もう一つの最終楽章
舞台は一年後の、夏。
遊部はすっかり大人になって・・・?
いるかはどうか、その目で確認してください。
最終回です!
「見てください! これがっ、NEW萌ちゃんの結果です! どうですかみなさん!」
「お~結構5あるじゃん。いいなあ、萌ちゃんは」
「うへへへへ~颯馬先輩! どうでしょうか!」
「うん、文句なしの成績だね♪ 授業中居眠りさえしてなきゃ、オール5だったかもしれないのに♪」
「ど、どうしてそれを!? まさか、この私をずっと見て……!?」
「オレはストーカーじゃないよ?」
「君達さぁ……少しは危機感覚えようよ……この時期にもなって、一年生一人も入部してないんだよ!?」
呆れたように言う北城さんが、ため息交じりにつぶやく。
皆がブイサインをしてくるので、俺も同じようにため息をつくしかなかった。
季節は巡って、夏。
俺達は一年進級して二年生に、二年生だった北城さんと颯馬さんは三年生になった。
慣れないこと続きだったが、一学期も終わり一息ついたこの頃。
夏休み真っ最中にもかかわらず、俺達遊部には新入部員の一人も入っていなかった。
「焦るのはまだ早いっすよ、レンちゃん先輩。まだ夏っすよ?」
「まだじゃないよ、もう夏だよ! 君たち分かってるの!? 僕と颯馬がいなくなったら、ここ廃部だよ!?」
「そんなこと言わないでください、レンちゃん先輩! 先輩達はずっとずっとずぅっと私達と一緒です! ですよね、颯馬先輩!」
「さすがに留年は嫌だからね?」
「受験勉強もあるから、夏休みもそんな来れないし……これでも僕心配してるんだからね?」
北城さんが言うのを、俺は聞くことしかできない。
遊部というだけあって、興味を持つ新入生はいたものの入部に至るものはいなかった。
まあ活動内容もただ遊んでいるだけだし、普通のことでもある。
せっかくあの人が作ってくれた部活を、三年ぽっちでやめることになるのはさすがに……
「受験勉強、かあ。そいや二人は、どこ行くとか決めてるんすか?」
沈黙を破るようにして、紅葉がつぶやく。
彼は苦笑いを浮かべると、淡々と話しだした。
「オレ達にも来たんすよね~三者面談のお願い。つってもまだ一年後だからか、なあんも考えてなくて。参考までに聞いてみたいなって」
「それいいです! ぜひ聞かせてください!」
「オレの進路聞いたら絶対ついてくるよね? 辻村さんは」
「当たり前です! 颯馬先輩のいるところ、辻村萌黄ありです!」
「いいけど、ムリだと思うよ? オレ、就職だから♪」
明るい声色で、きっぱりという。
「why!?」と派手なリアクションをした辻村さんに向かって、相変わらずの笑みを見せた。
「色々考えたけど、やっぱりこの仕事は続けていこうと思ってね。情報屋をやりながら、絵をかいたりしてみようかなって」
「颯馬さんらしいっすね。先生とかよく許しましたね?」
「任せてよ♪ オレにできないことはないからね♪」
ということは、先生の弱みでも握って脅したのだろうか。
この人は出会った当初から、何も変わっていない。
ただ少し変わったことといえば、笑顔に曇りが見えないこと。
一年前までは無理をしてでも笑っていたのに、今ではすっきりしているように感じられた。
「私の一年後が思いやられます……とほほ……。レンちゃん先輩はどこいっちゃうんですか?」
「僕? 四年大だけど」
「司先輩と同じところに行くんだよね~?」
「余計なことは教えなくていい!!!」
「大学出るんすか、レンちゃん先輩! 真面目っすね~」
「まあ、前々から先生の力になりたいって思ってたし……そこからが一番の近道かな……って」
やっぱり三年生ともなると、違うのだろうか。
もうすぐ、みんなバラバラになる。
当たり前のようでそれは、すごく寂しいこと。
一年前、あの人がここからいなくなった時と同じように……
「辻村さんはアニメ関係とか似合いそうだよね~同性愛アニメとか作ってほしいな~♪」
「なるほど! 会社につけば、自分の思うアニメが作れるわけですからね!」
「じゃあオレに合いそうなの、何っすか?」
「紅葉はあれでしょ。ホスト」
「レンちゃん先輩、即答するってひどくないっすか~? んじゃあ輝は?」
「輝は多分、決まってるんじゃない? 僕の勘だけど」
北城さんがそういうと、みんな俺の方に目を向ける。
ただ一人颯馬さんだけが、わかっているかのように笑いかけていた。
やれやれと思いながら、みんなの目を見て
「俺は……介護系につきたいなって、思ってます」
と、答えて見せた。
「て、輝が介護ぉ? マジ、お前自分の老後の心配した上の判断?」
「そんなわけあるか」
「意外です! 輝っちが就職のことを考えているなんて!」
「どういう意味だそれは」
「でもなんか、想像を超えたというか……なんで、介護職なの?」
「親が亡くなる前まで、世話をしていた影響です。母もそういう仕事をしていたので、憧れがあったというか……」
今は亡き母、彼女は人の世話をすることがうまかった。
だから家政婦の仕事をしていたし、すごく板についていたとも思う。
そんな彼女を近くで見ていたのもあり、病気の世話をしていた時に言われた。
『輝はほんと上手よね。輝がもっと大きくなったら、介護さんも夢じゃないかもしれないわよ?』
その時は深く考えていなかったが、今ではその言葉を信じてもいいと思った。
母が人のために働いていた姿を、今では誇りと思っている。
俺もそういう人間になれたらいいな、と。
おそらく、あの人と会ったことで気持ちが変化したのかもしれないが。
「やっぱあんたは、ことごとくあの人に似てるよね。びっくりするくらい、さ」
聞き慣れた、声がした。
振り返らなくても、すぐにわかる。
みんながみんな、嬉しそうな表情を浮かべていた。
彼らの表情を一望した後、俺も後ろを振り返る。
「ういっす、後輩ども! 暇だから、帰って来てやったぜ!」
彼―中江永遠さんが、にっと俺達に笑ってみせる。
何も変わっていないその笑みを見ながら、俺達は声を揃えて一言。
「お帰りなさい、永遠さん」
遊部の活動はまだ、始まったばかりだ―
fin
ここまで読んでくださった皆様、本当に本当にありがとうございます。
この作品はほとんどが初めて尽くしのもので、すごく印象に残っています。
私自身大好きな子たちばかりなので、皆さんにも気に入ってもらえたのなら幸いです。
誕生日やイベントネタで会えるまで・・・さよならはいいません。
また気が向いたときに遊びに来てあげてくださいませ。




