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▼俺こと勇者は呪われている。  作者: 猫まんま
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俺こと勇者は召喚されるみたいです。

崩壊した城の最奥部に位置する部屋の1人青年が佇んでいる。

辺りは瓦礫で埋もれて彼の仲間は下敷きになり、彼の目標だった

魔王は目の前に倒れていてもういない。外からは万雷の喝采が聞こえる。

「あっ…あ、あぁ…あぁぁぁぁぁぁ!!」

もう助けて支えてくれる人達も、目標で憎い敵も、

愛し守りたいと思った人も誰もいない。

青年は膝をつき、声にならない声で泣き始める。

そして呪った。世界を、人を、自分を。

これはこれは栄光の御伽話の裏側の悲しい話。

そして、もう終わり過ぎ去った昔の話。


俺は物心着いたときから夢を見る。少年心を擽るような俺が勇者になる夢だ。華々しく送り出され、

道中に頼れる仲間と出会い、素敵で可愛い女の子と恋をする楽しい旅の夢。だからか、

俺は勇者物の物語が大好きだ。でも、今見てる夢は…悪夢だ。夥しく悲しみに包まれた悪夢だ。

そんな夢を見ていると声が聞こえた。優しく綺麗で安心するような声だ。それに導かれるように俺は目を覚ます。


「やっと起きたわね。浅間勇次。いつまで寝てるのよ。後はあんた1人を送れば終わりなんだからさっさとしてよね」


前言撤回を申し出る。これはあれだ。

駄目なパターンだ。確かに声は良い。顔も良い。だが、性格は致命的な奴だ。しかし、ここはどこなんだ?俺は確か学校に向かって登校していたはず。んで、自転車に轢かれそうな猫を助けて、それから…


「よし、この状況がわかっていないあんたのために女神に最も近い天使のこの私が説明してあげるわね。

あんたはこれから異世界に行って、勇者として魔王を倒しに行くのよ。んで、手ぶらだとすぐに

雑魚モンスターとかにやられそうだから今から良いものをあげるって訳。OK?」


「はぁ…なんとなくわかった。それで?どんなのを貰えるんだ?チート武器か?防具か?能力か?」


転生物でよくある話だ。魔王とかもそれで楽勝なんじゃないか?


「はぁ?なに言ってんの?そんなもの有るわけない

でしょ?馬鹿なの?死ぬの?」


「いや、死んだから転生するとかの話じゃないのか?」


あれ?早速雲行きが怪しくなってきたぞ?


「あんたはまだ死んでないわよ。勇者として召喚される癖に弱っちぃから呼んだだけよ」


まさかの転生物ではなく召喚物でした。しかも俺そんなに弱いのかよ。悲しくなるわ。

まぁ、自転車程度で死ぬ訳ないか。いや、当たり所が悪ければ死にそうだけど。それにしてもなんだか、

体が冷たくなっていくような?あと眠くなってきた。


「あ、あれ?なんであんたもう向こうに行こうとしてんの?私はまだなにもしてないわよ?」


駄目だ。もう限界だ。段々と俺の瞼は落ちてきた。


「ちょっと!まちな…」


景色は黒に塗りつぶされた。


次に目を覚ますとそこは雪国…ではなく暗闇でした。

真っ暗な空間でふわふわと浮遊感に包まれていたら気持ち悪くなってきた。そこで黒い泥のような物が

へばりついてきてさらに気持ち悪くなってきた。

全身が泥につつまれると、眩しい日の光に目が眩んだ。慣れてきたんで目を開けると、


「あなた方が勇者様ですね。ようこそ歓迎いたしますわ」


金髪碧眼の可憐な少女がそこに立っていた。

ここまで超展開が続く中、最もびっくりした瞬間

である。そして疑問が浮かび上がる。“方”とはいったい?と思い隣を見ると凄いイケメンがいた。

外側に少し跳ねた茶髪で10人中8人は振り向くようなイケメンフェイスだ。殴りたい。


「それで勇者様方は名前はなんと言うのですか?」


頭を傾けて聞いてくるのが物凄く可愛い。100点満点です。


「僕は御山真司と言います。話は既に女神様から伺っています。勇者として邁進いたします。」


殴りたくなるような笑みを浮かべているイケメンは普通に自己紹介してやがる。これだからイケメンは。

殴りたい。って?あれ?女神?女神に近い天使じゃなくて?


