純情❤︎LOVING旋風
秋のイベントも続々とあっという間に終了!
そんな中、なんと永遠が部活を抜けるといって・・・?
「えっと……去年の費用はこれくらいで……」
「ねえ、みてよ! 輝君! よく撮れてると思わない? これ!!」
……はあ。
「で、今年の分に繰り越されるわけだから……」
「中でも、このレンちゃんとかかわいくない? 紅葉君と写ってるのなんて、もう彼氏彼女にしか見えないよね~」
……えぇっと……。
「颯馬うっさい!!! もう少し静かにしてくれないかな!?」
堪忍袋の緒が切れたように、北城さんが怒鳴り散らす。
そんな彼の怒りをものともせず、颯馬さんはてへぺろと笑って見せた。
空気がだんだん肌寒さを感じるようになり、すっかり十一月。
この早霧高校でも、学校の生徒会長をはじめとしたものが、次の学年と引き継がれていく。
三年生の冬ともなると、センター試験まっしぐら。
そのこともかねて、文化祭が終わったのを機に生徒会長であった響先輩をもう「会長」とは呼べなくなった。
この高校では毎年、生徒会長にふさわしい生徒を誰でも書き、見事に多かった人が当選される。
毎年あげられる人は決まっていて、今年の選挙も文句なしの圧倒勝利だった。
その勝利を果たし、生徒会長となったのは……
「ていうか、なんで僕がこんなことしてるの!? こういうのは会計の役目じゃないの!?」
「去年は響先輩一人で作って、みゃーちゃんの出番なかったんだよね~。初めての一年生のためにも、レンちゃんなら出来るんじゃないかなって♪」
「あの会長と僕を一緒にしないでくれるかな!?」
「大丈夫だよぉ、君の支持率はすごいんだから~北城大翔会長♪」
ここにいる、北城さんその人だ。
猫をかぶっていたという真実にもかかわらず、女子からの圧倒的票数を獲得した結果らしい。
文化祭でやったあの女装を受けてか、男子票も少なくはなかったとか。
「まったく、最初からこんなんじゃうまくやってけないよ~? 僕一年生とあったことさえないんだけど!」
「なんとかなるから、大丈夫♪」
「君のその根拠のない自信はどこからやってくるわけぇ?」
「だってみゃーちゃんだけでなく、オレも残るんだよ? 先輩達には及ばないけど、きっちりサポートしてあげる♪」
「それがなおさら心配なんだけど……」
去年も生徒会に入っていた颯馬さんと、雅先輩は引き続き生徒会をやるらしい。
颯馬さんは副会長で、雅先輩は会計のままだそう。
この二人がこれからの早霧高校を担っていくと思うと、知っている人の分不安というかなんというか……
「そういえば輝、紅葉は? さぼってるんじゃないよね?」
「多分、女子と戯れているのではないかと」
「あきないよねえ、あの人も。こっちの気も知らないで」
「呼ばれて飛び出てこんにちはっす~。高里紅葉、ただいま到着で~す」
噂をすれば、というやつか。
ひょうひょうとした態度のまま、にこやかに笑うのは言わずと知れた紅葉だ。
荷物を置き終わると、さてと話題を振ってきた。
「今日も今日とて、暇っすねぇ。ここは」
「そりゃそうでしょ、遊部なんだから」
「ババ抜きでもしてみる? 花札とか、すごろくもあるよ~」
「どんだけおいてあるの、ここ……部長は君なんだから、適当に指示してよ」
「そういわれても、オレ的に何していいかわかんないんすよ~先輩方が生徒会だからって、選ばれただけですし?」
紅葉の言う通り、遊部の次期部長に選ばれたのは彼だ。
先輩方二人が見事に生徒会に入ってしまったせいか、一年から選ばざるを終えなくなった永遠さんが、
「んじゃこの棒が倒れたほうが部長ね~」
なんとも適当な決め方で、紅葉に決まった。
俺としては、中心に立ったりするのは得意ではないし、助かったのだが。
遊部の部長だった永遠さんは、あれっきり本当に姿を現さない。
何かで遊んだり、くだらないことで盛り上がることの発端は、すべて彼。
永遠さんがいなくなったここはまるで、ぽっかりと穴が開いたような……寂しさだけが残っている。
口には出さないだけで、きっとここにいる三人もそれは同じだ。
こんなにも、彼が大きい存在だったとは……。
「んじゃ各自やりたいようにってことで、オレ女の子と遊んできますっ」
「部長がそんなんでどうするの!?」
