるから使いたくないけど、透明化はやりすぎたか?」


 誰かにつけられてるなら、恐らく俺を狙ってるとかだろう。知ってる人とか少ないだろうけど、勇者と言う事で呼ばれたんだし。つける、なんて悪い言い方じゃなくて、見張りとしての要因かもしれないし。あの王様も言ってた通り、信用してない人に任せきるのは危険だろうし。

 けど信用する要因として、モンスターとかと戦わせるならまだしも、一切戦わせないってどういう事なんだろ。いや、そこに結び付けるのは違うだろうけども。


「さて。この結果がどうなるのか」


 バチバチ!


「はい?」


 えっと。突然消えたから、探すために物音とか立てるとかと思ってたんだけど。なんか想像以上に酷い事になってない?俺のカウンターの魔法の音だったぞ、あれ。しかも結構近いって言う。

 え?近くに誰かいたの?ついでい言うけど、このカウンターって範囲って結構小さいのね。魔法の発動を感知したら、無条件で発動できるのが、半径2メートルぐらい。近く無かったら発動しないし、自分にも被害がくるから、あそこまでソフィアに注意しておいた。

 それともう一つ。俺に向けられた魔法を感知したら、恐らく30メートルぐらいの範囲がある。調べてないから詳しい範囲なんてわからないけど。それにどうやって俺に向けられた魔法の区別をしてるのかも知らない。

 そして今、2メートルぐらいの近さに人はいない。つまりは後者の原因でカウンターが発動したのだろう。けどなんで?てかカウンターって言っても、発動された魔法をかき消す効果とかはなかったと思うんだけど。

 カウンターだから、誤作動って事もないはずだけど。少なくとも魔法を使った人が近くにいるのは確かなんだろうけど。けど、あのカウンター、本当に威力が馬鹿だから。何も知らなかったら死ぬんじゃないかってぐらいの威力があるんだよ。


「何かあったんですか?」

「さあ?」

「何かありましたよね!絶対に何かありましたよ!絶対にありえない音が聞こえましたもん。あれはハル様の魔法なんじゃないですか?」

「えっとですね。話せば長くなるかもしれないので、とりあえず歩きながら」

「ちゃんと教えてくださいよ」

「わかりました」

「それより、あれがカウンタ―なんですか?もっとちゃんと教えてくださいよ。いたずらしようとしたら、あれが飛んでくるんですか?」

「いたずらするなって言ってだろ!それに、あれを説明するの、難しいだろ」


 ちょっと俺には説明できない。あの時言った時以上の事は言えない。



「で、結局あれは何だったんですか」

「俺も詳しい事はわかってないけど。それでもわかるのは、誰かが魔法を使ったんだろうな。それも、今まで物音を立てないようにしてたような人が」

「魔物で魔法を使うのはいないのですか?」

「俺もそこまで知らないけど、モンスターって知能低いからな。物音を立てないで行動するって事はできないと思うんだよ」

「と言う事は、誰かが私達のすぐ近くにいたと言う事ですか?」

「さあ?そうう事なんじゃないの?」

「では、その人はどうなったのです?」

「それこそ知らないけど。下手したら死ぬかもしれないな。モンスターの大群に襲われでもしたら」

「そんな!」

「でも、今まで俺達に気づかれないように、モンスターとか動物を狩ってた人物なら、この程度で死ぬことは無いと思うけど」


 まああの電気を受けたらな、しばらく動けなくなると思うけど。ショック死なんて事もありえそうだけど、それは考えないでおく。


「それに、そんな事まで気にかけてたら、魔王討伐とか、とてもじゃないけど向いてないぞ?前も言ったけど」

「聞かされましたね」

「そりゃ、割り切れとも言わないけど。それでも、無理なものは無理なんだって理解はするべきだ」

「それでも、やはりそこまで強くはなれません…」

「別に強くなる必要はない。そういう心構えでいるべき、ってだけだ」


 俺の場合、既に手遅れとは思うけど。今までに助けられなかった事とかざらにある。今でこそ負けるなんてありえないってぐらい強くなってるけど、初期なんてあくまでも勇者としての最低限の力しかなかったから。自分を守るので精一杯だったから。

 ここまでピュアと言いますか、こんな事を考えられるのが羨ましい。うん。俺のようにさせないために、頑張るしかないよな。

 えっと。ギャグってなんでしたっけ?

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