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円舞、煙火フェスティバル

レンちゃんちのお泊り会にて、さらに親睦を深めた(?)遊部員。

彼らの夏休みは、まだまだ始まったばっかりです!

携帯のバイブが、二回なる音が聞こえる。

眠たさに顔をしかめながら、ゆっくりと携帯を手に取った。

夏休み中盤。やることも特にない俺は、ごらんのとおりグダグダした生活を送っている。

目が覚めるのは十時近辺が多いし、寝るのも深夜遅くばかり。

高校生がこんなんでいいのか、自分でもそう思う。

そんなことを思いながらも、携帯の画面を起動させる。

送り主は、颯馬さんからだった。


『ヤッホー♪ うちの学校の近くの尼川で花火大会があるんだって♪ せっかくだし、みんなで行こうと思って♪ 返事は永遠先輩に送ってね~♪』


相変わらずテンションが高いな、この人は。

花火大会がある、というのはわかる。

が、なぜよりによって今日なのだろう。

あまりにも急すぎる気がするのだが……

参加するべきかしないべきか、しばらく画面を見つめながら迷っているとしばらくして紅葉からかかってきた。

出るのを少しためらいつつも、仕方なく通話ボタンを押す。


「……もしもし」


『うわっ、声低っ。もしかしてお前、今起きた?』


「……だったら悪いか」


『お前の休み特有のだらけ方は何なんだよ。極端すぎw ま、面白いからいいけど』


「用がないなら切るぞ」


『まあまあ待てって。オレの話聞いてくれよぉ』


紅葉がぐずる声を聴きながら、ふっと笑みを浮かべてしまう。

で? と聞くと、彼は楽しそうに話し出した。


『メール見たか? オレは行くけど、お前は?』


「いかん」


『よし、行くんだな! どうせだし一緒に行こうぜ、輝!』


やはり断っても駄目か。だったら最初から聞かなくても同じだったのでは。

紅葉と言い先輩方と言い、どうしてこんなに楽しそうなんだか。


『集合は七時でいいよな? そっちまで迎えに来てやるよっ』


「分かった。永遠さんには、俺から直接言う」


『じゃあついでにオレも行くって言っといてよ。じゃあ、あとでな』


「ああ、また」


紅葉の気楽そうな声を最後に、電話がツーと切れる。

遊部部員と、花火大会。

また騒がしくなるんだろうなと思う半面、どこか楽しみなような感覚がある。

さて、どうなることやら……

ふうっと一息つくと、俺はゆっくりと永遠さんに電話を掛けたのだった。



「Yeah! 祭りじゃひゃっほぉぉぉぉぉぉいっ!!!!!」


「あっ、紅葉君に輝君♪ やっほ~♪」


無駄にテンションが高い永遠さんに、満面の笑みを浮かべる颯馬さんの出迎え。

相変わらずと言っていいほどの二人に、俺と紅葉は顔を見合わせる。

やはり来るんじゃなかったか……そう思い、ため息をつく。

辺りはすっかり暗くなり、開催地である尼川は結構な人でいっぱいになっていた。

学校の近くということもあってか、同級生もちらほらうかがえた。

屋台もそれなりに並んでおり、色々な人が買ったりしてにぎわっている。


「相変わらずテンション高いですね~お二人は。あれ? 永遠さん、焼けました?」


「ザッツライト! 先日颯馬とseaでswimmingしてきたぜい☆」


「永遠さんったらすごいはしゃぎっぷりでね~オレ的には男の人同士が乳繰り合ってるの見れて、満足だけど♪」


相変わらず、部活以外でもこの二人は仲いいんだな。

プライベートでも遊びに行ってるのか……


「さて、あとはレンちゃんだけだね♪」


「今回はさすがに来ないんじゃないですか? みたとこ、うちの学校の生徒かなり来てますよ」


「だいじょ~ぶ。おいらにぬかりはナッシング☆」


紅葉の言葉に、永遠さんがにやりと笑う。

