66日目:学校案内
「ちなみに、ここまでの道は誰に聞いたの?」
その香りは懐かしく、その見た目は私の心を落ち着かせ、さわり心地はなめらかで、それによって聞こえる、ミシッ、ミシッ、という音には心地よさまで感じさせます。
何の話かと言えば、建物のお話です。
木材によって建てられた、いわゆる木造建築のこの学校は、3階建て4つの棟で構成されており、それぞれ幼稚園・小学校低学年、小学校高学年、中学棟、高校棟なんだそうです。
子供たちは(私も、その子供の一人なのですが)、そんなに多い方ではなく、むしろ少ないのかなと感じるほどで、だからこそみんな仲良しなんだろうなという印象を強く受けました。
ただまあ、その関係性の強さというのは、少し異常に感じますが……。
友達意識が強いというか、仲間意識が強いというか、連帯感が求められそうだなぁと何となく考えてしまいました。
転校生って、こんな気分なのかな。
まあでも、幼稚園から高校まで一緒なら、嫌でも全員と何かしらの関係は持ちそうですし。
委員会とか、行事とか。同じクラスとか、隣の席とか。
こういう狭いコミュニティだと、恋愛沙汰になったとき大変そうだなぁという感情も、幼稚園児を見ていると一瞬で溶けてなくなってしまいました。
どうしてあんなにも純粋無垢な視線で私を見てくれるのでしょうか。
可愛いです。
気づけば、もう最後の棟で、最後に職員室へと向かうそうです。
最後の部屋―職員室の隣の社会科室に連れられて、私は静さんに質問されました。
「ええと、それが……そのぉ、」
答えたくとも答えられない私に、彼女は追い打ちをかけてきました。
「男?女?」
なんだか、浮気検証されているみたいで怖いです。
この人、果たして結婚できるのでしょうか。
「いや、ええと、それが訊いてなくて……。たぶん、男の子だとは思いますが」
正確には、訊いたけれども答えてくれなくて、ですけれど。
でも、彼女はそのこと対して、怒ることはありませんでした。
考えてみれば、犯人を逃したとかそう言うわけではないので、怒られるなんてことあってはならないとも思いますけど、この雰囲気を感じてしまえば、誰でも謝ってしまいます。
「そう。じゃあ、もしかすると……」
顎に手を当てて、彼女は考え始めました。
そうしている彼女は、どこか知的さを感じさせます。
「もしかすると、君はレアキャラを引いたかもしれないね」
「レアキャラ、ですか?」
「ああ。なかなか出会えないという意味では、レアだよ。それが、良い意味とは限らないけれど」
そう言うと、彼女は教室の隅に置いてあった地図をせっせと持ってきて、それを広げました。地図自体は小さく、その分だけ字もまた細かかったです。
「細かすぎて、読めないんですけど……」
「ああ、私もだ」
「じゃあ、どうしてこれ広げたんですか?」
「細部は気にしなくてもいいからだ。赤い印のついたところだけ見てくれれば良い」
そう言って、彼女は地図の中に記されたそれを指差しました。
地図というのは、大きな島でした。
きっと、この街を示しているのでしょう。
三つの円を、北に二つ、南に一つという配置で絶妙なバランスで重ね合わせた形をしており、その南は文字がつぶれるほどに黒い森が広がっていることが分かりました。
そして、そこだけ異常に標高が高く、異様な雰囲気を漂わせていました。
そこのふもとに、赤い丸が記されていました。
「ここが、どうかしたんですか?」
「ここはな、昔は昔、更に昔のそれまた昔、牢獄だったらしいんだ」
「それが?」
「まあ、落ち着いて聞いてよ」
何が始まるんでしょうか。
私は、その辺にあった椅子に腰かけ、彼女は地図を片づけて真正面に立ちました。
「むかーし、むかし。あるところに―この島の南に、ある姉妹がいました。




