表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/35

想望のヴィーダーゼーセン

小さい頃に会った憧れの人が、

早霧高校に・・・しかも

身近にいると颯馬から言われた蓮華。

そんな中、いよいよバレンタインがやってきた!

どこへいっても、何やら騒がしい。 

それもこれもすべて、今日という日があるからだろう。

何人もの人が浮かれ喜び、ないないと叫びだしたり……

それもそのはず。なんといっても今日は……


「みろよ輝~朝だけで紙袋一つ分だぜ? いやあ、モテるって困るなぁ」


「……そうか」


「うわ、テンション低っ! お前どんだけバレンタイン嫌いなんだよ」


紅葉が言う言葉一つ入ってこないくらい、周りのざわめきがうるさい。

今日だけで、何回ため息をつくことになるのだろうか。

時間はあっという間に過ぎていき、ついにバレンタインデーまできてしまったのだ。


「しっかし見つかんなかったな、レンちゃん先輩の言ってた人。バレンタインまでにはって思ってたのにねぇ」


「まあ、全校生徒から探し出すのはな」


「颯馬さんももう少し手掛かりくれれば……」


「やぁ!! おはよう! 輝君! 紅葉君!」


いきなり後ろから突き飛ばされ、びっくりして振り返る。

犯人は颯馬さんだった。

いつもにもまして笑顔の輝きがすごいような気がする。


「お、おはようございます。颯馬さん」


「びっくりした~急に来ないでくださいよぉ~」


「見かけたからつい♪ あ、オレ急いでるから行くね! オレのこと聞いてきたら、いないっていっておいて~!」


「えっ、あの……」


俺が何か言う前に、颯馬さんはものすごいスピードで走り去っていく。

あっけにとられ、思わず紅葉と目線を交わす。


「逃がしはしませんよぉぉぉぉぉぉ颯馬せんぱぁぁぁぁぁぁぁい!!!!」


また聞きなれた声がした。

颯馬さんより遅れてやってきたのは、元気全開の辻村さんだった。


「ああ、お二人とも! おはようございます! 颯馬先輩どこ行きました!?」


「えっと……あっち」


「ありがとうございます!! 颯馬せんぱぁい! 逃がしませんよ! 私傑作のチョコレートを受け取って、ぜひ結婚してくださぁぁぁぁぁい!」


叫びながら、颯馬さんと同じスピードで駆けてゆく。

二人とも、ものすごい勢いだな。

あのやり取りを見る限り、辻村さんが作ったチョコを受け取るのが嫌で颯馬さんが逃げているのだろうな。


「結婚してくださいっつってるから、颯馬さんが逃げてる的な?」


「……だろうな」


「萌ちゃんも頑張るねぇ。颯馬さんも逃げずに受け取ればいいのに」


颯馬さんも颯馬さんだ。

どうしてあそこまでして彼女を拒むのだろうか……


「あ、そういやオレ日直だったの忘れてた。わりぃ、輝。先いっとくな」


「……分かった」


足早にかけてゆく紅葉の背中を眺めつつ、俺も中の方へと歩き出す。

前に一歩踏み出す直前、誰かに服をひっぱられた。

すぐ後ろには俺の背中で隠れるように身を縮めていた、北城さんがいた。


「北城さん……? 何を……」


「しっ! 輝。若葉園に来たときに紅葉、懐かしいとかそういう系のこと……言ってたりしなかった?」


突然何を聞くのかと思った。

去年の夏のことだというのに、もう随分昔のように感じられる。

記憶を呼び起こしながら、当時のことを思い出す。


「おそらく言っていなかったと思いますが、どうしてですか?」


「こんなに探して手がかり一つないってなると、頼みの綱は颯馬の言葉しかないって思ってね」


「颯馬さんの言葉?」


「結構身近にいるって言ってたでしょ? クラスメイトの他に僕がよくかかわってるのって君達くらいだから。片っ端から調べようって思って」


そういえばそんなことを言っていたような気がする。

確かに北城さんの同級生は、あたるだけあたったはず。

残っているのは先輩方と、俺達一年生……


「もしかして、紅葉を疑っているんですか?」


「他に誰がいるの!? 辻村さんは女の子だから外れるし、颯馬とあの人は絶対ない!!! 輝だって、心当たりないでしょ?」


「……まあ……」


「そうなると紅葉しか他にいないじゃん! だから少し尾行しようと思っただけ!」


なるほど、そういうことか。

納得する半面、冷静に考えながら一つの答えが出る。

しばらくしてから俺は、北城さんに一言。


「北城さんが探している人、紅葉ではないと思いますけど」


といってみせた。


「はぁ!? なんで!? なんでそう言い切れるの!?」


「あいつ、付き合った女子の名前はおろか、名前を聞いた人はすべていえるんです。そんな奴が、あなたの名前を聞いたら絶対反応すると思いませんか?」


「……思います……」


彼は心底残念そうに、俺のそばから離れる。

何だかいけないことをしてしまった気がして仕方ない。

そう思うと、北城さんにとって身近な先輩方は全員削除されることになる。

なにせ「蓮華」という名を、知っていなければならないのだ。

情報屋の颯馬さんならまだしも、永遠さんも外されるのか……


「は~あ、なんかもう嫌になっちゃった。教えてくれてありがと、はいこれ」


「えっ……これ……」


「先輩からのプレゼント。ちゃんと味わって食べてよね」


彼はそう言い残すと、そそくさと学校内へ入ってゆく。

渡された小さな袋に入っていたのは、ビターチョコだった。

