表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ それは友を探す旅の始まり





いばらの道のそのまた深くにイギリッスよりも遠いハーゲンダッチの森があった。


その森を超えた先、ヨーデルヘーデル平原の山際に一際目立つ建物があった。


トールトッポの城。人々はその建物をそう呼んだ。


 「果てはどこから始まってどこで終わるのか?」


 トールトッポの城に住む、安ジョア伯爵の決め台詞だ。


 そのセリフを聞いて喜びに近しい感情を抱く人間は一人もいなかった。そう人間は。


 「伯爵のギャグはいつ聞いても最の高だよね」


サボテンのぽにきはそういった。


 「でもさあ、一人でお城に住んでるのって、暇を持て余す行為となにが違うの?」


 ぽにきは安ジョア伯爵の怒りを買ってしまった。


 「どうやら友だと思っていたのは私一人だったらしい。君はそこらへんに生えているサボテンかな」


 安ジョア伯爵はわかりやすいくらいに拗ね散らかしていた。


 ぽにきは考えた。いったん頭を冷やすべきだと。


 サボテンのぽにきが城から消えてしまい、安ジョア伯爵は涙をながした。


 「ああ、私は、私はなんて愚かなのだろう。是ではまるで愚かな人間そのものではないか。ああ、そこら辺のサボテンに話しかけたところで本当の笑顔をみることは叶わない」


 そこで安ジョア伯爵も旅に出ることにした。サボテンのぽきにを探す旅に。


 最初に安ジョア伯爵が訪れたのは南の北にある確かなる城だった。


 「ここにはおそらくサボテンは生えないだろう」


 きっと信じた真実は永遠に叶わない。でも、見つけるよ私は。


 確かなる城の内部は複雑とは全く言えない。むしろその逆で単純明快であった。それはドアがたった一つしかないことを意味している。

  

 安ジョアは迷うことなく扉の先へ進む。そこには緑色をした果てしなく巨大な宝石があった。しかしその宝石に対する安ジョアの感想はメロンパン以下という極めて妥当なコメントだった。


 しかしそれに納得できないモノがいた。


 「オレ様はメロンパンなんぞ知らないし、予想するにメロンパンはオレ様よりもかなり安いだーろう」


 なんと宝石はただのゴーレムだった。


 安ジョアは知り合いの博士の存在を思い出した。だから、ゴーレムの一部を破壊し持ち帰ることにした。


 確かなる城から消えた安ジョアは、次にマッケンローニーの島を目指した。


 その島には伝説のピアニッシモが存在しているらしいという噂をコンビニの前でたむろしている若いが、決して上品とは言えない少年のようなクソガキからの情報だった為信頼することは出来なかったが、もしかしたらサボテンが生えている可能性もあったし、なんとなく海に行きたい気分と錯覚したので入念な準備をして行った。


 「海のサボテンとはまさかサンゴのことかね」


 「違うが?」


 突然の返事に船から転がりおちて衣の全てに満遍なく塩をしみこませてしまった安ジョアは、絶望を通り越して無の感情が全てを支配した。


 「サンゴはどるもんてーりだが?」


 どうやらこのサンゴ、自己紹介をしているようだ。しかし安ジョアの感情は無に支配されている。サンゴは若干の虚しさと罪悪感を感じた。


 「海の世界を旅できるが?」


 なんとサンゴは人間を海に招きいれるつもりのようだ。


 これは許されない。そう思ったサメのシャンプーは恐ろしい人間がいるにも関わらず、ありったけの勇気を出してサンゴに噛みついた。


 サンゴの未来は粉々のカルシウムになる予定だったが、人間の欲望、海の世界への好奇心によって守られることになる。


 タンコブを新しくチャームポイントとして受け入れたサメは目から心の汗を流しつつ、海の藻屑と並走してどこかへ行ってしまった。


 海の世界は端的に表現すれば青だった。


 あと結局息が出来ない。


 安ジョアは船に戻るとサンゴを粉々のカルシウムに変え海へまいた。サメは正しかった。嘘を見抜けないのは少し正直に生き過ぎているのかもしれない。


 マッケンローニーの島は今いる位置から北と南に少しと、反対側に一直線に行った時にたどり着くようだ。


 しかし安ジョアにはやることがあった。サメの捜索だ。奴は嘘を見抜き、正義を実行する能力を持ち合わせている。きっと頼りになる。


 2頭を追うものは…ということわざもあることなので、しぶしぶ安ジョアは正義のサメをあきらめた。しかしきっとまた会えるはずだ。


 島に着くといきなりピアニッシモが現れた。しかし、ピアニッシモの正体は結局のところただのゴーレムだった。


 「また繰り返しかよ。飽きたし、どうせまたこうなる」


 「いやいやわからんぜ?」


 ピアニッシモは破壊され、安ジョアはパターンに従い一部を持ち帰った。


 城に帰った安ジョアは2つの欠片を眺めた。それらは意外ときれいで、尚且つ自動で動いていた。気味がわるい生きてないモノを城に置いておくのは気が狂うのを早める作用があるに違いないと思った安ジョアは、さっそく博士の住んでいる崖際の秘密基地に行くことにした。


 「安ジョアよく来た。でも今は素材とか集めるのが面倒なので何もする気が起きないぞ」


 「2つほど使えそうなパーツがあるけれど欲しいかね?」


 「人から物を貰うという行為は空気を肺に吸い込むことよりも簡単だ」


 博士は作業を始めた。


 「マジでゲロ吐きそう」


 博士は苦しみながら発明をしている。そして実際に胃の中身を体の外に出しやがったので、再び安ジョアはサボテンを探す旅の続きを始めるのである。




 


 

人物紹介

安ジョア伯爵…人間

ぽにき…さぼてん

博士…人間

緑色をした果てしなく巨大な宝石…ただのゴーレム

ピアニッシモ…ただのゴーレム

どるもんてーり…サンゴ

シャンプー…サメ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