44日目:告白の前に
到着した港の真ん前に、その巨大な家があった。
さすがの俺でも引いてしまうような、一歩が出ないような、そんな家だった。
「あー、ここっす」
恥ずかしそうに、照れながら、この女は紹介した。
「で、これがその門」
叩きながら、彼女は説明した。
見たところ、何の変哲もないただの門のようだが。
「……それで」
そう言って、この女は、この家というにはあまりにも大きすぎる建物の中へと入っていった。
表札を見ると、4人ほど名前が書いてあった。
『笹指 鴲
詩沙
柢沼 聡子
雅』
確か、彼女―――京の娘も雅と言っていたような気がした。
ガラガラ、という玄関ドアの開く音を聞いて、ふと建物内を見ると、そこには彼女がいた。
否、彼女に似た人物がいた。
京と同じ、一本にまとめた長髪。大理石のように綺麗な白い肌。嫋やかな雰囲気。可憐な、空気。彼女とは違う、眼鏡をかけている姿も彼女と同じ空気を漂わせている。
一瞬、幽霊にでもあったのかと思った。
何年ぶりかの、再会。
鳥肌は立つも、涙は出ない。
最高の、再会。
「……こんにちは、三虎さん」
「こ、こんにちは」
甘い香りだけが、この世界を彩る。
「初めまして、ですよね?」
「そ、そうですね」
お見合いかっ!というこの女のツッコミを無視できるほどに、俺の耳は彼女にしか向いていない。
「じゃあ、中に、入っていただけますか?…と言いましても、決して私の家ではないのですけれど」
「も、もちろんです」
ためらいを覚えつつ、一歩一歩着実に足を出していく。ここが、彼女の住まう家。
「いや、違うからね?」
「黙っていろ。そんなことは分かっている」
「ここで、待っていてください」
案内されたのは、広間だった。
「まあでも、三虎さんも、まだまだ子供というわけですねぇ」
「俺が短気じゃなくて良かったな」
死ぬぞ、お前。
「うー怖い。さすが、早殺の釣り師なだけあるねぇ」
「なんだ、そのダサい異名は」
「だ、ダサいかな」
「いかにも、田舎者が考えそうな考えだ」
「ダサいという言葉の由来が、田舎から来ているからって、別に田舎っぽい感じはしないでしょ⁈」
「まあでも、あながち間違いではないのかな」
「そうなの?」
「まあ、深くは言わないが」
「そう。ねえ、京さんの話、もう少し聞いてもいい?」
「なんだ?」
「京さん、つまり柢沼京さんは、日本人かもしれないんだよね?」
「ああ、分からんが」
「もしかしてなんだけど、この前テレビでやっていた気がしないでもないんだよねぇ」
「何が?」
「いやあ、あたしも記憶がなくってさ」
「じゃあしゃべるな」
「厳しいなぁ。まあでも、とりあえず京さん、何かに関わっているとあたしは愚考するよ。その人が企画立案したのか、その人が原因でそうなっているのか、すなわち首謀者か要因かは、さすがに分かんないけど」
「……お前も、何か気付いたのか?」
そうとしか思えない内容に、そうするほかない質問を投げかけた。
「まあね。御三家ってあたしは呼んじゃうけれど。いやあ、この話を聞いた時、ピンときちゃったんだよねぇ。ずっと、何しているのか分からなかったけど、渦巻き式の時間というのを聞いて、ピンときちゃったね」
次の瞬間、襖はするするっと開いた。
広間で話していた二人は、そちらの方へ自然と向いた。
「私から、少し話をさせて頂きたいのです」
彼女の目は光り輝いていた。