「よろしくお願いいたしますね。真司様。そちらの御方は?」


イケメンに贈る呪詛を考えていたら、話しかけられていた。このまま無視すると美少女の周りにいる人が

怖いので対応しよう。

そうしよう。


「俺は浅間勇次って言います。特に取り柄も無いし、勇者としてなにもする気も出来る気もないので還してください」


決まった。これで俺は向こうに戻り安定した日々を…


「すみません。勇次様。勇者召喚は一方的なもので

して。あなた方を向こうに還すことは出来ないのです」


取り戻すことは出来なかった。悲しい。


「とりあえず、勇者様方のステータスを測ることにしましょう!きっと勇次様もやる気を出してくれますわ!」


はい、出せると良いですね。でも俺からしたら美少女である貴女からの応援の方が何倍もやる気でると

思います。なので側で応援を…って無理か。


「あ、申し遅れました。私はナナイア・フォーゲルン・ララリアンヌ・サーティナ・アルフェルト。由緒正しき御伽話の勇者アルフェルトの家系でございます。ちなみに王家でもございます」


この美少女、ナナイアちゃんは物凄く偉い人だった。

しかも王家って。まじぱねぇ。



はい、やってきました。水晶玉で囲まれたいかにも能力を計りますよって部屋にやってきました。


「では、真司様。勇次様。この水晶玉をお持ちくださいませ。少し待てばあなた方のステータスが計れますので」


と言ってナナイアちゃんが手渡してくる。壊すと高そうなので凄く怖かった。あと、手が少し触れたので

ドキドキした。これでも思春期なので。


するとイケメンの方から眩しいくらいの光が放たれる。周りの水晶玉に反射して俺の目にダメージを与えてくる。先制攻撃とは卑怯な!って言ってみる。ちなみに俺の水晶玉は何故か物凄く昏い光を放っている。なぁにこれ?


「真司様は凄い力をお持ちなのですね。頼もしいですわ。そして、勇次様は…なんでしょう?前例が無いのでわかりませんわ。ともかく水晶玉をお預かりしますね。直ぐに確認いたしますので」


ナナイアちゃんは俺達から水晶玉を手渡されると覗き込んで確認をし始めた。


「ふむふむ、真司様は魔力量も多く、質も良い。その他のステータスも申し分無いですね」


マジかよ。イケメンはなんでもパーフェクトだってか?爆発しろ。


「そして、勇次様は…なんでしょうか?」


むむむ、とうねるナナイアちゃんが凄く可愛い。


「えーと、魔力量、質、ステータスも村の兵士レベル

ですね。勇者様としては…少し残念という感じですかね?」


えーと、つまりは雑魚と言うことですね。

本当にありがとうございます。


「君、なんか凄く弱いみたいだね」


なんかイケメンが話しかけてきた。しかも煽りかよ。

嫌みかよ。まぁ事実なんですが。


「嫌みかよ?あぁ?自分が高ステだからってか?」


声に出ちゃいました。これチンピラですよね?うわぁ…


「そんなことは無いよ。きっと君にはステータスとかよりも良いものを持っているんだろう。だから気に

しなくていいんじゃない?」


いやぁ、むかつくはぁ。俺には誇れるものは無いっての。


「勇者様方。仲良く話してるところで悪いのですが少しよろしいですか?」


「仲良くしてないですよ。ナナイアちゃん。」


あ、声に出してしまった。ちゃん付けで照れてるのかナナイアちゃんの顔が真っ赤だ。可愛いなおい。」


「あぅ、勇次様はお世辞が上手いのですね。

それよりもお二人にはギルドに行って登録をしてきてほしいのです。先のステータスは既に送ってあります

ので安心してください」


「はい、わかりました」


「うい、わかったよ」


ギルドと言えば冒険者の拠点。俺は勇者だけど。

楽しみだな。そう言えば、さっきからナナイアちゃんに失礼な言葉しか言ってない気がするけど…

なにも起きないな。無礼者!とかさ。まぁ、ない方がいいけど。

しかし、やっぱりナナイアちゃんは可愛い。



はい、ナナイアちゃんの案内でやってきました。ギルドの本部らしいです。名前は【かつおぶし】。

居酒屋ですか?そうなんですか?てか、異世界に鰹節あるのかよ。


「では、どうぞ。受付まで案内しますね」


【かつおぶし】の中に入ると、予想よりも綺麗な部屋だった。

居酒屋ってよりカフェが近いかな。


「待っていましたナナイア様。こちら勇者様方のギルドカードでございます」


ギルドカードを受けとると、名前とステータス、外見の特徴が載っていた。おい、なんだ?このアホ毛が

生えた冴えない顔って。


「では、真司様。勇次様。これからあなた方を駆け出し冒険者の街に転移させます。また追々と連絡

いたしますので、それまでごゆっくりと異世界生活を楽しんでください」


あれ?この王国からスタートじゃ無いんですね。って、おい金を渡されても相場とか知らねぇぞ!おい!

こら!イケメンもなんか言ってやれ!あ、駄目だ。敬礼して了承してやがる。

おい、待て!ナナイアちゃんと離れるのは嫌だぁぁ!


「では、ご武勇を祈ります。≪テレポート≫」


足元に魔方陣が展開され、俺達は飛ばされた。なぜじゃぁぁぁ!!


どさぁっと、地面に転ける。

石で出来ている道路なので凄く痛い。


「あのぉ?大丈夫ですか?」


声をかけられたので頭を上げると、そこには


「えーと、聞いてますか?」


黒髪で襟足が真ん中だけ長くて、黄色の目をしたこれぞ魔法使いって格好をした美少女がいた。

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