プロローグ【あれ、生きてる?】
短い話を更新する予定です。
よかったらお読みください|д゜)
立ち込める殺気と硝煙の香り。
照りつける太陽は建物の中に居ようとその熱を十分に伝えてくる。
唯一の救いと言えば、湿気が無くて日本に比べれば過ごしやすいところだろうか。
「あーぁ、どうしてこんなことになってんだっけ・・・・・・?」
背中を壁に預けながらそう呟いたのは、目の前に倒れている二十人の仲間のうち、最後の一人から辛うじて聞こえていた、不規則な呼吸音が消えたからだった。
ここで心臓マッサージなり、人工呼吸なりしてやれば息を吹き返すかもしれない。だが、それを行動に移す事ができなかった。
なぜなら、俺も含めて間もなく死んでしまうから。これ以上、苦しい思いをさせるくらいだったら、楽にしてあげる方が得策だと判断した。
だがそれは、自分自身を正当化したに過ぎない。そんな高尚な考えがあるんだったら、二日間も苦しみ続けた彼の頭を、腰に下がっている拳銃打って楽にしてやることができたはずだ。
それをしなかったのは、結局のところ一人になるのが怖かったからだ。
「隊長失格だな・・・・・・あの時、上手く立ち回れてさえいれば・・・・・・変わったのか?」
もう何度もシミュレーションした脳内の光景。
安全だと言われていた区画に任務のために赴き、現地の人々とコミュニケーションを取ろうと車両を降りたその時だった。
突然発生した車を使った爆破テロ。それを皮切りに、テログループによって襲撃を受けた。
「いやいや、無理ゲー過ぎだろ。安全だって言うから来たってのに・・・・・・周囲の警戒も怠っていなかったし、何が俺にできたっていうんだ?」
その状況から、どうにか車を盾にしつつ、個人用の武器と物資を確保して、どうにか近くにあった石造りの建物に引き籠ることが出来た。
が、俺以外の全員はどこかしらに弾丸を受けていて、元気だった奴らも時間を追うごとに、次々と命を死神に引き取られていった。
「詰みも良い所だな・・・・・・投了して許してくれる相手かねぇ、・・・・・・?」
すでに割れてしまっている窓ガラスから顔を一瞬だけ覗かせる。頭を引っ込ませた次の瞬間、頭部があった座標から軌道線上に繋がる床に穴が開き、煙が立ち昇っていた。
「敵さんのスナイパー、腕が良すぎだろ・・・・・・。俺も狙撃手だが、スコープ越しで顔を合わせたくねえ相手だぜ・・・・・・」
この二日間の膠着状態は、ずっとこんなことの繰り返しだった。
なぜ敵さんが建物に攻め込んでこないかと言うと、最初にいくつか仕掛けておいたクレイモアが功を奏したことと、この建物の通路と階段が狭く、弾丸を避けることが出来ないからだ。
「だが、それも終りみたいだな・・・・・・」
先ほど、窓から顔を出した時に、建物の下でロケットランチャーを準備しているのが見えた。
とりあえず、この二日間で死ぬ覚悟はできていたからか、それほど焦燥感に襲われることはなかった。まぁ、目の前でこれだけの仲間に死なれてしまえば嫌でもできてしまう。
リュックの中から、隠して持ってきたスマートフォンを取り出すと、一本の電話をかけた。
『――もしもし、こんな時間にいったいどうしたの?』
スピーカー越しに聞こえる声はとても眠たそうだ。こちらが昼だということは、まだ日本は深夜の時間帯。
「あぁ、ごめん母さん、寝てたか?」
結局、最後に声を聞きたい、聞かせたいと思ったのは母さんだった。
自衛隊に入るのに反対していた母さんとはここ数年、ずっと不仲が続いていたがこの際仕方がない。
『当たり前でしょう、こっちを何時だと思ってるの?』
「はいはい、ごめんって謝ってるだろ?」
『もう、そっちにいる間は電話代が高いから連絡しないって言ってたじゃない」
「あぁ、そうだったな・・・・・・あのさ母さん、俺の部屋のPCを燃やしといてくれないか?」
『はぁ? あんたはいきなり何を言い出すのよ!』
何かを察したのだろう、母さんの声は火が付いたように大きくなる。
「いやぁ、その、色々とあってさ―――」
背後から聞こえる乾いた射出音が鼓膜を擽る。
「―――俺、死んだわ」
次の瞬間、背後から発生した爆発の衝撃が走り、黒く塗りつぶされていく世界。
強制的に失われていく意識の中で、最後に感じたのは痛みではなく、浮遊感だった。
風が頬を撫でる感覚で意識が徐々に覚醒へと向かっていく。
指の感覚、呼吸で肺が伸縮を繰り返す感触がハッキリと感じ取れた。
「生き・・・・・・てる・・・・・・?」
なぜ、そんな言葉を口にしたのか一瞬分からなかったが、すぐに気を失う前の出来事を思い出す。
痛みは感じられなかったが、目を開けば恐ろしい状況とも限らない。
だが、開かねば何も進展は無いと自分を奮い立たせ、恐々としながらも、ゆっくりと目を開いた。
「どこだ・・・・・・ここ?」
目を開くとそこには奇妙な光景が広がっていた。
今まで居たのは確かに、石と砂に覆われた国だったはず。
だが、目の前に広がる光景は緑豊か・・・・・・いや、一面濃い緑に覆われた場所だった。
「えーと・・・・・・何これ?」
この意味不明な状況下で俺は、ただ呟くことしか出来なかった。
基本的に、こっち (農大生の俺に、異世界の食料問題を解決しろだって?)が主体なんで、更新ペースはそんなに早くないかもです。
あ、ついでに、【農大生の俺に、異世界の食料問題を解決しろだって?】も読んでくださると嬉しいです。
それでは、また来てくださることをお待ちしております。
(*´ω`*)<アディオス・アミーゴス!!