とそこに、コツコツとハイヒールの音が聞こえた。

ぱっと振り向くと、そこにいたのは……

フリルをあしらってワンピース、かわいらしくデザインされた麦わら帽子に眼鏡、そして少し高めのハイヒール……


「……お待たせ」


見た目似合わない低い声に、見るからに不機嫌そうな顔……

一目見ただけではわからなかったが、まぎれもなく北城さんだった。


「えっ、誰かと思ったら……先輩、何してるんすかw」


「こっちが聞きたいよ」


「さすがレンちゃん! 超かわいい❤」


「全然嬉しくない」


「なぜこんな姿に……?」


「ふふんっ、どうよ! これぞおいら発案のレンちゃん変化大作戦!」


そういいながら、北城さんの女装を永遠さんが写真で撮る。

彼は怒る気力もないのか、少し気に入らないような顔で自分の髪をいじくった。


「祭りには行けるけど、ばれたくないって話になってね~。永遠さんが、女装させたら絶対大丈夫ってことになったんだ♪」


「ああ、なるほど。これなら猫かぶんなくて済みますもんね!」


「なるほどじゃないっ! 他人事だと思って! 大体女装する意味が……!」


「は~い、レンちゃあん。あまりしゃべると男だってばれちゃうよ~?」


颯馬さんが口を押えてもなお、離せと言わんばかりに暴れる北城さん。

また永遠さんは面白いことを考えたものだな。

元から北城さんは女顔だし、どんな格好をしても似合うとは思っていたが。

かつらもつけてないのに、こんなにも女装が完壁とは……ある意味すごいな。


「よし、全員集合完了! 花火まであと一時間! 皆のもの! 遊ぶぞぉぉぉぉぉ!」


「おー!」


永遠さんの掛け声を合図とし、俺達の花火大会が幕を開けた。



「祭りなんて小学以来だな~なんか懐かしく感じね?」


「まあ、そうだな」


「あの時の輝、面白かったなぁ。せっかく買ったわたがしを猫に取られて」


「いつの話だ」


「年を取るとあまりこういうとこ来なくなるよね。子供連ればっかり」


北城さんが呆れ気味に言うのを、紅葉は本当ですね~となぜか嬉しそうに返事する。

にぎやかな屋台を眺めながら、俺も感嘆の声をあげるばかりだった。

どのお店のもおいしそうで、楽しそうだった。

あふれる笑顔が、妙にまぶしくも感じる。


「おっ、金魚すくいやってるじゃん。輝~とってかね?」


「いらん。とったところで飼えないだろ」


「じゃああれ! スーパーボール!」


「お前は小学生か」


「輝くぅん、チョコバナナ買ったんだけど、一口ど~う~?」


なぜか颯馬さんが、にっこにこの笑顔でかけてくる。

当然、断る理由も特に見つからなかった俺は、差し出されたバナナを手にする。

何も考えずに、そのまま一口かじった。

それだけ、だった。


「わあっ! 輝君ってば大胆❤ 誰のだと思ってしゃぶってるのかな? もちろん紅葉君だよね! 初めてはどこでやったの!? やっぱりお互いの家のベッドの中で!?」


「何の話ですか」


「輝~。颯馬のことは完全に無視していいよ~」


俺達の話を聞いていたのか、北城さんが綿がしを食べながらため息交じりで言う。

ため息をつきながら、少し先にいる紅葉についていく。


「おっ、いいものめっけ」


と先陣を切っていた永遠さんが、ある屋台を見て立ちどまる。

彼の目線にあったのは、百円につき三回することが出来る射的屋だった。


「百円あるやつ~このおいらと勝負しようぜ?」


「あ、いいですね! じゃオレ、やりまーす♪ ほしかった漫画があるし♪」


永遠さんの物言いに、いち早く颯馬さんが乗る。

彼は百円払い、鉄砲を置いてある漫画の方に的を絞った。

三発あったにもかかわらず、彼の放つ弾はものの見事に外れてしまった。


「あーあ、失敗しちゃった~。レンちゃんと輝君もどう?」