こういうところは不器用な人だな……

彼からもらった袋をバッグに入れながら、再び校内へ歩き出したのだった。



今日という今日は、永遠さんもさすがにいなかった。

というのも多分、卒業式の準備が進みつつあるからだろう。

彼がいない分、静かに過ごせる……というはずもなく。


「ほんっと照れ屋ですね、颯馬先輩は! 分かってますよ! 好きが故の放置プレイだってことは!」


「ち、違うから……今日一日中走り回って……なんで息一つ乱れてないの……?」


「こう見えて私、陸上やってたんですよ! 俊足の萌ちゃんとお呼びください!」


「ああ……そういえば、そんな情報もあったっけ……覚えてないや……」


一日中、とは授業中も含まれているのだろうか。

遊部に来てもなお、颯馬さんと辻村さんの追いかけっこは続いていた。

さすがの颯馬さんもばてばてのようで、肩で息をしている。

逆に辻村さんは、元気を増しているように見えた。


「さぁ! 観念してください、颯馬先輩! 私の愛を受け取ってください!」


「受け取るのは……いいけど……結婚はちょっと……」


「どうしてですか!? 颯馬先輩が好きな甘いものですよ!?」


「ああ、もう君たちうるさい!! 部室内でけんかしないでよ!」


今の今まで我慢していたのを吐き出すように、北城さんが言う。

疲れたように颯馬さんが座り込むと、辻村さんは悲しそうに返事した。


「しっかしレンちゃん先輩モテモテっすね。これ全部チョコっすか?」


「そ。いらないって言ってるのに、余計くれるから。あ、そうだ。はい、君達の分。渡すの忘れてた」


そういうと北城さんは、俺と同じような袋にいれたチョコレートを渡す。

紅葉、辻村さんの順に渡したかと思うと、最後の颯馬さんで彼は足を止めた。


「颯馬、やっぱり君の情報間違ってるんじゃない? 身近な人当たったけど、いなかったよ」


「……間違ってはないよ。オレの情報は正確だから♪」


「もういい。ギブアップするから教えてよ。その人が誰か」


「うーん……レンちゃんはその人に会って、どうするの?」


核心を突くような、質問だった。

颯馬さんの目はいつにもましてまっすぐ、北城さんをとらえていた。

彼はその目をそらさず、決意に満ちた表情でつぶやく。


「あの時のお礼と、伝えたいことがあるんだ。あの時の僕は自分の名前が嫌いで、友達なんていらないって思いこんでた。でも今は……今は遊部がいる、ちゃんと仲間に会えたんだって」


「レンちゃん……」


「柄にもないこと言わせないでよ。ほら、早く答えを……」


「ふーん。柄にもないこと、ねぇ~」


どこかで聞いたことのあるような、声だった。

その声がした方向を振り向くと、部室のドアがいつの間にか開いている。

そこに立っていた人物とは……


「あなた……は……」


「ああ、確か響先輩と一緒にいた人っすよね。いつも眠そうにしてる」


「秋山司。先輩の名前くらい覚えとけよ、あと眠そうにしてるは余計な」


間違いない、司先輩だ。

だがなぜ彼がここに? 彼もまた三年で、今は学校に来られないはずじゃ……


「ったく。人が気持ちよく寝てたのに、いい話が聞けますよっていうから来てみれば……こういうことかよ、颯馬」


「先輩だって、ずっと前から気づいていたんでしょう?」


「……まあな」


「えっ、何。颯馬、なんで秋山先輩を……」


「言ったでしょ? 身近にいるって」


颯馬さんの言葉に答えがはっきり見えてきた気がする。

信じられないというように、北城さんが彼を見る。

司先輩はため息をついたかと思うと、彼に向かってポツリ。


「俺は礼を言われるような人間じゃねぇよ。お前が伝えたいことは、体育祭の時に嫌というほど伝わってるし」


「君……が……?」


「名前の通り、きれいに咲けたな。蓮華」


その瞬間、糸が切れたように北城さんは泣き出してしまう。

安心したのか、会えて本当にうれしかったのか。

ぽんぽんと頭をなでる司先輩の表情も、心なしかうれしそうで……


「うう、感動です……! ドラマなら絶対視聴率二十パーセント越えですよ、これ……!」


「まさに最終回、って感じだね。あ、あとさ。このチョコすごくおいしいのに、とけちゃってるよ? まったく、走り回ったりするから」


「ほえ? あれ!? いつの間にか私の愛の結晶が颯馬先輩の手に!!」


「ちゃんと好みに合わせてくれたんだね。ありがとう、萌ちゃん♪」


「へ……? 今、名前……」


颯馬さんはそう言い捨て、ひらひらと手を振りながらどこかへ行ってしまう。

もう一回言ってください! と、辻村さんが後を追う。

色々なものが解決に進みつつある。

そう思いながら俺は紅葉に、少し笑いかけた。

桜のつぼみが、少しずつ咲き始めている頃だったー


(つづく!!!!)

先日、友人とイルミネーション見に行きました。

すごくきれいで、遊部がいったらどうかな~

と妄想してはみましたが

みんなノリノリですね! ‥‥輝以外笑

特に萌ちゃんは、二人きりで行きたがりそうです。


はい、というわけでれんちゃんの憧れの相手は司でした~! みなさん、当たりました?

実をいうと、作成当初はまったく違う人でした笑

颯馬さんと萌ちゃんもそろった、見どころ満載になりました♪


次回、颯馬さんファンの皆さん! 必見ですよ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