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魔法の手《マジックハンド》  作者: 青月 地蔵
1章 発現
6/18

発現 6

「いやだから知ら―――」


写し出されていたのはビルの屋上で俺と彼女が話しているところだった。


「知らないわけないよな? 」

男は俺の鼻先へ写真を突き付ける。

(な、なんで写真が……? )声が出なかった。

適当にちょろまかすつもりがとんでもない証拠を出され、思考がまとまらない。 

目の前で騒ぎ立てている男の言葉は耳に入ってこなかった。

(どうする? どうすれば逃げられる? )

それしか考えられなかった。

突然眼前の写真が赤く光を発し熱が生じた。

「?! 」俺は急な事に思考を中断させられる。写真から逃げるように後ろに飛び退き、目の前の男を改めて見やる。

「……そうか、答えたくねえってか。なら質問はしねえ、力ずくで吐かせてやる」


……そうだ、普通写真が独りでに燃えるわけがない。

その男の両手は赤々と光り、炎に覆われていた。



乱れた呼吸音が人気のない路地のブロック塀に反響する。

俺は自宅から遠ざかるように全力で走っていた。

地の理やスタートダッシュ、そして時々1つの魔法の手(マジックハンド)で無理矢理体を引っ張り速度をあげてやっと奴より少しだけ早く移動している。

だが、俺の体力が限界に近い。

自身の運動不足をこんなに恨んだことは一度もなかった。

ちらりと肩越しに後方を見る。

汗こそ出ているようだが、まだまだ余裕そうな男の顔が見えた。

(クソッ、どうすれば良い ……やっぱり戦うしかないのか……? 火使うバリバリ戦闘向きの奴に勝てるとは思えな―――)

背後でパチパチと何かが焼けるような音がした。

(なにか来る?! )

前のめりになっていた体に急ブレーキをかけ、脇道へと飛び込む。

瞬間、赤い閃光が先ほど俺の走っていた路地を包み込んだ。

近くにいるだけで恐ろしく熱いのに、冷や汗が止まらない。背筋が凍るようだった。

ぎりっと歯を食い縛り体の震えを抑え、走り出す。

(どうにか打開策を考えないとやべぇ……。……あ、あんなの食らったら……)

火だるまになり叫びながら絶命する自分が脳裏をよぎる。

両足を動かす力が増した気がした。



無我夢中で走っている刃は自身が、今どこを走っているのかもう分かってはいなかった。

空き家の目立つ町外れの方まで来ていることを彼は理解していないだろう。

何故なら背後からパチパチという音と共に放たれる、帯状の炎を避けるのに脳のリソースを大幅に割いているからだ。

とにかく足を止めずに走り続ける事でいずれ、男を撒けると信じて走り続けていた。


だが対照的に追う側の男―――津院 陽斗(シンイン ヨウト)―――は落ち着いて状況を分析していた。


(奴はいつまで走り続けられる? 聞こえてくる呼吸の乱れからしてそう長くは持たねえ筈。

……にしてもスピードが落ちねえな。なんならときたま速度が上がってるのが解せねぇ。

奴が右手を前に出したときに、何かに引っ張られるようにして速度が上がってるようだが……、あれが奴自身の超能力チカラか? )

知らねえ奴との戦闘では相手の超能力チカラを見極めるのが重要だ。

幾つか仮説を立て、絞りこむ。

(……それか透明人間の仲間に手伝ってもらってる? 見えない奴に引っ張られてるように見えるが……。

いやだとしたら俺に干渉してこねえのは不自然だ。

……なにより深夜、高層ビルの屋上にいたし、なにか奴自身の超能力チカラだな。

……正体はわかんねえけど)

思考を一度中断させ一つ息を吐く。

そして俺は両手の熱量を一気に上げた。

両の手が更に明るくなる。

そんな光輝く掌を重ね、前方めがけて炎を放つ。

一瞬にして視界が真っ赤に染まる。

2、3度瞬きをすると炎は消失し、ブスブスと嫌な匂いと共に煙を出す樹脂製の標識板や、焦げて黒くなったコンクリートが現れる。

がその先に人が転がっている様子はない。

(チッ、避けられたか)

先ほど奴が走っていた場所から、最寄りの脇道へとダッシュで曲がる。


瞬間、俺はなにかに足首を掴まれた。

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