コネクション・コンテスト in決戦
借り物競争、二人三脚・・・勝負は一対一の引き分け!
遊部存続をかけて、最後の戦いが始まる!
「紅葉君! 輝君! さっきの、すっごいよかったよ! いい写真がいっぱい撮れたから、今度焼いてあげるね!!!」
颯馬さんの笑顔が、まぶしいほどに輝いている。
数々の競技を終えた後は昼休憩で、みんなでご飯を囲んでいる。
もちろんご飯担当は北城さんで、早起きして作ったであろう豪華なものがたくさん並んでいる。
さも当然のようにその弁当を分けてもらってる永遠さんと、遠慮がちにももらうことになった俺達はいいのだが……
「……で? なんで君はいるわけ? 生徒会側でしょ」
「いやあ、二人の二人三脚が素晴らしく良くてねぇ。肩組むだけで、五十枚は撮っちゃった♪」
「どんだけ撮ってんの!」
「相変わらずだねぇ、颯馬は。何なら、一緒に飯食うか?」
「ありがとうございます。でもオレ、あっちにお弁当おいてきてるので」
「え~せっかくのランチタイムなのにぃ~。そいやレンちゃん、ふっつーにしてるけどええの? 盛大なネタバレかましてたけど」
永遠さんが言っているのは、おそらくあの借り物競争でのことだ。
あの後女子達は、信じられないというようにすごく騒ぎ立てていた。
おそらく、しばらくはそのことで話題が絶えないだろう。
この学校では知らない人はいないというほど、彼の人気はすごかったし……
「ああ、いいよ別に。もう猫かぶる必要ないしね」
「あら珍しい。何か心変わりでも?」
「ほとんど君達のせいでしょ? あ、でも名前はそのまま通すから、レンちゃんって呼んだらぶっ飛ばすから!」
「わかったよおお、れー」
「いちいち大声で呼ばんでいい!!!」
北城さんのつっこみも、永遠さんのてへっと笑う顔も、いつもと変わらなく……まるで部活中をも思わせる光景だった。
戦った後だからだろうか、みんなの顔が明るくなっている。
こんなに疲れているというのに、不思議なものだな。
「そういえばあんた、次会長とだよね? 何で戦うの?」
思い出したかのように、北城さんが口を出す。
すると永遠さんは、さも当たり前のような顔を浮かべて……
「んあ? おいらだけじゃないよ?」
「え?」
「生徒会との決着、部活動リレーってことになってるから」
さらりと言ってのけた。
当然、納得いくわけがなく……
「はぁ!? 何それ! 聞いてないし!」
「オレ達戦ったのに、またやるんすか!?」
「話が違います。なんでいきなり……」
「会長的には、生徒会として遊部を倒したいんじゃないかな。オレも出ることになってるしね」
そういう颯馬さんの目は、心なしか寂しそうにも見えた。
彼は遊部に入っているのに、会長側につかなければならない。
そのことだけでも、どれだけ会長に権利があるか垣間見えるというのに……
「走順は決めてある。レンちゃん、紅葉、輝、おいらだ」
「うげっ! 僕最初ぉ?」
「なんつー微妙な……あっちの走順次第かね~」
「……俺が永遠さんに、バトンを渡すんですか」
俺の言葉に、そうなるよねと颯馬さんが返事を交わす。
正直、不安だ。
元から体育は得意ではないし、リレーなんて経験もあまりない。
しかもこれで決着がつくと思うと……
「て~るりん」
ふいに呼ばれ顔を上げたそこには、永遠さんがいた。
いつもよりも真剣で、とてもまっすぐに俺の目を見つめていて―
「大丈夫。どんなことがあっても、おいらが一番でゴールするから」
そういう永遠さんの表情は、いつにもましてかっこよく見えたのだった。
『ただいまから、昼の部を開始しま~す! 最初の演目は、ずばり部活動リレーだぁぁぁ!』
やけにあつい実況を、放送部がかます。
俺は周りを見渡しながら、ふうっと息を吐いた。
心臓が、やけにうるさい。
何故だか無駄に緊張している。
部活動リレーはまさかの一週交代で、ここには全員のメンバーが顔を合わせることになる。
つまり、走順もわかってしまうので……
「やっほ~レンちゃん♪ また一緒だねぇ~♪」
「だからここでその名前で呼ぶなって言ってんの! なんで君なの? ほかにいなかったわけぇ!?」
「オレがレンちゃんと走りたかったから♪」
「さっき走ったじゃん!!!」
スターターは、北城さんと颯馬さん。
「お、オレの相手は会計の先輩っすねぇ。よろしくお願いしま~す」
「ふふん、そんな大口叩けるのも今のうちだよ? 僕がコテンパンにしてあげるっ!」
第二走者が、雅先輩と紅葉。
「ふぁ~~~~……ねみぃ……ああ、とりあえずてきとーによろしくー」
「……はい、よろしくお願いします」
第三走者に俺と司先輩と来て。
「ふふっ、やはり考えることは一緒のようだね。永遠君」
「ま、こうなるとわかってはいたけどね」
アンカーはやはり、永遠さんと会長の一騎打ちとなった。
「念のために言っておくが、この勝負に僕らが勝てば遊部を廃部にさせてもらうよ? 文句はないかい?」
「……くどい。そんな言わなくても、分かってるっつうの」
「楽しみだよ、君がもがき苦しんでいる姿を見るのが」
挑発気味に言う響先輩に、永遠さんは何も言わなかった。
これですべてが決まる。
そう思うだけで、緊張がどんどん増していく。
『第一レースは我らが生徒会に、遊部が直接対決!? 果たして勝者はどっちか! スターターは位置に並んでくださぁい!』
……しかし、暑苦しい実況だな。
生徒会が出るだけで、こうも待遇が違うものか?
