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オチのある短編集

穢されにきた女

 それを見たときの感動は筆舌に尽くしがたい。冷ややかな雪のようであったし、暖かな日差しのようでもあった。真夏の入道雲、北極の氷、サンタクロースの髭、搾りたてのミルク、クチナシ、マツリカ、なにに喩えても、正確なところは表現できない。見てもらえれば……しかし誰もが俺のように見ることができるとも思わない。

 清らかな白色はまばゆく輝いている。言葉にした瞬間、その輝きをつかみそこなってしまいそうで恐ろしい。だが言おう。心して聞いてほしい。

 ――彼女は純白のブラウスを着ていた。

 清純さの象徴のようなそれは、洗いたて、いやおろしたてに違いない。彼女はそれをどうどう身にまとい、恥ずかしげもなく笑っている。とんだ女だ。どうしてそんなふうに笑う? そうか、そんなに俺に会えたことが嬉しいのか。

 いけないと思えば思うほど、俺の中でゲスな感情がむらむらと膨らむ。俺の性癖については彼女も先刻承知のはずだ。だのにそんな姿で俺の前に現れたということは、そうしてほしいということだろう。俺はグツグツして何度もそう問いただすが、彼女は答えず、アレを割って見せた。俺はそれを肯定の返事と受け取る。

 穢してやる、その純白を。

 彼女は俺に吸い付いてきた。

 そして一気にずるずると吸い込んだ。

 ほらな、やっぱり誘ってやがったんだ。

 しかも、そうとうの好きものだぜ。

 俺はカレーうどんの汁。

 その白いブラウスに跳ねてやる。

 ほら黄色いシミになったぜ。

 もういくら拭いても無駄だ。

 泣きわめいても無駄。

 水で洗ったくらいじゃ落ちやしねえ。

 今日一日、辱めてやる。

 それが望みだろ。

 穢されにきた女。

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