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百花奔放! 遊部in学園祭

体育祭ときたら、次は文化祭!

出し物も一筋縄ではいかないようで・・・?

「輝君、これどこら辺がいいかな?」


「あ……もう少し、右……がいいと思う」


「櫛﨑~これはどこにおく~?」


「えっと……わかりやすいところにおいてくれ」


しどろもどろになりながら、みんなに的確な指示を送る。

一通り指示を終えた俺は、はあっとため息をついた。

早霧高校文化祭まで、あと一週間。

俺のクラスでも、着々と準備が始まっていた。

他の学年やクラスも同じようで、どこに行っても騒がしく楽しそうに見えた。


「おっ、思ったより進んでんじゃん。お疲れ~実行委員長♪」


「遅いぞ紅葉。買い出しに何分かかっている」


「いやあ、いたるところで女の子につかまっちゃってさあ」


「ふざけるのも大概にしろ」


「お前こそ、何いらついてんの? そんなに実行委員嫌だった?」


「誰のせいだと思ってる」


「ははっ、めんご♪」


悪いとはみじんも思っていないのか、紅葉は気楽に笑い買ってきた袋を俺に差し出す。

文化祭の出し物を決めたり、色々指示を出す中心人物である実行委員。

あまりにもやる人が見つからない影響で、たまたまその日の日直だった俺が係りになってしまった。

日直になったのも、やれよと後押ししたのもこいつのせい。

おかげで親しくもない人たちに話さないといけないわ、指示をしないといけないわですごく大変だ。

まったく、なぜ俺がこんなことを……


「お化け屋敷、だったよな? 人気だと思ったのに、よくとおったなあ」


「まあな」


「輝はやんねぇの? 絶対受けると思うけどなあ、お化け役w」


「それはどういう意味だ」


俺が怒っているのにもかかわらず、ごめんごめんと笑ってごまかす。

そんな紅葉を見ながら、はあっとため息をつく。


「な、ちょっと他のクラス見にいかね? 偵察がてら」


「……かまわんが、俺が席をはずしていいものか……」


「いいんだって、こういうのはお前より女子の原さんの方が向いてるし♪」


「……それはわかっているが、お前に言われるのが癇に障る」


「はいはい、愚痴なら後で聞くから行くぞ~」


紅葉に背中を押されながら、俺はしぶしぶながらも歩き出した。




「へぇ~どこのクラスもにぎわってるなぁ」


「そうだな」


「1年は展示、2年は売店、3年は劇……どれも楽しそうだな~」


様々なクラスが、文化祭の準備をしている。

どこにどういっても、彼らの顔に浮かんでいるのは笑顔。

正直、文化祭自体あまり好きではないのだが、こうしてみると案外楽しいものなのかもしれない。

そういえば、先輩方は何をするのだろう。

最近は文化祭の準備で、あまり部活もしていないし……


「わぁ、北城君すごぉい!!」


と、そこに聞きなれた呼び名が聞こえる。

声が聞こえた、家庭科室をのぞいてみると祖、そこには何人かの女子に囲まれた少年―北城さんがいた。


「はい、これに卵加えて。混ぜるとき、こぼさないようにね」


「北城く~ん、クリームが全然泡立たないんだけどぉ~」


「はぁ? そんなこともできないのぉ? そんなんじゃ客に出せないよぉ?」


北城さんを中心として、女子がテキパキ料理をしている。

相変わらず慣れた手つきで、北城さんが作っている様子がうかがえる。


「あれ、輝君に紅葉君じゃない? 二人で校内デート?」


後ろから声をかけられ、振り返った先には颯馬さんがいた。

彼の手にはたくさんのレシピ本が、抱えられている。


「こんにちはっす、颯馬さん。先輩方は売店っすよね?」


「そ♪ 喫茶店やるんだって。うちのクラス、料理できない子多くてね。今レンちゃんが教えてあげてるとこ」


「北城さん……すごい人気ですね……」


「むしろ、前より人気だよ~あのギャップがいいって、すごい好評だし。そのおかげでオレもいじり倒せるし?」


あの北城さんが、化けの皮をはがしてから数日。

校内はたちまち彼を認め、相も変わらずの人気でちやほやされた。

嫌われるとか、そういうのは全くない。

事実、クラスでも普通にしているし……


「そういえば輝君。さっき実行委員の原さんが呼んでたよ。用があるみたい」


「あ、ありがとうございます。紅葉、戻……」


「わる~い輝、オレ四組の子と約束あるんだわ。あとで行くよっ」


なん、だと?