「そういうのいいよ、得意じゃないし」


「俺もいいです」


「よぉし! ここはオイラの、とっておき! スペシャルな技をみせてやろう!」


俺と北城さんの間から、永遠さんが百円を出しいざ! と張り切る。

両手を伸ばしたり、動作を付けたり、よくわからないポーズを繰り出す。

カッと目を見開くと、俊敏に鉄砲を手に取り……


「ゴールデンビックバンエターナル連射ああああああああああああああああああああああああああああああ!」


結構な大声で、球を打っては入れて一気に三発撃ち込む。

しかし構えはよかったものの、その勢いを止めることなく壁に突っ込んだだけだった。


「なんでじゃあああああああああああ」


「勢いはすごかったすね、先輩w これで勝ちはもらったかなっ」


すると今まで黙っていた紅葉が、にやりと笑う。

百円を置き、鉄砲を構えると、美しいと思えるほどの一連の動作をしながら球を打つ。

見事、一発目で物に弾をヒットさせた。


「うわ~やりやがったな、こいつ~」


「昔から、こういうゲームやりこんでたんで☆」


「さっすが紅葉君! これなら女子にモテて、当然だねっ♪」


「とれるって自信あったんなら、どうしてそんなものにしたの? それ、女の子用のピンじゃん。また女子にあげるつもり?」


北城さんが言うと、紅葉は「チッチッチ」と言いながら少し微笑む。

彼は北城さんがかぶっていた帽子をとると、射的で手に入れたピンをそっとつけてあげた。


「これは、レンちゃん先輩へですよ」


「なっ!? 僕女じゃないし! 女装してるからって、馬鹿にしないでくれる!?」


「バカになんてしてませんよ。確かに先輩は女の子っぽいけどさ、オレは純粋に先輩を尊敬してるんす。この前の合宿の時も、迷惑かけちゃったけど同時に秘密知れてよかったし。オレ、結構好きだよ? レンちゃん先輩のこと」


まるで女の子を口説くような言い方で、ふっと笑みを浮かべる紅葉の言葉に嘘はない。

だからこそ胸に響くものがあるし、それがこいつのいいところでもある。

言われた北城さんだって、顔を赤くさせてるし……


「きたあああああああああああああああ! リアルの告白タイム! この時をどんなに待ち望んでいたことか! まさかの三角関係突入? 紅葉君、告白してどんな気持ち!?」


「告白って……颯馬さん、その好きとは違うんですけど」


「レンちゃん! 告白されてどういう気持ち!?」


「し、知るか! いちいちうるさいんだよ、颯馬は!」


ものすごく興奮する颯馬さんに、それを止めるように叫ぶ北城さんと苦笑いする紅葉。

そんな光景をやれやれと言いながら見る永遠さんと、どうしようもない俺。

と、その時だった。


『パァン!!!!』


青空に、一つの花が咲いた。

赤、青、黄色と色とりどりの花火が、大空に舞う。

言葉に表せないほど、とてもきれいだった。


「あ、始まったね♪」


「た~まやあああああああああああああ」


「ふうん……思ったよりきれいじゃん」


「まさに絶景ってやつ? な、輝」


「ああ、そうだな」


キレイな花火を、俺達はずっと見ていた。

時間を忘れるくらい、首が痛くなるほどまで。

花火をしばらく眺めていた俺達は、何も知らなかった。

俺達をじっと見つめていた人がいたこと。

これから、何が起ころうとしているかも―


(つづく・・・

ここのところ、紅葉が美化されてるかれんちゃんが

出まくっているかばかりなきがします。

今回、一番の見所はもちろんれんちゃん初女装です。

初ということは次もあるのか? ということにもなりますが‥‥

さあ、どうなんでしょうねぇ


次回、バラエティー交じりのシリアス展開突入か・・・?!?

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