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魔法の手《マジックハンド》  作者: 青月 地蔵
1章 発現
5/18

発現 5

「とりあえず母さんが出ていく10時くらいまで、この部屋でじっとしといてくれたら後は好きにしていいから」

木葉は目元を擦りながら起き上がり、「分かったー」と欠伸をする。

それだけの動作だが、白い羽や白い髪、そして男の10人中10人が誉めるであろう容姿のおかげで、長い眠りから目を覚ました天使のように見えた。

刃は暫しそれに見惚れていたが、慌てたように頭を振り「じ、じゃあとりあえず行ってくる」とドアノブを捻る。

「行ってらっしゃい」

その声を聴きながら刃は階段を降りていった。



「もう忘れ物はないかい? 」

「あぁ、大丈夫。父さんこそ無いの? 」

「バッチリだよ」

そうして、玄関の外で待っていた父さんと少しだけ話す。

それが平日の朝の日課だった。

「仕事頑張って」

「あぁ、刃もな」と父さんは俺に手を振る。

そして俺は父さんと別れ、通学路を一人歩く。

ブロック塀に挟まれた、車2台がすれ違うのがやっとな細道―――とは言えこの時間に限らず、この道はそんなに走っていない―――を通学カバンの持ち手に手を添えながら歩く。

右手に下げている通学カバンは1つだけ低部に魔法の手(マジックハンド)を潜り込ませて支えている。本来は右手で持っているフリすらいらないのだが、万一見られた場合に目立つのは嫌だった。

俺はT字路を右に曲がる。

すると俺の通う高校、市立広光(ヒロミツ)高校の正門が見えてきた。

その先には4階建ての建物が鎮座している。

そのまま門を進み、引き門辺りに立っている先生に軽く会釈をし下駄箱へと向かう。

靴を履き替えながら、たむろっていた何人かのクラスメイト達と適当に挨拶を交わし階段を上がった。



刃は2年A組の教室へ入り、真ん中の列3番目の右側にある自分の席へと座ると、カバンから教科書等を取り出し授業に備えた。

その後睡魔に負けたり勝ったりしながらもなんとか授業を受け続けた。



SHRの終わりを告げるチャイムを、俺は伸びをしながら聞く。

教室は放課後の予定等の会話で活気づいていた。

(さてと、帰るか)授業時間を睡眠に充てる事で大分元気になった俺はカバンを持ち、教室から出る。

廊下に出ると、黒髪の少年の手を引っ張るようにして歩く桜色の髪の美少女との二人組や、目付きの悪い少年と栗色の髪の小柄な少女等が談笑しているのが視界の端に写る。

それを出来るだけ見ないようにしながら、一人下駄箱へと向かった。

(カップルばっかじゃねーか、当てつけかよチショー。……まぁ多分気にすらしてないんだろうけど。

というかまず女の子とかじゃなくて、男友達すらいないって俺ヤバくねぇ?

いや挨拶する奴らぐらいはいるし……、あれ? 友達ってなんだっけ……? )

俺は自身の哀れさに悲しくなりながら、正門をくぐる。

(早く帰ろ……)

いつもより少し早めのペースで家への帰路を進み始めた。



曲がり角に差し掛かった時、俺の前に人影が突然現れる。

驚いた俺は体に急ブレーキをかけ、ピタリと止まる。

幸いぶつからずにすんだようだった。

「おっと、大丈夫か? 」

人影は俺の方へと歩み寄ってくる。

紺色のスーツに身を包み、落ち着いた色のスーツとはミスマッチな赤色の長髪を後頭部で結んでいる、なんともあべこべな男は俺の顔をじろりと見る。

「え、あぁはい」その視線は訝しげで良い気持ちはしない類いの物だった。じゃあ失礼しますと言って隣を通りすぎようとすると、「ちょっと待て」と肩に手を置かれ止められる。

「……なんですか? 」俺がそちらを向くと「俺今この子探してんだけどよ。何か知らねえか? 」その男は俺の肩に置いていた手を懐へと手を入れ1枚の写真を取り出す。

「いや知ってる―――」


そこに写っていたのは豆丘さんの顔だった。


「わけないじゃないですか」一瞬言葉に詰まったが、どうにか言葉を紡ぐ。

昨日の話から察するに、豆丘さんの家? はまともじゃないのは予想できた。

なにより家出してきた人間が、1日で帰りたがるとは思えなかった。

とりあえず今回はしらばっくれてしまおう。

「そうか。ならこれは? 」また懐からもう一枚写真を取り出す。

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