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魔法の手《マジックハンド》  作者: 青月 地蔵
1章 発現
4/18

発現  4

俺が部屋に戻ると、豆丘さんはすーすーと寝息を立てていた。

(……疲れてたんだな)

そう言いつつ自分も欠伸が止まらず、思わず苦笑する。(俺も寝よ)

と、冷房のタイマーを設定し椅子に座る。

そして机に突っ伏した。

(なんか学校で居眠りしてるみたいだな)

なんて思いながら俺は眠りの世界へ旅立っていった。



無機質な電子音が周りの人間に朝だと知らせを出す。

びくっと体が跳ね、手探りでスマホを見つけ目覚ましを消した。

「……ん」

と体をのそりと動かし欠伸をしている男の目に覇気はない。

眠りに落ちてから4時間も経っていないのだ。

無理もないだろう。

「あーすげぇ眠い……」

のろのろと立ち上がり、ハンガーにかけられた制服を手に取る。

そして着替えようと短パンに手をかけた瞬間、彼はこの部屋に今一人じゃないことを思い出す。

布団の方を首をやると、まだ熟睡中の豆丘木葉がそこにはいた。

彼はそちらを気にしながら手早く、裾に足を通し袖に腕を通す。

そうして着替えが済むと彼はため息をつき、「家での着替えで疲れたのは初めてだな……」と机の上のスマホで時間を確認する。

いつものペースなら間に合う時間だった。

ぐぐっと伸びをして、彼は階段を降りた。



洗面所で顔を洗い終わり、リビングに行くと、スーツ姿の眼鏡をかけた柔和な雰囲気の男が新聞を眺めていた。

俺が来たことを察したのだろう、父さん―――真九呑地 千治(マクノミチ センジ)―――は新聞を畳み「おはよう」と笑みを浮かべる。

「おはよう」と返し、俺も向かいへと座る。

ハムエッグにサラダ、そしてトーストが目の前のちゃぶ台に置かれていた。

俺が座ってから少し遅れて、台所から現れた母さんも父さんの隣に座る。

「皆揃ったし食べようか」父さんはそう言い「頂きます」と呟く。

それに倣うように俺と母さんが言い、手を合わせる。

……正直食欲はあまり無かったが、とりあえずサラダを口には運ぶ。

口の中で咀嚼するが、味がしない。

寝不足の時の朝食ってなんでこう……。

等と思っていると母さんから見られていることに気がつく。

何だろうと思い見返すと、「食べられないって顔してるね」

ずばり事実を言い当てられ、思わず驚く。

そんな俺の様子を見て母さんはため息をついた。

「……そんなことはないよ? 」俺は少し強引にハムエッグの切れ端を喉に押し込んだ。

「……あんな時間に食べるから朝食べられないのよ。まさか残すなんて言わないわよね? 」

(それ俺が食べたわけじゃないんです……)

それは勿論と言いかけたその時、「まあまあ母さん」とそれまで静かに食べていた父さんが口を挟む。

「俺も若い頃は良く食べてたよ、夜食。凄く美味しく感じるんだよな。……でも朝食を残すのはいただけないな」メガネをくいっとあげ、此方を見る。

なんとも居心地の悪さを感じて、「た、食べるって! 」と半ばかきこむようにサラダを口に放り、トーストをかじる。

そんな俺の様子を、微笑みながら見る両親。

この二人には敵わないな、と思いながらサラダを口に運んだ。



「そろそろ出ようか」千治は朝食を食べ終わった刃へと話しかける。

「あぁ、うん」と腰をあげ立ち上がる。

そのまま玄関まで二人で歩き、刃は靴を履く寸前でピタリと止まる。

「どうした? 」

「いや、ちょっと忘れ物してたから取ってくる」

パタパタと階段を上がり、刃は二階の自室へと向かう。

自室の机の上にあるノートとペンをとり、さらさらと幾つかの事を書く。

そうして刃はそのページだけ破り、木葉の前に置き、肩を揺する。

「……ん? 」

「今から学校だからとりあえず紙見て」

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