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涙の英雄  作者: サウスのサウス
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3 英雄の真実

他作品を書きたいのに別のアイディアばかり出て来て困る・・・まあ、結局溺愛に行き着くのですが(笑)



「はぁ・・・地下にこんな場所があるなんて、予想外っすね」


クラウドは驚きを隠せずにそう呟く。場所は移って魔獣に襲われた森の地下に現在3人はいた。魔獣に襲われた2人を救った本人であるレオンという少年は二人を先導しているのだが・・・その隣にはニコニコ顔をしたアリシアがいた。


「あまり騒がしい場所は好きじゃないから・・・」

「それにしても地下にいるとは予想外にも程があるっすよ」

「そう・・・」


無気力そうだが、律儀にクラウドの言葉に返事をするレオンのことをクラウドは少しいい奴かもしれないと思いつつ・・・その隣に笑顔でレオンを眺めているアリシアからの視線に、御愁傷様と内心で合掌していた。

アリシアはレオンに自己紹介をしてからここまで特に目立った行動や言動はしてないが、そこそこの付き合いのクラウドからすればそれは不気味なほどで、間違いなくこのあとに何かあるだろうと思ったからだ。


やがて階段を下りてから明るいお客様用に見える部屋に二人を座らせてからお茶を出して一服してから意外なことにレオンから本題に切り出した。


「それで・・・僕に何か用事?」

「ええ。あなたのことを知りたくてきたのよ。レオン」

「何を知りたいの?『涙の英雄』とかいう名前のこと?それとも僕が君の国に手を出さないか調べにきたの?」

「そうね・・・前半についてはなんとなく興味があるのだけれど、後半はどうでもいいわね」

「ど、どうでいいって・・・姫さん愛国心とかないんっすか?」


二人の会話を聞き流していたクラウドが思わずそう突っ込むが、アリシアはそれに対して不思議そうな表情で答えた。


「あるに決まってるでしょ?私ほど自国が好きな人もなかなかいないんじゃないかしら?」

「その軽さが怪しいんっすが・・・」

「まあね。あ、彼が姫って私を呼ぶのは私が王女だからなのよ。ロジエール王国って知ってるかしら?」

「名前は」

「そう。私はその国の第三王女アリシア・ロジエールよ。改めてよろしくねレオン」


そう言って微笑むアリシアにレオンは頷いてからふと、首をかしげた。


「僕の態度は変えた方がいい?」

「不要よ。素のあなたのことを知りたいから特に気にしないわ」

「・・・そう」


レオンの表情は会った時から全く変わらずに眠たげなままだが、少しほっとしたような雰囲気をアリシアもクラウドも感じた。

そんな些細な変化ですら見逃すまいとアリシアは熱い視線をレオンに向けるが、そんな視線を知ってか知らずかレオンは一口お茶を飲んでから一息つくが、そんな二人の様子を見かねてクラウドは思わず質問していた。


「なぁ・・・あんた本当に『涙の英雄』なんっすか?」

「・・・その呼び名は恥ずかしい」

「実力を疑うつもりはないけど・・・見た目と実力が釣り合ってないから聞きたいんっすが、あんたが町に出回っている噂の本人なんっすか?」


熊のタイプの魔獣をどのような手段を用いたかわからないが、一撃で倒したレオンの実力をクラウドは疑うわけではないが、いかにも自分よりも年下の華奢な、一見すると少女にも見える少年が成した偉業にそう聞かざる得なかった。

そんな命の恩人に対する非礼にも取れる言葉に慣れているのだろうか、レオンは変わらず眠たげな表情をしたまま頷いて答えた。


「一応そう。町でどのくらいの噂を聞いたのかわからないけど、帝国と共和国の戦争に余計な横槍をいれたのは事実」

「その・・・なんでそんなことをしたんっすか?そもそもそれだけの力をどうやって(・・・・・)得たんっすか?明らかにあんたの力は人間が手に入れられる領域を逸脱している」


噂では戦争を一人で止めるほどの力。あらゆる魔法や武器も効かない上に、人間では撃破が難しい魔獣である熊を一瞬で消すほどの力。少なくとも普通に生活している上では得られないはずの圧倒的な力。それを目の前の少年が本当に得ているとしたらどうしてなのか?疑問は疑問を呼ぶ。そんなクラウドの疑問にレオンは少し間を置いてから簡潔に答えた。


「貰った」

「貰ったって・・・誰にっすか?」

「女神様」


ぽかーんという擬音がふさわしいだろう。その返答にクラウドはしばらく呆気に取られてから苦笑気味に答えた。


「は、はは・・・あんたも冗談とか言うんっすね」

「真実。気持ちはわかるけど」

「・・・マジっすか?」


あまりにも表情が変わらないレオンの様子にクラウドは冗談ではないと悟って驚きの表情を浮かべた。


「人間が神から力を貰ったと?」


本来人間が神から直接力を貰うことなどあり得ない。本来神というのはどこまでも人間を平等に扱うものだと一般的には認識されている。それが、もしレオン個人に力を与えたとしたら、神に対する信仰心の強い人間達の反感はもとより、世の中の常識をひっくり返しかねないほどの大事だ。


「大抵は信じない・・・まあ、少し簡潔に言ったけど、正しくは女神様と取り引きした」

「と、取り引き?」

「そう。その力で帝国と共和国に交渉に行った」

「それでも十分すごいっすけど・・・にしても」

「何を犠牲にしたの?」


それまで黙っていたアリシアが唐突にそうレオンに聞いた。表情はそれまでの笑顔とは程遠い真剣な表情で、その表情に少したじろぎつつもレオンは表情を変えずに答えた。


「僕の一部を対価にいくつかの力を貰った」

「一部・・・というのは、あなたがさっきから表情を一切変えないことにも関係があるのかしら?」

「・・・うん。そう。詳しくは説明しずらいけど、僕はーーー」


表情は一切変わらずに、でもどこか寂しそうに見える雰囲気でレオンは言葉を発した。


「ーーーたった一つの感情を除いてすべてを対価にしたんだよ」




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