「じゃあオレはレンちゃんの女装写真を、焼き増ししてくるね♪」
「余計なことしなくていいから、仕事してよ颯馬!!」
「えっと……手伝いましょうか、北城さん」
「ああ、ありがと輝。でも大変だし、気持ちだけ受け取っとくよ」
「え~~レンちゃんオレと輝君との待遇違いすぎなぁい?」
「これくらいで文句言うな!」
北城さんがギャーギャー怒り、それを笑顔で受け流す颯馬さん、止めながらも楽しそうにする紅葉。
何もかも、いつもどおりだ。
ここに、彼がいれば……
「ごめんください!!!!!」
そんな時、だった。
部室のドアが、勢いよく開けられた。
何事かと顔を向けると、そこには一人の女の子がいた。
茶色い長い髪が、風でひらひらなびいている。
まるで何かの決闘を申し込むようなその顔には、何らかの決意が込められているようにも見える。
「やぁ、子猫ちゃん。うちに何か用事かな?」
女子の扱いには一番たけているであろう紅葉が、その子に詰め寄る。
しかし彼女はそんな暮れに目もくれず、ずかずかと中へ入ってきて……
なぜか、颯馬さんの目の前で止まった。
さらに人差し指を彼に向けて……
「見つけましたよ、颯馬先輩! どうか私と、お付き合いしてください!!」
………言葉を、失った。
全員が全員、あっけにとられている。
理解するのに時間がかかったのか、ようやく北城さんが小声で、
「ちょっと颯馬、この子に何吹き込んだの? 早く正気に戻してあげなよ」
と、颯馬さんにささやいていた。
「心外だなぁレンちゃん。オレ、何もしてないよ?」
「どう考えてもおかしいでしょ! 紅葉や僕ならともかく、颯馬に告白って頭おかしくない!?」
「そこまでいうなんて、レンちゃんひどい!」
「そうです! ひどいですよ、北城先輩! 北城先輩なんかより、断然かっこいいです!!」
「君も君で言うねぇ、なかなか!」
北城さんのつっこみにも動じることはなく、彼女は颯馬さんに詰め寄り続けた。
「私のこと、分かりますよね!? 今日という今日こそは! 私とお付き合いしてもらいますよ!!!」
「やれやれ……君も懲りないねぇ」
「颯馬さん、彼女は……」
恐る恐る俺が聞いても、颯馬さんは困ったように笑うだけ。
と、思い出したかのようにその女子が、声をあげた。
「ああ、忘れていました! 私辻村萌黄といいます! 1年3組です! よろしくお願いします!!!」
元気良く挨拶を交わした彼女―辻村さんは、勢いよく頭を下げる。
同じ学年にこんな人がいたのか、クラスが違うと全然わからんもんだな。
それにしても、だ。
この人、さっきから何を言っているんだ?
颯馬さんのこと、妙に気に入っているみたいだが……
「何度も言ってるけど。オレは彼女を作る気もないし、君を好きになる気もないよ?」
「そんなの付き合ってみないと分かりません! これから好きになっていけばいいんです! お願いします、颯馬先輩!」
「相変わらずポジティブだねぇ、君は……」
颯馬さんの様子を見る限り、彼女がこうやってくるのは初めてではないのがうかがえる。
なぜ彼にこんなにもアプローチをしているのかは、よくわからないが。
確かに颯馬さんは爽やかだし、見た目からしてかっこいいのだろう。
しかし……
「ねぇ颯馬、この子君があれだって知ってるの?」
「知らないと思う……外見上で判断されるのは、よくあるからね……」
「女子って本当イケメンに目がないからねえ。颯馬が腐ってるとかしったら、この子どうするんだか」
遊部として一緒だったからわかる、彼の意外な一面。
それが、同性同士の愛を異常に好んでいること。
初めて知ったときは、俺も正直少し引いてしまった。
ここでは日常茶飯事である彼の妄想や一部始終は、おそらく校内には知られていない。
問題は、そのことを知らせずに彼女を追い出すことだが……
「あのね、辻村さん」
「辻村じゃないです! 萌ちゃんとお呼びください!!」
「……君はどこまで、オレのこと知ってるのかな?」
「どこまで、ですか? ん~……はっ! とても爽やかで優しくて、かっこいい先輩ってことですかね!!」
やはりこの人、外見だけで好きになってるな……
それが颯馬さんにもわかったのか、彼はにっこりと彼女に微笑んで見せた。
「本当にオレがいいの? その調子だと、後悔することになるよ?」