そんな俺の考えとは逆に、着々と準備が進んでいく。
スターターである北城さんと颯馬さんが、スタートラインに並ぶ。
「いくよ、北城君♪」
「絶対負けないから、颯馬」
両者の火花が、ぱちぱち飛び散る。
『パンッ!!!!』
ピストルが、なった。
校庭のあちらこちらから、歓声が鳴り響く。
颯馬さんも北城さんもいい勝負で、二人とも負けずと劣らず全力でかけてゆく。
あっという間に、一周を走り終えた。
「みゃーちゃん! あとよろしく!」
「一発かましてよね! 紅葉!!」
二人から受け取ったバトンが、紅葉と雅先輩にわたる。
なんともあろうことか、あの紅葉が雅先輩をわずかに上回りつつあった。
「お、紅葉やんじゃん。いけいけ~」
「そのままいって! 輝!」
「は、はい!」
5センチ、4センチとどんどん近づいてくる紅葉。
ごくりと唾をのみ、集中力を高める。
「いっけぇ、輝!」
紅葉からバトンを受け取った瞬間、俺は走り出した。
全力で。ゴールで待つ、永遠さんに渡すために。
一番に勝って、遊部を存続させたい―
しかし、
「先輩をなめてもらっちゃ困るなー颯馬の後輩二号君」
声が聞こえた。
そう思った時には、少し先に司先輩がいた。
見る見るうちに、差がついていってしまう。
このままでは負ける……! やはり、俺一人では……!
「輝ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
その時だった。呼び捨てで俺の名を呼ぶ永遠さんの声が聞こえたのは。
「負けるな、輝! 走れ!!!」
「君がここであきらめたら、元も子もないでしょ!?」
横を見れば北城さんと紅葉が。
前を向けば、永遠さんが手を伸ばしてこくりとうなずいて見せる。
違う、俺一人で戦ってるんじゃない。
俺達遊部部員で戦っているんだ!
「永遠さん!!!」
まっすぐ、精いっぱいに手を伸ばす。
目の前に広がる、永遠さんの手に届くように。
バトンタッチが終わると、怒涛のアンカー対決が始まった。
会長の速さも伊達じゃなかったが、永遠さんはものすごい勢いで彼にたてついた。
残り半周、といったところでもうそんな差が残っていない。
「君みたいなできそこないを、なぜそこまでして彼らがかばう? 僕は君に劣ってなど……!」
「ああ、劣ってはないさ。この先何やっても、あんたにはかなわない」
「くっ……!」
「でもなぁ、たとえあんたでも崩せない……これがオレ達の、仲間の絆だっっっ!」
白いテープを越えたと同時に、ぱんっとピストルが鳴る。
ほんのわずか数秒差。
見事に勝利を手にしたのは、永遠さんだった。
「やった……のか?」
「さすがっす! 永遠さん!!!」
「も~一時はどうなるかと思ったよ~」
「ふふん、おいらにかかればざっとこんなもんですよ」
自信満々の彼に、二人も嬉しさを隠せないとでもいうように笑顔がこぼれている。
負けたはずの颯馬さんや、他の先輩方にも笑みが浮かべられていた。
ただ一人、会長をのぞいては。
「……納得、出来ない。どうして君は、僕の邪魔ばかりする! 君がいるから、僕は自由になれないのだ! どんなに頑張っても父には認められない、君ばかり気に掛ける! 僕の方が主にふさわしいというのに! 君のせいで、父は……!!」
響先輩の目は、怒りに満ち溢れていた。
今まで見てきたものとはくらべものにならないくらい、憎悪に満ち溢れた顔で。
逆に永遠さんは、落ち着いていた。
まっすぐに彼を見つめている。
「おいらもあんたは嫌いだよ。同じ血を持ってしまっているからこそ、ね。でもさ……もうやめにしようよ、響。やり直してみない? 兄弟として」
そういう永遠さんの顔には、優しい笑顔がむけられていた。
まるで怒りも、憎悪も打ち消すような……
あっけにとられている響先輩の肩を、司先輩と雅先輩が叩く。
「………約束は約束だ。遊部の存続を認める……完敗だ、永遠……」
戦いは終わった。
そのことを祝するように、みんなが拍手を送っている。
終わったんだ、何もかも。
「勝利おめでとうございます、永遠先輩♪」
「まったく、君のせいでとんだ目にあったよ」
「いいじゃないっすか、楽しかったんですし」
「……輝」
ふと永遠さんに呼ばれ、はいと返事する。
彼はすっきりしたような笑みを、俺に向けて
「言ったろ? おいらが一番にゴールするって」
いつにもまして楽しそうに無邪気に笑う。
そんな永遠さんに俺も、はいっと明るく返事して見せたー
(つづく!!)
今回の見どころはなんといいっても永遠さんですよね。
彼は基本、一年組とか輝りんとしか呼ばないんですが
呼び捨てで呼んだらめちゃくちゃかっこいいですね。ああ、もうたまらん。
次回は本編でありつつも、遊部の休息みたいなお話です。




