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第三話【小人とチョコレート】

久しぶりの投稿ですね。

書こうと思ってはいるんですけど、中々時間が取れなくて······ですが、これからバンバン更新していきますよ!




 端的に言ってしまえば、訳が分からない状況だ。


 焚き火の前では、俯いた小人が蔦草で縛られた状態で正座している。


 ウサギを捕ろうと思い、罠用で取っておいた蔦草をまさかこんな使い方をすることになるとは思いもよらなかった。


「······もしかして、僕を焼いて食べるんれすか?」


「食べねーよ。それよりお前は何者だ? 何で人の言葉を喋れる? それも日本語を······」


「僕たちの知名度が低いとはいえ、何者とは酷いのれすよ······僕たちは小人族れす。小人が言葉を話すのは普通の事なのれすよ?」


 どうやら自分が小人である自覚はあるらしい。


「日本語というのは何れすか? 聞いたことないれすが、語ということは古代語のたぐいれすかねぇ?」


 日本語をしらない。だが喋っている言語は確実に日本語だ。頭がこんがらがってくる。


「言葉の事はもう良い。それより、どうしてお前はこの洞窟に侵入したんだ?」


「うぅ、それは······甘い匂いがしたかられすぅ······」


「甘い匂い? あぁ······こいつのことか?」


 小人が話している物が分かったので、糸に垂らしたそれを目の前でぶら下げてみた。


「そう! それれすっ! それが僕を誘惑したのれす! ふわぁ~良い香りれすね! どうかそれを僕にくらさいっ!」


 チョコレートを目の前に出されたことで我を忘れた小人は、手足を縛られているにも関わらず、器用に糸の先端に垂れ下がっている物を目指して飛び跳ねている。


「別にやるのは構わんが······そうだなぁ、じゃあチョコをやる交換条件だ」


「何でもするのれす! だから早くその茶色い食べ物を僕にくらさい!」


 小人が飛び跳ねっているのを見るのも、これはこれで面白いのでしばらく様子見してやろうかとも思ったが、話が進まないのでやめておく。


「そうだなぁ、じゃあ俺が聞きたいことを話したら食わせてやる。それで良いな?」


「うー、わかったのれす。だから早く聞きたいことを言ってくらさい」


 小人は飛び跳ねるのを止めたが、身体をモジモジさせて必死に我慢しているのが伝わってくる。


「よし、なら聞くぞ。ここはどこだ? 国名とかお前に分かるならなお良しなんだが」


「ここれすか? ここは魔王様が支配する国と、人間さんの国との国境線にある森なのれす」


「なるほど······さっぱり分らん」


 いきなり魔王とか言われても困る。たしかに俺は重度の漫画、アニメ、ラノベ中毒者であるが、流石に簡単に順応できるような年齢ではない。


「いやいや、魔王ってなんだよ? どっかの国の独裁者か何かか?」


「魔王様は魔王様れすよ。先代の魔王様から圧倒的な魔力をもって、魔王の座を奪い取ったすごい魔王様なんれす! 魔王様は僕達小人族の憧れなんれすよ!」


「あぁうっとおしい! ややこしいから魔王、魔王連呼するんじゃねえ!]


「ピギィッ!」


 同じ単語を何度も並べられ、頭の中で話が整理できなくなった俺はつい、大声を出してしまう。というか今、小人が魔力と言った気がした。


「あ、脅かして悪い。って今、魔力って言ったか?」


「怖いのれ、大きな声出すのやめてくらさい······はい、言ったれすよ?」


 その答えに最悪の事態が頭をよぎり、俺は恐々と小人に再度問いかける。


「もしかして、魔王様は魔法とか使うのか?」


 この問いに小人は何を言っているんだと言いたげな表情で、首を傾げて口を開いた。


「何言ってるんれすか? 魔王様が魔法を使うのは当たり前じゃないれすか」


 まて、まだ慌てる時じゃない。まだ確定したわけじゃないのだ。


 もしかしたら、中東のどっかの森には日本語を喋る小人が居るかもしれないし、中東の小国の独裁者が魔王と呼ばれている可能性がある。


 日本の武将にだって第六天なんちゃらを自称する人が居たし······。


 魔法と言うのも、こんな森の中に住んでいる小人からしたら、火炎放射器やホースから水が出るのも魔法に見えるはずだ。


「落ち着け······落ち着けぇ······俺······」


 小人の答えに過呼吸になりながらも、必死に深呼吸して息と心拍数を整える。


「そのなんだ、魔法ってのは誰でも使えるんだろ?」


「あはは、面白い事を言う人間さんれすねぇ! 魔法の才能を必ず持って生まれる種族はいるんれすが、ほとんろの種族は魔法の才能が無いと使えないのれす」


「その、種族って言うのは?」


「種族れすか? いっぱい居るれすよ。猫人族のケット・シーさんにー、巨人族のジャイアントさんとー、それに蛇頭族のゴルゴーンさんとか、まらまらたくさん居るのれす! ちなみに僕達はレプラコーンって呼ばれているのれす」


