78日目:リーダー、カエデ
食べたかどうか、その真偽については訊かないでください。
「まさか、ほんとうにたべるとは」
「いやいや、食べろって言ったの君達じゃないの!」
「まあ、いい。じゃあ、ついてこい」
ついていこうとするも、彼らの足が速いのか、私の足が遅いのか、どんどん突き放されていきました。少年はそれでも優しく、少し進んでは止まって、私のことを待っていてくれました。しかし、少女の方はあまり私のことを好いてくれていないのか、ずんずん進んでいきます。雪の中を、いつもと同じようなスピードで進めるという能力を、彼女は持ち合わせているようです。だからこそ、あんな風に武器を構えているのも様になっていたのでしょう。
猟師って感じが似合います。
あるいは、殺し屋さん。
「ねえ、君たちはどうしてあんなところにいたの?」
私があんな人が踏み入れないような銀世界にいることはさておくとして、彼らがあの辺にいた理由は見当たりません。この移動中にも、いろんなところを見ていましたが、それでも食料のようなものはどこにもないですし。
「それはね、ていさつってやつだよ」
「偵察?」
偵察。それは、あの炎と関係しているのでしょう。炎の出どころであるあの教団「ウロボロス」と関係しているのでしょう。
整理すれば整理するほど簡単になっていくのはありがたい話です。いや、よくあるのでしょうけど、たまにあるじゃないですか、聞けば聞くほど何言っているか分からないみたいなこと。でも、今回は違います。前回や前々回より、はるかに簡単です。
要は、大人(教団)vs子供という構図になっているのでしょう。
そして、私は子供側に入ることに成功したというわけです。
……それは、私が子供っぽいからなのでしょうか。
「あ、そろそろだよ」
そう言って指差すその先は、確かに学校でした。
校門があって、校舎があって、紋章があって。
ただ少し違うかなと思うのは、堀が深く掘られている点と、5mくらいの塀でしょうか。
……まるで、要塞のようです。
「すごい……門だ。いたっ」
板チョコのような大きい門に、突起が無数に飛び出しています。どうやら、そこの間には電流が流れているようで、私はそれを触ってしまいました。
それだけなら良かったんですけど。
「あ、おねえちゃん、さわっちゃったら」
その忠告も時すでに遅く、気づけば塀の上から門の上から、堀の中から槍のような武器を突きつけられてしまいました。その速さと言ったら本当に瞬きをする一瞬で、その正確さはもはや人間を超えています。
人間というのは、やはり動物なんだなと思うところがあります。
例えば、こんな時。こういう、武器を突きつけられた時、意外にも冷静でいられるのです。しかし、まあ、冷静だからと言って動けるわけではないんですけどね。
「やめろ。そいつは、てきじゃない」
聞いた事のある声が聞こえました。
しかし、それは静さんのものではありませんでした。
上を見ると、そこに彼女はいました。
私の半分くらいの身長。短い髪に、小さな手足。仁王立ちする姿は、子供ながら様になっている、鬼の眼をした少女。
「そいつはきゃくじんだ」
カエデちゃんでした。
「え、もう中入っていたの?」
その問いかけに反応することはなく、ふわっと後ろを向いて去っていきました。
かっこええ。
「……ねえ、ハヤテ君」
「なんでしょうか?」
「お姉ちゃん―カエデちゃんって、何者なの?」
「りーだーだよ。こっちのじんえいの」
小さいのに陣営とか、よく知ってんなぁ。
それくらいのころなんて、私フライパンを何かのパンだと思ってたよ。
「さあ、はいろう。なかで、せつめいするから」
姉に負けず劣らず、しっかり者の弟でした。




