第四話【物作りはハンドメイドで!】
小人の能力【ハンドメイド】の話になります(*´ω`*)
楽しんで頂けると幸いです。
異世界に来て二十一日目。
今、俺の目の前には小人の行列ができていた。
それはまるで蟻の行列のようで、その先頭では俺が拾ってきた乾いた木材に彼らは群がっていた。
事の発端は、ルプラとどうやって魔王の元へ向かうかを話し合った事からだ。
魔法とやらが存在するこの世界では、銃が生命線であることは間違いないはず。
そのため、故障などのリスクも考慮して一丁でも多くの銃を持ち運ぶ必要がある。
そこで、荷車を作ろうと思い立ったのだが、道具は木を切れるノコ付のシャベルしかないため、何か良い方法はないかと悩んでいたところ、ルプラからある提案を受けた。
「僕たち小人は重たい物を運ぶのは苦手れすが、物作りは得意なのれすよ! 荷車っていう物の絵を書いてくれたら、僕たちが作るのれす!」
「うーん······」
「どうしたれす? まさか絵心がないれすか?」
「いや、絵は苦手じゃないが······本当に作れるのか?」
「あー、その目は疑ってるれす。安心して僕たちに任せてくらさいなのれすよ!」
そんなやり取りをして、地面に荷車の絵を書いて見せた。分かりやすいように車輪やその他部品の絵も別に書いてどういう仕組みなのかというのを説明した。
そして、材料になる木を切り始めたのだが、生木は駄目だとルプラに言われ、その代わりに集めるように指示されたのは、荷馬車を作るには太さも強度も足りなそうな、折れて地面に落ちた木の枝だった。
枝を集めている間に、いつの間にか肩に乗っていたはずのルプラが姿を消していてのだが、すぐに戻ってくるだろうとあまり気にしなかった。
拠点の近くと森の中を何回か往復して戻ってきた時には、この光景が広がっていたわけだ。
「うわ······増えてる······」
気分としては真夏の夜、明るく照らされた看板に、大量のカメムシが付いているのを見た感覚に似ている。
「あ、ワタル! お帰りなさいなのれすよ!」
「お、ルプラか。やっぱ混ざると分からなくなるな」
その光景を少し離れた所で眺めていると、俺の存在に気が付いたルプラがトテトテと駆け寄って来たので、手で拾い上げて肩に乗せる。
「みんなー! この人間さんがさっき話したワタルれすよー!」
ルプラが作業に没頭してる小人に声をかけると、小人たちが一斉に振り向き、こちらに押し寄せてきた。
「わー! 人間さんらー!」
「おっきー!」
「僕食べられちゃうれす?」
「人間さんは変な服を着てるんれすねぇ!」
「登っても良いれすかー?」
たくさんの小さい生き物に囲まれてみて初めて分かったのだが、この状況で子供によく似た高めの声で一斉に喋られると、かなりうっとおしい。
「おい、ルプラ」
「何れす?」
「こいつらに美味しい物を食べさせてやるから、作業に戻るように伝えてくれ。これは精神衛生上、あまり良くない気がする」
「精神えせ? 何のことだか分からないれすが、チョコのためなら何でもやるのです!」
「おう、頼んだ」
鼻息を荒くしてやる気を見せる小人は、俺の肩から躊躇なく飛び降りると、華麗な着地を決めて声を張り上げる。
「みんなー、ワタルが荷車を完成させたら、美味しい物を食べさせてくれるそうれすよ!」
「美味しい物?」
「ほんとー?」
「イチジクより美味しいれすか?」
ルプラは仲間の問いに、自信満々に頷き拳で胸を二度叩いて答えた。
「もちろんなのれす。頬っぺたが落ちるくらい美味しいれすよ!」
「うわー! 美味しい物食べたーい!」
「ぼくもー!」
「食べたかったら、早く作るれすよ!」
「「「わー!」」」
一斉に小人たちは積み上げられた木の枝に戻っていき、作業を再開したのだった。