「頑張ってな、実行委員長♪」



「……はぁ……」


颯馬さんと紅葉に別れを告げて、現在。

俺は今日何度目かわからないほどの、ため息をついた。

……どうしてこうなったのだろうか。


教室に戻ると、颯馬さんの言う通りすぐに原さんに呼ばれた。

内容は、お化け屋敷に飾る提灯の作成を手伝ってほしいとのこと。

かれこれやっていて、もうすぐ一時間。


正直に言おう。まったく終わらない、と。

なぜこんな仕事を、男子に任せる。

こういう器用な作業は、女子がやってこそなのではないのか。

だいだい提灯とは、どうやって作るのだ。

こんなものを作れと言われて、作れるわけなかろうに。

……ダメだ。

どこをどうしても、愚痴しか出てこない。

こんな時……紅葉でもいてくれたら……


「や~っぱりここにいた。やってるねぇ、輝りん」


ふと、上から声が降ってきた。

そこには永遠さんがいた。窓越しに、こちらをのぞいている。


「永遠さん……どうして……」


「紅葉に聞いたら、クラスいるっつったから何してんのかなあって」


「そう……ですか……」


「いいよなあ、一年は。展示って一番楽じゃん?」


そういう永遠さんの手には、なぜか水性ペンが握られており、手のあちらこちらにインクが付いている。


「永遠さんのクラスは、何をするんですか?」


「ん~創作劇かな? 先生が演劇部だから、燃えるに燃えてってやつ?」


「なるほど……」


「でもって輝りんは何してんの? 作成中?」


聞かれて思わず、ぱっと作っていたものを隠す。

それでも勘が鋭いのか、永遠さんはピンと来たように言った。


「ああ、もしかして提灯作ってる? その赤い画用紙的に」


「……なんでわかるんですか……」


「お化け屋敷っつったら提灯じゃね?」


「意味が分かりません」


「何~? もしかして全然できないのがいらついて、おいらに当たってる?」


痛いところを、つかれてしまった。

昔から、こういうちまちまとした作業は苦手だ。

絵を描くことも、何かを作ることも。

そんな俺が、提灯なんて……

「クラスメイトに相談すれば? 頑張ったけど出来ないって」


「でも……せっかく俺に任せてくれたので……」


「もっと人を頼ってみなよ。そうやって一人で頑張ろうとするから、だめなんじゃね? 先輩からのアドバイスっ」


無邪気に笑う彼の顔に、どうすることもできずうつむく。

永遠さんはそう言いながら、ひらひら手を振りながら去っていく。

そんな彼の後ろ姿を見ながら、俺は作っていた画用紙を手に重い腰を持ち上げたのだった。



時は立ち、文化祭本番。

中学の時とは比べ物にならないほど、にぎわっていた。

外部の人もたくさんいるし、他校の人もちらほら見える。

こんなにも盛況なのか、正直うるさすぎるというか……


「すっげー人だなあ。こんなんじゃろくにまわれなさそー」


感心しているような、うんざりしたような声をあげるのはいわずとしれた紅葉だ。

人だかりで暑いのか、プログラムをうちわ代わりにパタパタさせている。


「そういっている割には楽しそうだな、紅葉」


「あ、わかっちゃう~? 輝。やっぱこういう催し物って、心が躍るっつうかわくわくしね?」


「するか」


「オレらのクラスも大盛況じゃん。よかったな、輝」


紅葉の言うとおり、俺達がしているお化け屋敷はたくさんの人でにぎわっていた。

おそらく、同じ実行委員の原さんのおかげだろう。

他のみんなも妙に張り切っていたし……こればかりはみんなに感謝だな。


「レンちゃん先輩のクラスでも行ってみる? さっきすっげー行列できてたよ?」


「そういえば、北城さんのところは喫茶店だったな。昼飯ついでに寄ってみるか」


「よっしゃ! そうときまれば、いってみよ~」


いつも以上にテンションが高い紅葉が、俺より一足先に行く。

人ごみを避けながら、ゆっくりと彼についていく。

ようやくつき、たどり着いたそこには……


「いらっしゃいませ! ご主人様♪」


黒いワンピースに、白いエプロン。

スカート丈には、かわいらしくフリルをあしらっていて……


「えーっと……」


「……これは、いったい……」


「て、輝に紅葉!? ちょ、なんで来……! み、みないで!!!!」