「ほえ? なんでですか?」
「辻村さんってお兄ちゃんが三人もいるんでしょ? 彼氏なんてできたら、すごくうるさいんじゃないかな?」
さすが颯馬さん、というべきか。
普通の人なら知りもしない情報を、さらりと言ってのける。
おそらく彼女を遠ざけようとしているのだろう。
しかし、辻村さんは一筋縄ではいかなかった。
「そうなんですよぉ~私が颯馬先輩の話すると、すっごい怒るんです! 萌には彼氏なんて百年早い! とかいって~」
「へ、へぇそうなんだ」
「颯馬先輩、お兄ちゃん達のこと知ってるんですか?」
「知ってるよ。君がいつどこで生まれて、どんな風に育ったのかとか♪」
「そ、そんなことまで!! つまり、それだけ私に興味があるってことですか!?」
呆れるほどにポジティブだな、と思った。
どんなに颯馬さんが言っても、彼女はそれを前向きにとらえる。
こんな子を見るのは、初めてだ。
「辻村さん、だっけ? 悪いこと言わないから、颯馬はやめといたほうがいいと思うよ?」
「どうしてですか?」
「いい? 見ててよ。颯馬、はいこれ」
そういって北城さんは、自分の携帯で撮ったものを彼に見せる。
何を見せたのか、それは彼の反応で分かった。
「こ、これは!!! LAPIS・JOKERの瑠夏×迅のカップリングの!!! レンちゃん、これをどこで?!」
「色々ネットで見てたら出てきたの。颯馬がすきそうだなあって思って」
「わざわざオレのために!? レンちゃんもついにこっちの世界へ!?」
「そんなわけないでしょ!!! 見たくて見てるんじゃないの!!」
相変わらずの颯馬さんに、うんざりする北城さん。
何で彼がその写真を取っていたのかは謎だが、これで辻村さんも……
「そ、颯馬先輩……かんわいいですぅ……❤︎」
あ……れ?
「ますます惚れました! 何なんですか、今の! 新たな一面発掘なのです!」
「はぁ!? 君、今僕が何見せたかわかってるの!?」
「知ってますよ、LAPIS・JOKER! 瑠夏っちの総受け最高ですよね!!」
まさかのところで趣味一致、ということなのだろうか。
彼女の言葉に、颯馬さんも食いついた。
「分かるの、君! やっぱり瑠夏君は総受けが一番だよね!」
「はい! こう見えて私、そういうの大好きなんです!!」
「ほんとに? 嬉しいなあ。あーでもそれと付き合うのは、全く持って関係ないからね?」
「なぜですか! こんなに趣味が合うのに! 私、颯馬先輩しか考えられません!! お願いです、付き合ってください!」
「……どうして……そこまで……」
「そんなの、好きだからですよ! 好きになることに、理由なんていりません!」
堂々とした、男らしい告白。
それがなんだかうらやましくて、すごいとも思ってしまった。
彼女の猛アタックを見ていると、なんだかこっちまで応援したくなるような気になってしまう。
人を好きになると、こうも人は変わってしまうのだろうか。
「そんなにだめだめいうのでしたら、私にも考えがあります! 颯馬先輩! 私も、遊部に入部します!」
「えっ、君も?」
「一秒たりとも、無駄にはできないんです!!! お願いします!」
こういう人は、決めたら曲げることはない。
颯馬さんはみんなと目線を交わすと、はあっとため息をつき
「分かった、そこまで言うならお好きにどうぞ?」
と呆れたように笑った。
「本当ですか!? やったぁぁぁぁぁぁ!」
「その代わり、みんなに迷惑とかはかけちゃだめだよ?」
「はい! もちろんです!」
「なんかまた変なのが増えたんだけど……大丈夫なのぉ?」
「いいじゃないっすか、男子だらけのとこに、花が咲いたみたいで☆」
「……やれやれだな」
「そんなわけでみなさん! 改めましてよろしくお願いします!!」
こうして永遠さんの代わりに、辻村萌黄が新たに遊部の部員として入って来たのだった。
(つづく!)
遊部初の女子ですよ! みなさん! 年内に間に合ってよかったです!
作中に出てきたJOKERについて説明すると、この世界ではアニメ化してて
同人誌まで発売しているという・・・そんな感じです笑
キャラが分からない人は、作品ページから探してみてね♪ なんて。
次回、ちょっと遅めのクリスマスネタ投入!