 はい、このチビのせい······小人さんのおかげで、とりあえずここが異世界だと確定しました。本当にありがとうございます。


 いや、実は初めから可笑しいと思ってたんだ。


 無駄に月はでかいし、中東に居る種類だと思い込むようにしていたが、ウサギには角が生えてるし······。


思い返せば幾らでも気が付くポイントはあった。だが、本能的にそれらと目を合わせないようにしていたんだと思う。にも関わらず、この小人に現実を正面から見せつけられたわけだ。


「そ、そーなのかぁー······とりあえず、人間族が居るところに行きたいんだけど、どうしたら良い?」


「そうれすねぇ······人間さんの国は、東の方ずっと、ずっと、ずぅぅぅーっと真っ直ぐ行って、おっきな山を越えればあるんれすけど、お山の麓に白くっておっきな狼さんが住み着いたらしくて······この間、お友達の猪さんが食べられちゃったんれすよねぇ······」


「ちなみに······大きさは?」


「うーん、お兄さんの胸の位置に猪さんの鼻があるくらい大きいのれす。なので、狼さんはもっと大きいと思うれすよ?」


 うん、食われる。って、イノシシもデカき過ぎだろ。


「他の方法は無いのか?」


「他れすかぁ······他と言われてもれすねぇ······あ、そうれす! 僕達と一緒に魔王様の所に行くと良いのれす!」


「は?」


 突拍子も無く、提示される案に思わず声が漏れる。


「向こう側に行っても食べられたらお終いなのれす! それだったら、優しい魔王様にお願いして、人間さんの国に送ってもらった方が楽なのれすよ!」


「そ、そうなのか?」


「きっとそうれす!」


 あまりにも自信満々に小人が力説してくるため、この世界の住人ではない俺は、このチビの口車に乗せられそうになる。


「ちょうろ、森生活にも飽きてきた頃らったのれす。それに、文化人れある僕たちは都会に住んで、シティボーイになるべきなのれす! 引っ越すついれに魔王様のところへ案内してあげるのれす!」 


 この小人の語彙力の謎も気になるが、まさに引っ越す理由が上京する田舎者そのもので軽く引いてしまう。


 だが、それは悪い話ではないかもしれない。異世界召喚物では、神や、魔法使いや、魔王が主人公を召喚するのが定番。


 つまり、魔王に会えばその魔法とやらで元の世界に帰れるかもしれない。


「分かった。じゃあ俺を魔王の所まで連れて行ってくれ」


「あい! 良いのれすよ! だから早くその茶色い食べ物をよこすのれす!」


「あ、そういえばそうだったな。紐を解いてやるから、ちょっと待ってろ」


 小人を縛っていた紐を解き、チョコレート片を手渡す。すると一心不乱に貪り始めた。


「ピャー! 甘くて美味しいのれす! 延髄と頬っぺたが蕩けちゃうのれすぅ!」


 チョコレート片はみるみる内に小さくなっていき、跡形もなく消滅してしまった。


 口元を茶色く汚している小人は、掌に付いたチョコレートを舐めとり終えると、こちらに顔を向けてきたので目があった。


「美味しかったのれす! もっとくらさいれす!」


 すぐにおかわりを欲しがるこの中毒性、まさに麻薬と言っても過言では無かろう。


 そこで俺は、ある妙案を思く。


「あぁ良いぜ。だが、そうだな······俺の役に立ったら、もっとチョコレートを食べさせてやるよ」


「お、おぉ! 人間さん、それは本当なのれすか? チョコレートのためなら頑張るのれす!」


 ここに来て、この小人の純粋さに付け入っているような気がして良心が痛み始める。


 だがしかし、俺が日本に帰るためには避けては通れぬ道。ここは心を鬼にするべきだ。


「そういや、呼ぶ時に人間さんは不便だな。俺を呼ぶ時は、わたるって呼んでくれ」


「ワタル······人間さんの名前れすか?」


「そうだ。俺の名前は杉田すぎた 渡。だからワタルだ。お前は?」


「僕れすか? 僕はルプラって皆に呼ばれているのれす!」


 小人は胸を張って堂々と名乗り上げる。


「ルプラっていうのか、これからよろしくな?」


 俺はそう言って指先を差し出した。

 

「あい! こちらこそ、よろしくなのれす!」


 この握手という文化が通じるのかと差し出して気が付いたが、小人は少し首を傾げるも、両手で指を掴んで元気良く答えてくれた。


 こうして俺と小人の、魔王城を目指す冒険の旅が始まったのである。


ここまで読んで頂きありがとうございます。


またのお越しをお待ちしております(*´ω`*)

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