手に持っていた銀のお盆で、自分の体を隠す。

長い髪のウィッグをつけて、いかにも美少女と化していたのは……言うまでもなく、北城さんだった。

夏祭りの時とは比べ物にならない、見事な女装だった。

よほど見られたくないのか、教室の中の方へ隠れてしまう。


「ぷはっwww せ、先輩かわいいww」


「笑うなっ!!!」


「どうしてまた女装を……」


「それはうちが、メイド喫茶だからだよ♪」


するとそこに、教室の中の方から颯馬さんが出てきた。

そういう彼の服装は普通の制服で、手にはデジタルカメラを構えている。


「メイド喫茶……ですか……?」


「そ♪ でも接客担当が、高熱で倒れちゃって。急きょ、レンちゃんが代理を務めることになったんだ♪」


「もとはと言えば君のせいでしょ!! 祭りの時のもみんなの前でばらしたし!」


「もう猫かぶんなくていいんでしょ?」


「だったらなんで僕なわけ!!」


「他の女の子より、レンちゃんが一番かわいいから♪」


「颯馬あとでぶっ殺す!!」


北城さんの怒りに対し、いつもの笑顔で微笑む颯馬さん。

しかも彼は、女装している北城さんにすべからくカメラを向けているようにも見えた。

相変わらずだな、ここは。

こころなしか、クラスメイトの女子達も北城さんばっかりみてるし……


「そういえばぁ、永遠先輩のクラスが劇やるって知ってる?」


「ええ、まあ」


「三年生は全員劇でしょ。それくらい知ってるよ」


「実はねぇ、主役らしいよ。永遠先輩♪」


唐突に言われ、はい? と声が漏れる。

準備の時にペンをもっていたから、てっきり裏方に回っているのかと思ったのだが……

永遠さんが、主役? そんなこと、一言も……


「まあ、どうせ見ることになるでしょ。全員観覧だし」


「そうっすね~いやあ、永遠さんの演技楽しみだなあ」


「昼の部が始まるまで、ここでゆっくりしとくといいよ♪ レンちゃんの女装をみながら♪」


「いちいち一言多い!」


いつも通りの三人のやり取りを見ながら、俺はひそかに笑みを浮かべたのだった。



『汝の願いを聞き入れよう。さあ、願い事は何だ?』


凛としたたくましい声が、体育館中に響き渡る。

永遠さんの演技は、鳥肌が立つくらいすごかった。

見る人すべてを魅了するような、圧巻の演技力。

以前、ライアーゲームの時も感じたことがある。

やっている人も、見ている人も永遠さんの世界に引き込まれていくような。


……すごい。

なんて、堂々としているのだろう。


『私はあなたと共にいたい! あなたが一緒なら、私は……!』


『それが汝の願いというのなら、聞き届けよう。そして誓う。汝を愛し、いつまでも守り続けることを』


劇の幕が、静かに締まっていく。

最後の最後で、こちらに気付いたようにふっと笑って見せた。

それが誰に向けられていたのか、俺にはわからないが……

文化祭終了後、興奮が収まらないとでもいう用に部員全員で永遠さんのもとに駆け付けた。


「永遠さん! 見ましたよ、劇! すっごいっすね!」


「まあね~おいらにかかれば、ざっとこんなもんよ~」


「あのゲームの時も思ってたけど、君演技力だけはあるんだね。びっくりした」


「だけはってひどくね~? レンちゃあん」


「もう連写しまくりでしたよ!! さすが元演劇部ですね!!」


演劇部、か。だからあんなに演技がうまいのか。

だったら演劇部に入っても……


「んじゃ、おいらしばらく部活抜けるわ。その間はよろしく~」


「え……」


「ほら、おいらもう三年だし。さすがに活動しないとなあって? ちょこちょこ顔だすから、あとはしくよろっ」


爽やかな笑みに、永遠さんらしいアクション付きのポーズ。

深まる秋が終わり、寒い冬が近づいてくるー


(つづく・・・)

お待たせしました! 二回目となるレンちゃんの女装回!

さらに永遠さんの本気を見せることができたので、嬉しい限りですね


あ、ちなみに本日は生徒会メンバー・雅の誕生日なんですよ!

Mimiru's 作品 特別エピソード集にて、輝りんの誕生日とともに公開しておりますので、あわせてお楽しみください♪


次回、インパクト投入!笑

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