58日目:しんてん
「は、はい!」
思い切って手を挙げてみましたが、今考えると私って相当馬鹿でしたね。まあ、この行為も相当馬鹿なんでしょうけど、でも、一言会話に参加してみたいなと思った次第であります!
「ん?どしたの?」
「つ、つまり!しずさんがいいたいのは、もっと、じゆうにってことですか?やりたいことを、やりたいぶんだけやるってことですか?」
「そうそう。大体そんな感じ。わざわざ、大人に従わんくてもええやろがいってことよ。こっそり反抗することが、何よりの楽しみじゃないか!そういう時が、一番成長してると、私は思うけどね。まあ、個人の意見だよ。以上、ご清聴ありがとうございました」
「まあ、言い分は分かった。でも、一応お前には校則というものの縛りがある。親には、憲法的に縛りがある。それは、ちゃんと守れよ」
「すみません」
「はやっ!」
余りにも早すぎて、思わずツッコミを入れてしまいました。なんだか、やっぱりこの二人は仲が良いみたいですね。
「とかいって、ちゃっかり次の授業も休もうとしているじゃないか」
「だって、面倒じゃないですか」
「駄目だ。行ってこい。次の授業は、確か国語なんじゃないか?」
「さすが担任。そういう真面目なところ、好きだぞ」
「先生を馬鹿にするんじゃない」
「あ、頬真っ赤じゃん」
「そんなわけねえだろ!あと2分だから、早く行ってこい」
「はいはい」
軽い足取りで教室の外へと出ていきました。スキップでもしそうな、鼻歌でも歌いそうな、元気いっぱい明るい笑顔で、彼女はクラスへと向かいました。
話せたことが、そんなに楽しかったのですね。
「ったく」
「あのかたは、すごいですね。しょうせつかさんなんですってね」
「え、あいつそんな事言ってたの?」
「ちがうんですか?」
「……あいつ、とうとう嘘まで平気でつけるようになっちゃったんだなぁ。ちゃんと指導しないとな」
「しょうせつかさんじゃ、ないんですか?」
「違うんだよ。あいつは、確かに読書家だけど、文章も上手いけど、でも作家じゃないよ。彼女は、……これは言わない方が良いか」
切り替えて、彼は質問をしてきました。
「そういや、君は何歳なんだい?」
「わたしですか?13です」
あ、それは元の世界の年齢でした。今の見た目だと、齟齬が生まれてしまいます。
「ほー、じゃあ中一か。で、その見た目ってことは…、さては」
そういう言い方されると、俄然気になってしまいますが、ここはスルーということで。
「とりあえず、まずは君のことだな。最後に両親と会ったのはいつ?」
「くるまのなか、です」
「……へえ、なるほど。じゃあ、その時、ご両親はどんな格好をしていたの?」
「……すみません。おぼえていないです。もえちゃってたから」
「そうか……、って、へ?燃えてた?」
私は、黙ってうなずきました。
急に彼の瞳孔が揺れ動き始めました。何でしょうか、こちらも気になります。
「ねえ、車の中って、どうなっていた?」
「なんか、いつもとちがうみたいな」
「……マジかよ、おい」
彼は、両手を顔につけ、天井を見上げました。
……へ?どうしてでしょうか。
「さなちゃん、落ち着いて聞いてくれるかな」
そう言って、彼は私の両肩に両手を乗せました。
「…、いやダメだ。さなちゃん、必ず、見つけようね」
意気込まれると、余計に気になります。
「心当たりは、あるんだ」
「くわしく、きいてもいいですか?」
「君がどういう状況になったのかは、分からないけれど、どうしてこういう状況になったかは、見当がつくってことだよ」




