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終幕へのバトルフィールドマッチ

遊部の五人とともに年を明かした輝。

新年が開け、すっかりいつも通りの日常がもどってきて・・・

「紅葉っち~今年も作って来るけど、何がいい~?」


「何でもいいよぉ。君の思いが込められてるだけで、オレはうれしいな♪」


「も~紅葉君ったら~❤」


何人もの女子が、奴を囲って話している。

それを横目で眺めながら、やれやれと肩をすくめた。

冬休みが終わり、あっという間に一月末。


まだ先だというのに、ちまたはバレンタイン一色だ。

コンビニやスーパーの催し物も、ほとんどがチョコレート。店に行くたびに、見て回っている女子をよく見かける。

結論から言えば、俺にとってはどうでもいいイベントでもある。


「いやぁ、今年もたくさんもらえそうで困るなぁ」


「それはよかったな」


「なんだぁ~? 輝。うらやましいのか~?」


「そんなわけあるか」


「そんなこといってぇ、本当はほしいくせに~」


「黙れ」


俺がそういっても、紅葉はぷぷぷと笑うだけでなおもからかってきた。

バレンタインの時のこいつのテンションは、浮かれすぎというほどうざい。

女子も女子だ。なんでたらしなのに、寄ってたかってこいつにあげるんだか。


「紅葉っち! 輝っち! お邪魔してもよろしいでしょうか!」


俺達が二人で話している中やってきたのは、だれであろう辻村さんだ。

なぜか彼女は制服の上にエプロンを羽織っており、三角巾まで頭にしている。


「あれ、萌ちゃんじゃん。どーしたの? そんな格好で」


「突然申し訳ありません! お二人にぜひ! 試食してほしいのです! 今! すぐ!」


そういうと辻村さんは、お皿をバッと突き出す。

それは、丸く小さめに固められたチョコレートだった。

彼女の勢いに戸惑った俺だったが、特に断る理由も見つからなかったため仕方なく口にする。

その瞬間、電撃が走ったような感覚に陥った。


「……! これは……」


「うまっ……なにこれ、めっちゃおいしいんだけど!」


「本当ですか!? やりました! 調理実習中に作ったんですけど、自信なくてぇ」


これで自信がなかった……だと……?

誰が食べても、多分口をそろえて「おいしい」というに決まっている。

さすが女子、というべきなのだろうか。


「もしかしてバレンタイン用のチョコ?」


「はい! 予行練習です!」


「練習にしてはすごい完成度だよ。オレも萌ちゃんからほしいなぁ」


「NOっ! です! 私は本命、つまりは颯馬先輩にしかあげません!」


恐るべし思いの強さ、とでもいうべきだろうか。

彼女が遊部に入ってきて、颯馬先輩とのやり取りはもはや日常化していた。

颯馬先輩自身、彼女をどう思っているのかはわからない。

ただ突き放そうとしたり、断っているのを見ると当分彼女の恋はかないそうにないような気が……


「前から気になっていたが……颯馬さんをいつから好きに?」


「ええ!? そんなこと聞いちゃうんですか、輝っち! 見かけによらず恋バナ好きとは、ギャップ半端ないですね!!」


「どういう意味だ」


「まあ輝の言い分もわかるよぉ。レンちゃん先輩やオレならまだしも、颯馬さんを好きな人なんて初めて見たし」


「それ何気に私を馬鹿にしてません? わかってないのは皆さんの方ではないでしょうか!」


紅葉の言葉を機に、辻村さんはなおも熱く語りだした。


「彼を一目見た時に、思ったんです! ああ、この人が私の運命の人だって! 颯馬さんといったら、あの笑顔ですよ! 笑顔! 爽やかに微笑むあの姿……思い出すだけで……もう……」