しかし、どうやってこんな端材から荷車を作るのだろうかと、疑問を抱いた俺は、彼らの作業風景を観察することにした。
「オーケー、まったく分からん」
彼らの後ろに回って覗いてみたのだが、そこには理解不能な現象が起きていた。
「おい、ルプラ」
「ん、呼んだれすか?」
目の前の現象を説明させるために、俺は再びルプラを呼んだ。
「あぁ、俺にはお前らが木の枝を粘土のようにこねて、丸めているように見えるんだが、気のせいか?」
「気のせいじゃないれすよ?」
「あー、やっぱりそうなのか。一応、それがどういう仕組みで木の枝を丸めているのか聞いても良いか?」
異世界に飛ばされて、小人などという存在と出会った俺はもう、これぐらいで動じたりはしない。
「丸める仕組み······れすか? あー、ハンドメイドの事れすね? これは僕たち小人族の皆が使える魔法なんれすよ。命を宿していない物の形を変えたり、切り離したり、くっつけたりできるのれす」
「なーるほど、だから生木が駄目だったのか」
「はい、そういう事なのれす」
どうやら、ルプラが小人は物作りが得意であると主張する理由はこの能力があるからだろう。
確かに、切った貼ったができる【ハンドメイド】という能力があれば、釘などで木材同士を固定する必要もない。
まさに大工泣かせ。
彼らの動きを見ると、まさに小人3Dプリンターと呼ぶにふさわしい働きっぷりだった。
「ところで、お前らは普段何を食べてるんだ?」
「僕達れすか? いつもは果物を食べてるれすよ。今は木イチゴや野イチゴを食べてるれす。今はまだ酸っぱいれすけど、もうすぐ蜜柑も食べれるようになるれすね」
「肉とかは食べないのか?」
「お肉れすか? うえぇー、そんなの食べれないれすよ。でも、ミルクは好きれすけどね」
「そうなのか······よし、蜜柑と野苺がなっている場所に連れて行ってくれ」
「別に良いれすけど、カズヒサも食べるれすか?」
「いや、チョコの数にも限りがあるしな、他の美味いもの食わしてやろうと思ってな」
「そうなんれすか! じゃあさっそく行くのれす!」
俺は案内されるままに、森の中に入って果物の収穫に向かった。
果物の収穫を終えて、拠点に戻ると車輪が二つも完成していた。
取り合えず俺は、簡易的ではあるがジャムを作ろうと思い、収穫してきた野苺を飯盒に入れて火にかけた。そして水分が出てきたところで、夏蜜柑に似た柑橘系の果実を絞り、果汁を加えてとろみが付くまでさらに煮詰める。
砂糖を加えていないため、冷やして固まる程とろみは付かなかったがまあ良しとしよう。
日も暗くなってきたので今日の作業は終了とし、小人を集めて作った物を振舞うことにした。
アルミパック包装されたパンを取り出して切り分け、手製ジャムを付けて飯盒の蓋に盛り付ける。
それを好奇心で目を輝かせている小人の前に置くと、瞬く間に群がり、貪るように食べ始めた。
「何これ甘いれす!」
「トロトロしてて、美味しいのれす!」
「おいしー」
「おかわり欲しいのれすー」
適当に作ってみたが、意外と反応は良かった。
後でルプラに聞いた話によると、小人は滅多に火を使うことが無いらしく、料理という文化が無いのだそうだ。
このように甘さを濃縮した果物で、チョコレートの消費を誤魔化しつつ、荷車の材料を補充しながら過ごすこと三日。
小人たちの手によって、荷車が完成したのだった。
すみません、料理が手抜きなのは材料が乏しいからです( ;∀;)
次回も読みに来てくださるのをお待ちしてます('ω')ノ
あとついでに、【農大生の俺に、異世界の食料問題を解決しろだって?】にも遊びに来てくださると嬉しいです(*´ω`*)
それでは、また!