第1話:朝の仕事
「そうね」
お嬢様は、紅茶に手を伸ばす。
ほら。そう言って、この方はまた自分の事をしようとしないんだ。
「詩紅羅お嬢様!起きて下さい。もう6時ですよ」
皆様初めまして。私、珀思 祢音と申します。
身長・体重は詳しいことはお教えしません。でも結構標準なのです。
身長:140センチ台 体重:25〜35キログラム
一応、お教えしておくようにとお嬢様から言われました。
あ、お嬢様というのはそこでスヤスヤと眠っておられるお方の事です。
町茶 詩紅羅様
町茶一家の主である詩紅羅様は、16才という若さで町茶呉服店を、わずか3年で全国に広げた大企業家なのです。
さてさて、そろそろお嬢様を起こさなくてはいけませんね。
詳しい事は後に分かるでしょう・・・。
「詩紅羅お嬢様、紅茶が冷めてしまっても良いのですか?」
「やだ!!冷めちゃダメ!今起きるから冷めないで!」
お嬢様は勢い良く、布団から(ようやく)出てきた。
その衝撃で、腕をおもいっきりベッドの柵にぶつけたらしい。
本当に、この方はこう言わないと布団から起きて来ないということを、改めて思った。
「大丈夫ですよ。そんなに早く冷める紅茶など、お出ししません」
お嬢様は少し落ち着くような感じでうん、といった。
私はお嬢様のこの優しい声が好きだ。
淡いピンクの髪、透き通るような白い肌
亜麻色の優しい眼、聞くもの全てが聞き入ってしまうようなそんな声
そして・・・・
「この香り…。今日はアールグレイね」
決め手はこのふわっとした優しく可愛い笑顔。
詩紅羅お嬢様、その笑顔皆様に向けてきて下さい。きっとイチコロですから。
「正解です、お嬢様。朝食の準備はもう出来ております。付け合わせはどうされますか?」
「うーん、どうしよっかな。じゃあサラダでいいや」
「かしこまりました」
「あ!トマトいっぱいだよ!!いっぱい入れてね!?」
トマト・・・。今の時期あまり取れないのですが。どうしましょう。
「なによその目〜、・・・祢音なら、出来無くないでしょ?」
お嬢様は悪戯をした子供みたいに、笑った。
出来ない訳じゃない。トマトくらい簡単だ。だけど、この力は
コ の 血 カラ は ・・・
「・・・はい」
はぁ、本当にもう。この方は無理な注文ばかりしてくるんですから。
とりあえず、お嬢様が着替えるように促さなくては。
「お嬢様、早くお着替え下さい。そうしないと私、サラダ作れません」
「えー。めんどくさい」
あっさり言われたー。だ、大丈夫!私なら出来ます!!
「で、では!私がお洋服を選ぶので、それを着るというの「それはイヤ」」
・・・一回殴って良いかな?
って、ああ!!すみません皆様、私なんか変なこと思ってしまって。おほほほほほほほ。
さて、詩紅羅お嬢様を着替えるように促さなくては。というか、ここまで来たら強行手段!!
お嬢様の位置!ベッド!着替えの服!持った!そしたら、ゴォオ!!
「お嬢様!新しく新調したお洋服です。これなら着て頂けますか」
「はぁ。祢音、あなた何も分かってないのね」
お嬢様は呆れたような声で言った。
「祢音はセンス良いから、祢音の選んだヤツ。着ても良いのよ」
じゃあ何でイヤって言ったんスか。でも
「そう言って下さるとは、とても光栄です。ありがとうございます」
うん、こっちこそと、お嬢様は言った。
えーとそしたら何についてイヤって言ったんだ?
「あたしはね、洋服じゃなく和服が着たいの」
「あー、そうゆう事ですか。失礼しました。では、和服をお持ち致しますね」
和服。そりゃそうだ。だって詩紅羅お嬢様は町茶呉服店の社長なんだから。