ここに北城さんがいれば、何かしら突っ込みができたのだろうと心から思う。

確かに颯馬さんはよく笑っているが、その表情で冗談に聞こえないことをさらりと言うものだから正直理解ができない。

彼のことを知っているからこそ、というのもあるのだろうが。


「萌ちゃんって、ほんとに颯馬さんが好きなんだね」


「それどういう意味ですか! 私の愛が偽物だって言いたいんですか!?」


「違う違う。そういう風に一途になれるって素敵だな、って思って」


そういう紅葉の顔はなんだか寂しそうにも見えて、それが何だか妙に気にかかった。

彼女がそれに気づいているのかはわからないが、辻村さんはえへへと照れくさそうに笑った。


「当然ですよ。私にとって颯馬さんは神とも呼べるお人です! 私はあきらめませんよ! 先輩が振り向いてくれる、その日まで!!」


「うん、がんばってね。萌ちゃん」


「これから部活ですか? 私はチョコを作りたいので、今日はお休みしますね! このことは、颯馬さんにはしーですよ♪」

楽しそうにスキップしてゆく背中を眺めながら、俺と紅葉も後を追うように部室へと足を運ばせた。



「お疲れ様で~す」


「あ、やっときた。ねぇ輝。ちょっと聞きたいんだけど、君甘いもの大丈夫?」


部室に入るが否や、北城さんが何か紙をもって話しかけてくる。

荷物をすみのほうにおき、彼の近くに座った。


「えっと、あまり好んで食べようとはしないです」


「あーオッケー。紅葉は平気だよね?」


「基本何でも好きっすよ~。どうしたんすか、いきなり」


「べ、別に。ただ気になっただけだしっ」


「レンちゃん、オレ達に作ってくれるんだって♪ 友チョコ♪」


「ちょっ! 颯馬! 余計なこと言わないでよ!」


彼と少し離れたところで、オセロをしている颯馬さんがにっこり笑う。

黒だったものを次々に白に変えていきながら、「はい、どうぞ」と向かい側の彼に言う。


「まったくぅ、レンちゃんも素直じゃないなぁ。おいら達のことそぉんなに好きなのぉ?」


「うっさい!! ていうか、なんであんたがいるの!? 今三年生って自宅学習期間だよね!?」


彼のつっこみにもかかわらず、ぶいとピースサインをしてみせる。

颯馬さんとオセロをしているのはまぎれもなく、永遠さんだ。

一月末ともなるとセンター試験も終わり、うちの高校の三年生はほとんどが来ていない。

気にもしなかったが、確かにそれを考えるといるのはおかしい気が……


「だってさぁ、家だとなぁんもすることねぇんだもん。ここの方がリラックスできるし?」


「何それ……大体、進路の方は大丈夫なんだよね?」


「シンロ? ナニソレ、オイシイノ?」


「あんたそれマジで言ってないよね!?」


相変わらずのやり取りだ、と思ってしまった。

北城さんは呆れかえったようにため息をつくと、また紙に何か書きだす。

一方で永遠さんと颯馬さんは何かしらいいながら、オセロを続けている。


「さっきから思ったんですけど、先輩何書いてるんですか?」


「ああ、これ? 卒業生の名簿。間違いがないか確認してるの」


「……大変ですね、生徒会長も」


「ほんと。結局仕事は僕しかやってないし!!!」


語尾を強めたのは、おそらく颯馬さんに対して言っているのもあるのだろう。

彼の鋭い眼光に気付いたのか、颯馬さんが苦笑いして答えた。


「しょうがないじゃない。レンちゃん、みゃーちゃんとけんかしかしないから、一年生が怖がってるよ?」


「君が仕事しないのが悪いんでしょ! ちゃんとしてよ!」


「……あー仕事と言えばね、最近調べて分かったことだけど……レンちゃんが探してる人、この学校にいるっぽいよ」


しばらく沈黙が続いた。

誰もがやっていたことの手を止め、みんなして颯馬さんを見ている。

その沈黙を破ったのは、やはり北城さんだった。


「それほんとなの、颯馬!?」


「情報通りなら、ね。確信は持てないけど」


「誰!? どこにいるの!?」


「それを探すのは、レンちゃん自身なんじゃないかな♪」


北城さんが探している男の人。

おそらく以前彼が話してくれた、彼が猫かぶりをするきっかけとなった人のことだろう。

彼自身、その人にすごく感謝しているようだったしな。


「探すんでしたら、オレらも手伝いますよ? オレもあってみたいし」


「俺も手伝います」


「あ、ありがとう……輝、紅葉」


「んで颯馬よぉ、その人のヒント的なのはないの?」


「さぁ? しいて言うなら、結構身近にいる……ってことですかね♪」


颯馬さんがにっこりと笑みを浮かべる。

手掛かりがゼロに等しいまま、俺達はある人を探すことになったのだった。


(続く!)

前回は小話だったので、初本編になりますね!

もうすぐあれがやって来るのかと思うと

悲しいような物足りないような、でも早く終わってほしいような・・・?

あいまいな気持ちでうやむやです・・・


でも大丈夫です!

あれやらこれやらまだ取り上げていないので

当分終わりません!笑


次回の更新日は、なんとあの方の誕生日!

ってなわけで、その人に焦点を当てたFEATURINGシリーズ第二弾になります!

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