第一話【火葬と遺骨】
ブックマークして頂いて居たのに、投稿が遅くなり申し訳ございません。
もう一つの方が落ち着いて来たので、こちらもボチボチ投稿していきます(*´∀`*)
この緑に覆われた場所に来て、三日が経過した。
移動はしていない。探索もやってない。俺がやったことは二十個の穴を掘ったこと。
今やっているのは、二十個の穴の中で轟々と燃え続ける炎が消えないよう、焚き木を足し続けることだった。
この状況はまともではないと思い知らされたのは、ここで目覚めてすぐだった。
周囲を埋め尽くす植物たちを茫然と眺めていた時、ふと足元に目が向いた。
そこには、一緒に任務に従事していた仲間の一人が息も無く倒れていて、周辺を見渡すと他にも同様の遺体が散乱していた。
最初は敵さんが俺達の死体を森に打ち捨てたのかと思った。だがそれはありえない。
憶測の域を達しえないが、あの二日間の戦闘の中でロケット砲を打ち込まれなかったのは、自衛隊が所持している武器弾薬が目当てだと推測される。
しかし、いくらか物品の欠損は見受けられるものの、使用できる小銃などの装備は手つかずのまま周囲に散乱していた。
さらに、足元に点在している岩だと思っていた物はどうやら立て籠もっていた建物の残骸のようだった。
すでに火を放って丸一日が経過している。
人肉が焼ける匂いにはもう慣れた。
燃やせるのは拾い集めた枝と、サバイバルナイフで切り崩せた細い枯れ木が数本分であるため、火力が弱く遺体が完全に骨になるまで、まだもう少し時間が掛かるだろう。
昼頃になれば立ち昇る煙を見て、誰かがやってくるだろうと思っていたが誰一人としてここへ来る者はいなかった。
「スマホも圏外だし、支給されたGPSは位置情報を受信できないときてる・・・・・・」
これは通常ありえない。衛星軌道上にあるGPS衛星は地球のどこに居ても、常に四つの衛生から電波を受信できるように配置されているはずなのだ。
砲撃の際の爆風で破損した可能性? いや、それはありえない。
なぜなら、目が覚めたこの場所には二十人の仲間と同じように、同じ数の装備が散乱していたのだ。つまり確かめたGPS機器は二十機。その全てが電源は入るのに位置情報を取得することはできなかった。
「他の奴らのスマホも駄目か・・・・・・てか、あいつら俺が言ったことマジで実行してたのかよ」
この国に派遣される前に言った冗談。
『派遣先はカンカン照りの国らしいし、ソーラー充電機を隠して持っていけば、任務中に充電し放題じゃね?』
彼らのリュックの中身を確認した結果、二十個中、十七個の鞄からソーラー充電器が出てきたのである。
派遣前から彼等とは同じ部隊で、曹長などのベテラン勢がいる小隊に、レンジャー持ちの三尉だからという理由で隊長に任命された。
基本的に適当な性格をして居たため、特に厳しく指導した覚えは無かったが、ベテラン勢のおかげで弛みきった部隊にならずに済んでいた。
元から幾らかの人数は居たが、休日の際に宿舎に残らなければならない残留組でもめ事を起こさないように、オタクでない者に漫画やアニメを布教して、宿舎に残っても娯楽があるのだと教たものだ。
ごめんな、吉住陸士長。サーファー系だったお前をオタクにしちまったせいで、彼女に振られえることになったよな。
そんな日本での思いでが次々と脳裏を過っていく。だが、涙は一切出ることは無かった。
この状況下だからか、それとも死と直面しすぎて感覚がおかしくなったのかわからない。
別に遺体を燃やす必要だってなかったのだ。ドッグタグと共に遺骨の一部でも日本の地に返すというのはただの建前。
本当は、銃撃を受けた彼等が血を失い、ゆっくりと息を引き取っていく、そんな頭に焼いて離れない光景から逃げたいだけなのかもしれない。
数時間前まで会話していた者が、気が付けば冷たくなっている。一人、また一人と肉体と魂が分離していく。
そんな苦しみと恐怖に耐え抜いた彼らの身体を、銃弾によって開けられた風穴をそのままにしておくことなど俺には到底できなかった。
それから、彼らが完全に骨になるまでに丸一日を要した。
遺骨となった彼等の足元に置いておいたドッグタグと照合し、結婚していた者も居たため、左手の薬指だけを回収し、残りは飯盒を骨壺代わりにしてドッグタグの片割れと共に納骨することにした。
「一人一人、それぞれ骨の形も違うんだな・・・・・・」
不意に視界が曇り、滴が手の甲に落ちる感覚と同時に再び世界は鮮明に映し出される。
飯盒の中に骨を入れる段階になって初めて、仲間が死んだのだという事実と向き合えた気がした。
この骨壺を全て持ち運べるわけが無いため、どこかに保管する必要があった。
それは回収する際に、発見しやすい場所でなければならない。
そのため、俺が選んだ場所は森を東に進んで見つけた山。天辺には雪が積もり、南北の地平線にまで伸び続けているため、おそらくきっと山脈であろう。
この森と山の境界線になっている崖を登り、その上に穴を掘って彼らの入った飯盒を埋めた。
風や雨による腐食を防ぐため、目印は木ではなく、大きめの石を周辺に積み上げることにした。
「ここなら、森の中より見晴らしが良いだろ? 必ず迎えに行くから、ここで待っていてくれ・・・・・・」
石を積み上げ終えた頃にはすでに日は沈んでいた。森の中に戻るのは危険だと判断した俺は、ここで一夜を過ごすことにした。
「なんだかんだ、目が覚めてから横になるのは初めてだな」
空を見上げると、燦然と煌きを放つ星々の中に悠然と佇む見たこともないほど巨大な月。
大きな違和感を感じさせるその月に、疑問を持てるほどの体力は既に残っておらず、横になるとほぼ同時に俺は深い眠りについてしまった。
次からようやく小人が登場する予定です。
また読みに来てくださると幸いです
( ´∀`)〈また来てね☆